新型GR86/BRZ初試乗で走りの違いを実感

新型GR86/BRZ初試乗で走りの違いを実感

 2021年7月29日、いよいよスバルの新型BRZが発売開始となった。価格は308万円(税込み)から。一方でGR86の日本での販売は2021年秋頃開始が予定されている。

 そうした中、自動車評論家 国沢光宏氏が両モデルに試乗。その走りの違いを確かめた! 

※本稿は2021年7月のものです。試乗日:7月13日(於:袖ケ浦フォレストレースウェイ)
文/国沢光宏、永田恵一 写真/ベストカー編集部 撮影/小林邦寿
初出:『ベストカー』2021年8月26日号

【画像ギャラリー】発表と同時に登場したカスタマイズカーとともに、GR86&BRZをギャラリーでチェック!


■新型は初代に比べて何がどう進化しているのか?

 ニューモデルの試乗は毎度のことながらワクワクする! 特に今や希少になったスポーツモデルともなれば好奇心MAX!「少し落ち着いてからメインをどうぞ!」ということなんだろう。

 最初に用意されたのは現行(初代)モデルの最終バージョン。そういえばどんな乗り味だったか忘れてます。貸し切り試乗会なので初代86オーナーの永田をナビシートに乗せてコースインする!

袖ケ浦フォレストレースウェイにて最速試乗!!!
袖ケ浦フォレストレースウェイにて最速試乗!!!

 するとどうよ! スンゴク楽しい! 2速のコーナーも3速のコーナーもハンドル切ると素直にノーズは向きを変え、横滑り防止装置をオールカットしておけば、アクセル踏むことによりFRの教科書どおりテールを流しながら立ち上がっていく。

 初代86、デビューした時は低速コーナーはアンダー傾向だったけれど、何回かの改良を受けて自由自在に振り回せるステキなクルマになっていた。

 続いてハンドル握ったのは新型86(プロトタイプ)のマニュアル車。試乗会が始まった時にワクワクしていた気分は「現行モデルより楽しいクルマに仕上がっているかな?」とワントーン落ちている。それじゃいきましょう! コースのコンディションチェックは良好なため、アウトラップからアクセル全開で行く。するとどうよ! 予想以上に速いです!

1周約2.4kmの袖ケ浦フォレストレースウェイで新型GR86を思う存分試走した国沢氏。最初からアクセル全開で入ったところ、予想を上回る速さだったという!
1周約2.4kmの袖ケ浦フォレストレースウェイで新型GR86を思う存分試走した国沢氏。最初からアクセル全開で入ったところ、予想を上回る速さだったという!

 今までの86/BRZも充分楽しめるクルマだったけれど、新型ときたら間違いなく20%の排気量アップ分、より速くなってる! 0~100km/h加速のタイムはメーカー公表値で7.4秒から6.3秒。

 前者だと「速いね!」くらいのイメージながら、後者になるとビギナードライバーは全開を続けることに恐怖心を覚えるレベル。トルクが太く、そのまんまレッドレブまで回っていく。

 3速にシフトアップし、最初のコーナーでハンドル切ると「ボディのしっかり感がずいぶん違いますね!」。ハンドル切ってロールしてタイヤが路面をグリップするという一連の流れのなか、ハッキリわかるくらい従来型よりすべてのインフォメーションが明確なのだった。

新型GR86のインテリア。エンジン始動時にはメーター内に水平対向エンジンのピストンの動きを表現したオープニングアニメーション演出を見ることができる
新型GR86のインテリア。エンジン始動時にはメーター内に水平対向エンジンのピストンの動きを表現したオープニングアニメーション演出を見ることができる

 剛性感は“感”というくらいだから漠然としたものに思えるが、おいしい鰻とそうじゃない鰻は誰でもわかる。それと同じ理屈です。

 面白いのはエンジン音で、人工的な音をダッシュパネルの奥側に設置したスピーカーから出している。なかなかよく演出されており、タコメーターを見なくても「そろそろレッドゾーンだな」とわかるほど。

 騒音規制でエンジン音を下げなければならなくなってきたが、考えてみたら外部にまき散らすなんて迷惑行為。乗っている人が楽しめばいいと思う。この音、いいです!

