■販売店幹部より「モデル廃止」の声が..!
トヨタのパッソが健闘している第一の要因は、まさにトヨタの販売力によると考えられる。
2020年4月までパッソはカローラ店の専売車種であったのが、同年5月からトヨタ全系列店の併売になり、販売力はおよそ4倍に増強された。これによってパッソの販売が上向きになった、という側面がある(だから「4倍になった」というわりにはこの増加幅は小幅だという見方もできる)。
現行モデルのレンジからすると2022年頃は世代交代の時期といえる。
とりあえず今年3月は一部改良して商品ラインアップを強化した。4月から実施となった法規改定でヘッドランプのオートライトシステムが固定式となった。消したままで走行すると危険だから、これを回避する狙いがある。
慣例を考えると改良後のモデルチェンジは1年ほど先になる。
すると2022年春ごろか、と考えて、首都圏にあるカローラ店やダイハツ店を回り、営業担当者にコメントを求めると、一様に「パッソ/ブーンが世代交代する情報はまだいっさい流れていない」とのこと。
さらに取材を進めると、「もしかしたらモデル廃止になるかも知れない」という販売店幹部の声に行き当たった。
というのも、トヨタやダイハツのコンパクトモデルのラインアップの推移を見ると、2016年11月9日にルーミー/タンク/トール、2019年11月9日にライズ/ロッキーが加わった。そしてルーミー/タンクは2020年9月15日にルーミーに1本化。
2021年1~3月実績での月販平均台数はルーミー/トールが1万5664台、ライズ/ロッキーは1万1335台で、ともに月販1万台を突破している。どちらもダイハツの工場ではフル生産状態で供給しているから、これ以上の増産余力がないのが実情といえる。
■販売制度の変更でヤリスとパッソが直接競合することに
トヨタにとっても難しい課題を抱えている。
これまでパッソと同クラスのコンパクトハッチバックであったヴィッツはネッツ店、パッソはカローラ店の各専売だったから、売り分けが出来ており、あまり競合しなかった。
小型車がほしいネッツ店の顧客はヴィッツに、カローラ店の顧客はパッソを買っていた。
ところがヴィッツが2019年12月20日にフルモデルチェンジして、ヤリスに改名、2020年5月からトヨタ全系列店扱いになると同時に、パッソも全店併売に切り替わった。
こうなるとヤリスの1L仕様とパッソが直接競合し、「どちらを選ぶか」という問題が発生する。
トヨタの営業マンにとってヤリスはトヨタのオリジナルモデルだが、パッソはトヨタの子会社とはいえ別会社のダイハツ製だから、同じユーザーがどちらを選ぶか迷ったら、ヤリスを優先したくなるのは道理である。
人気の高さやリセールバリューもヤリスのほうが格段に上だから、「薦めやすさ」もヤリスが優位といえる。
■パッソがモデル廃止になる場合に考えられる要因とは?
またトヨタにとっては中期的なモデル政策として、「2025年までに2017年時点で約60車種あった国内向けのモデルを半分の30車種に削減する」という計画を打ち出している。
ヤリス1Lとパッソが競合するというのであれば、販売規模が少ないパッソをモデル廃止の対象とするのは自然な流れだろう。
また、政府は地球温暖化防止の環境対応で二酸化炭素の削減目標を提唱し、その一環として2030年までに100%ガソリン車を廃止するという方針を明らかにしている。
この流れに従うとすれば、コンパクトカーはハイブリッドカーへの切り替えが必要になる。ヤリスはハイブリッドモデルを設定しており、今やシリーズ全体の60%以上の販売がハイブリッド車。この比率は今後さらに上昇する方向にある。
仮にパッソ/ブーンがフルモデルチェンジし世代交代するとすれば、ハイブリッド車をラインアップに加える必要があるが、普通に考えると約50万円のコストアップになるはずだから、そうなるとますますヤリスに価格帯が近づき、競合する確率が高くなる。
こうした観点からも、次期型パッソ/ブーンの存在は否定的にならざるをえない。
この手の「次期型開発凍結」については、情報が流れにくい。開発が始まれば多くの人、多くの部署が携わることになり、新しいニュースとして話題になるが、プロジェクトが消えるときは誰もが口をつぐみ、静かになくなる。
もちろんこの話題は、まだなんの確証があるわけでもなく、引き続き取材を続けてゆきます。
コメント
コメントの使い方