なぜ“今”なのか?? トヨタ電動車の新目標に透けて見える深謀遠慮【クルマの達人になる Vol.576】

なぜ“今”なのか?? トヨタ電動車の新目標に透けて見える深謀遠慮【クルマの達人になる Vol.576】

 2021年5月12日、トヨタは2030年に電動車の世界販売台数を800万台程度とする新たな目標を発表した。

 800万台の内訳は、EVと燃料電池車(FCV)が約200万台、ハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(PHV)が約600万台だという。

 この発表の影響はどれほどのもので、何を指し示すのか? 自動車評論家・国沢光宏氏に聞く。

※本稿は2021年5月のものです
文/国沢光宏 写真/TOYOTA、Adobe Stock
初出/ベストカー2021年6月26日号

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■そもそもトヨタって、電気自動車の販売台数が極端に少ない

 トヨタは2020年度の決算の記者会見で「2030年に電気自動車と燃料電池車の販売台数を200万台にする」と目標値を明らかにした。

 ちなみに2020年度は両方合わせて1万台以下。現在の200倍以上を目標にする、ということです。

 そもそもトヨタって電気自動車の販売台数が極端に少ない。

 この点を見て、自動車業界を知らない一般メディアの記者さんたちにとってみれば「トヨタの電気自動車戦略は大きく遅れている」になるんだろう。

 台数だけで判断したら「そのとおり」だと思う。

 なんでトヨタが電気自動車を積極的に作らないのだろうか? 答えは明白かつ簡単だ。「ユーザーの利益にならないから」です。

 私のように10年前、電気自動車に飛びついたユーザーは、カンペキな人柱になった。

 高価な買い物だったのにも関わらず、数年後にバッテリー容量が少なくなり始め、日産もまったくフォローしてくれない。

 リーフを発売した頃の日産は「電池が進化したらバージョンアップした電池に交換できるようにする」と言ってたけど、反故。

 顧客第一主義のトヨタからすれば「電気自動車を売ってもお客さんに損をさせてしまう」になるということなんだろう。そのわりに初代MIRAIのお客さんは厳しい修行になりましたけど。

 閑話休題。

2014年11月に発売されたトヨタの燃料電池自動車(FCV)MIRAI(初代)
2010年12月に発売された日産リーフ(初代)

■「乗り遅れ」ではないのか? EVを巡る世界の実情

 ということでトヨタは世界で一番モーターやインバーターのコストダウンが進んでいるメーカーにも関わらず、電気自動車を作らなかった。

 もう少し明確に言えば、電気自動車の普及は始まっていないという判断なのだろう。

 ここまで読んで「すでに欧州や中国は電気自動車がたくさん売れている」と思うかもしれない。

 確かに売れているのだけれど、欧州の場合、日本で言えば家賃補助のような位置づけとなる『カンパニーカー制度』に助けられている。会社員は通勤用のクルマを会社から支給されるのだった。

2021年4月19日、上海モーターショーにおいて発表されたトヨタとスバルのEVの共同開発車「トヨタbZ4X」。このシリーズモデルを少なくとも2025年までに7車種導入していくことも合わせて発表された(トヨタ全体では2025年までにEVを15車種発表する)

 会社にとって電気自動車のほうが企業イメージいいし、国からの補助金だって出る。エンジン車より電気自動車のほうがすべての点で魅力的なのだ。

 中国も補助金出るうえ、売れ筋は超小型車です。

 日本は補助金が少なく、優遇措置もなし。集合住宅の充電インフラや、公共の充電インフラも取り組む気なし!

 トヨタに電気自動車がない理由はもうひとつ。

 最近まで「CO2の排出量を減らそう」という燃費規制が主流で、ハイブリッド車の多いトヨタは電気自動車に頼ることなく燃費規制をクリア可能でした。

 しかし! 世の中の流れはいよいよ電気自動車になってきた。ネックだった電池の価格も大幅に下がっている。

 中国で主流になりつつあるリン酸鉄リチウム電池は、充放電回数3000回以上の寿命を持つため、15年/50万km走っても容量が減らない。

 そんな状況を見て「そろそろでしょう!」とトヨタは考えたのだろう。

 2022年の『bZ4X』を皮切りに、続々電気自動車を追加していく計画だという。遠からず電気自動車もトヨタがぶっちぎるかもしれません。

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