■最終判定その1:走り&技術で選べば?
2030年代なかばまでにガソリン車の販売を終わらせる。世界の趨勢を見ると、政府の方針がこの方向で固まったことは確実だ。
電動車にはPHEVやハイブリッドが含まれる公算大で、むしろハイブリッドの重要性がますます高まったと考えるべきだ。
電動化の目的は言うまでもなくCO2の削減だが、そのための課題は二つある。
ひとつはもちろん燃費性能を向上させること。
この点ではヤリスハイブリッドが先頭を走っているのは今回の燃費テストからも明らか。日本のハイブリッド技術は世界トップレベルだから、ここはそんなに心配しなくていいだろう。
もうひとつはコストの低減だ。
ボストンコンサルティングによると、2019年時点で日本のハイブリッド車シェアは22%だそうで、あと15年で残りの約8割を電動化しなければならない。
とりわけ、国内販売台数の4割を占める軽自動車に関しては、低コストな電動化デバイスを工夫しないと庶民の足に大きな負担増が生じる。内燃機関そのものの効率アップとともに、マイルドハイブリッドの技術革新が大いに期待される。
今回の燃費テストの結果はトップがヤリスの28.2km/Lだったが、あと10年くらいでWLTCカタログ値なみの35km/Lの台の実燃費を実現したい。また、最下位のスイフトRS(マイルドハイブリッド)は17km/Lだったが、コストを引き上げず実燃費25km/Lあたりが目標だ。
日本では1kWhの電力を発電するのに約500g前後のCO2を排出している。電費を7km/kWhとすると、EVでも走行1kmあたり約70gのCO2が出るということ。これはヤリスハイブリッドとほぼ同等のCO2排出レベルだ。
電動化もいいけど、こういう事実を踏まえたうえで広く議論してもらいたいものですね。
●ランキング決定
1)フィット
2)ヤリス
3)ノート
4)スイフトRS
5)スイフトSZ
(TEXT/渡辺陽一郎)
■最終判定その2:コスパ&使い勝手で選ぶなら?
最も評価が高い車種はフィットだ。安全に直結する視界を向上させ、特に後方はライバル車と比べて明らかに見やすい。
後席のドアや荷室の開口部も広く、乗降性や荷物の収納性も良好だ。居住空間と荷室の広さにも余裕があり、家族でも使いやすい。しかもフィットe:HEVホームの価格は、運転支援機能やLEDヘッドランプを装着して206万8000円だから割安感も強い。
2位はノート。後席と荷室の評価はフィットの次に高く4名乗車にも適する。荷室幅は今回取り上げた5車のなかで最もワイド。内装は上質で、乗り心地も向上させたから総合的な商品力が高い。
ノートで注意したいのはセットオプションの内容と価格。運転支援機能のプロパイロットは、液晶ルームミラーなどと一緒に備わり、セットオプション価格が42万200円と高い。LEDヘッドランプも9万9000円だ。これらをXに加えると総額は270万6000円。商品力は高いが価格も割高だ。
3位はヤリス。後席は狭いが座り心地はよい。荷室は狭めで1~2名乗車の用途に適する。価格はハイブリッドZが229万5000円で、運転支援機能やLEDヘッドランプを標準装着。衝突被害軽減ブレーキは先進的だ。ノートに比べて走りと後席の快適性は下がるが、価格は割安で、燃費は国産乗用車で最も優れる。総合的な経済性は高い。
4位はスイフトRS。後席は狭いが荷室の奥ゆき寸法は長い。運転支援機能、LEDヘッドランプ、エアロパーツなども装着して価格は187万9900円だ。マイルドハイブリッドだから割安になる。
スイフトにストロングハイブリッドを搭載したSZは、後席はマイルドと同等だが荷室は狭い。しかもSZの価格は、マイルドのRSよりも約21万円高く、計測した総合燃費の差は3.2km/L。レギュラーガソリン価格が140円/Lとすれば、価格差の21万円を燃料代の差額で取り戻すのに16万kmの走行を要する。
●ランキング決定
1)フィット
2)ノート
3)ヤリス
4)スイフトRS
5)スイフトSZ
(TEXT/渡辺陽一郎)
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