新型BRZのエンジンルーム。排気量を0.4Lアップした水平対向の2.4L DOHCに。235ps/25.5kgmにまで向上している
新型BRZのエンジンルーム。排気量を0.4Lアップした水平対向の2.4L DOHCに。235ps/25.5kgmにまで向上している
こちらは初代BRZ。FA20型2L水平対向DOHCを搭載。後期型では207ps/21.6kgmを発揮していた
こちらは初代BRZ。FA20型2L水平対向DOHCを搭載。後期型では207ps/21.6kgmを発揮していた

 ブレーキは従来型と同じサイズ。タッチやコントロール性こそいいが、サーキット走行すると容量的に厳しいかもしれない。

 今回1周約2.4kmの袖ケ浦フォレストレースウェイを連続3ラップという試乗メニュー。

 コーナー進入速度は大幅に高くなっているため、全開で楽しむと3周目にペダルタッチが変わるくらい熱を溜めてしまう。これだけのパワーだとワンランク上のブレーキを組み合わせたくなります。

ツイスティな袖ケ浦フォレストレースウェイのコーナーを駆け抜けていく新型GR86とBRZ。果たしてその走り味の違いやいかに?
ツイスティな袖ケ浦フォレストレースウェイのコーナーを駆け抜けていく新型GR86とBRZ。果たしてその走り味の違いやいかに?

 気になるコーナリングやいかに? ここからBRZも交ぜて紹介していきたい。新型は写真のように86とBRZで足回りに使っている部品の材質からして違う。

 当初同じだったというが、開発を進めていく段階で86側から「もっとクルマをシャープに動かしたい」という声が。具体的に書くと、フロントのハウジング(アームと車軸を繋ぐ部分)をアルミから鋳鉄にしている。

 さらにスタビの付け方を変え、左右を繋ぐ補剛メンバーはなし。

 素晴らしいことにトヨタ側から話を聞くと「アルミだとハンドル切って横方向のGを立ち上げる時のレスポンスが悪いため鋳鉄にしました」。

 同じことをスバル側に聞いたら「バネ下重量は軽いほうがいいに決まってます。この部品だけで1.5kgも軽いですから。加えて剛性はアルミのほうが高いです」。

車体結合部のフロントハウジングがGR86の場合(左上)は鋳鉄製。一方、BRZは鋳鉄製よりも軽量なアルミ製を採用していた
車体結合部のフロントハウジングがGR86の場合(左上)は鋳鉄製。一方、BRZは鋳鉄製よりも軽量なアルミ製を採用していた

 なんと! 86とBRZで違う部分、お互いの主張がまったく違う! 各々に話を聞いてみたら「部品の素材まで変えた結果、これほど大きい乗り味の違いが出るとは思いませんでした」。

 ちなみに「86とBRZ、どちらがサーキットで速いか?」と聞いたら、86のチーフエンジニアも、BRZのPGM※(呼び方は違うけど同じ立場)も「私のクルマのほうが速いですね」(大笑!)。

 いいね! 初代モデルはトヨタとスバルの関係が少しギクシャクしていた。けれど新型の開発チーム、いい意味でライバル関係になっているようだ。

試乗会場内に飾られたカットモデル。車体左側がBRZ、右側がGR86のもの
試乗会場内に飾られたカットモデル。車体左側がBRZ、右側がGR86のもの

 エンジニアに話を聞くとエンジンもサスペンションも実験も、皆さんカウンターパートの顔を見ながら「ウチのほうがいい!」と言う。こうなるとコチラが緊張する。ぜんぜん違うクルマに感じなかったらどうしよう。

※PGMは「プロジェクト・ゼネラル・マネージャー」(開発主査)を指す

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