■e-POWERは欧州でも通用するのか?
さて本題だが、常時モーター駆動であるe-POWERは、中低速での走行が得意だ。「得意」というのは、モーターの強いトルクで、動き始めのクルマの加速が早まり、また、アクセル開度に合わせて遅れなくトルクが立ち上がるため、リニアで気持ちの良い「走り」ができる、ということだ。
電力の回生量の強さを変えることで、ワンペダルドライビングといった遊び方もできるし、反対に通常のAT車のように滑るようなクルマの動きにもできる。
また燃費についても、必要に応じてエンジンによる発電を行うため、丁寧な加減速操作を行っていれば、十分に良い燃費を実現できる。減速時に回生充電も行うので、一層効率も上がる。筆者は、旧型のE12ノートe-POWERで、一般道中心走行で最高24km/Lまで出せた。
中低速がメインとなる、市街地や郊外走行でのe-POWERの運転のしやすさと良燃費は、欧州でも十分に良さを発揮できる。短い時間で強い加速をするシーンもe-POWERは得意な領域だ。
しかし、やはり高速走行となると、アクセルペダルを多めに踏み込まないと、車速を維持することができない。高速巡行をするには、走行中にかかる抵抗力(空気抵抗、タイヤの転がり抵抗、駆動抵抗など)に釣り合うだけの前進力が、常に必要となるためだ。
特に、車速が上がるほど2乗で増えていく空気抵抗が大きな壁となる。E12ノートe-POWERでは、100km/hを越えると、多く踏み込む必要があった。
それを今回、日産は排気量を増やすことで対処してきた。
日本よりも速度域の高い(といっても実はそれほど差はない、詳細は後述する)欧州であっても、従来のe-POWERで感じていたようなパワー不足感は解消されるだろう。
燃費については、高速走行となれば、アクセルペダルを踏み込む分、悪化はするものの、これは他のハイブリッド車であっても同じことであり、e-POWER特有の欠点とは言い切れない。
e-POWERと、国内ハイブリッドカーのWLTPモード燃費の実例を以下に示す。高速モードではエンジン駆動にて走行するハイブリッドシステムをつかうヤリスHYBRIDやフィットe:HEVであっても、高速道路モードでは、燃費が落ちる。
中低速走行をメインに考えた、小型発電エンジンで賄う国内版e-POWERと、中高速走行まで考えた中型発電エンジンで賄う欧州版e-POWER、上手く棲み分けを考えた商品構成になっている。
できることなら、次期型エクストレイルには、この欧州版e-POWERで登場してほしい、と考えるのは、筆者だけではないだろう。
新型キャシュカイe-POWERは、良燃費とCO2排出量の削減、そして素早いレスポンスと強い加速、という、欧州のドライバーが要求を叶えるポテンシャルを備えた、といえ、ますます活躍が期待できるモデルとなった。
■欧州各国の高速道路の制限速度は?
ヨーロッパ各国(ドイツを除く)の高速道路での制限速度は、ポーランド、ブルガリアが140km/h。
フランス、イタリア、オランダ、オーストリア、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、セルビアなどの半数以上の国が130km/h。
ベルギー、スイス、スウェーデン、フィンランド、アイルランドなどが120km/h、イギリス112km/h、ノルウェー110km/hなど、だ。
ドイツのアウトバーン(自動車専用道路)では、「速度無制限」の割合は、高速道路の全体長さの70パーセント程度らしいが、常に工事をしていたり、規制が入っており、「速度無制限」区間の実可動量は、50~60%程度のようだ。
その他の場所では、片道3車線の主要路線の場合、一番遅い車線が130km/h、走行車線が150km/h程度、追い越し車線はそれ以上というルールが大まかに守られている。
ヨーロッパは車速域が高く、また、ドイツに至っては速度無制限、という話を聞くことがあるだろうが、日本でも、(一部ではあるが)最高速度が120km/hであることを考えると、欧州と日本で、実はそれほど速度域に差はなくなってきているのだ。
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