ヤリスクロスやキックスなど、コンパクトなSUVの販売は絶好調だ。そのなかでも特にボディの小さな車種がロッキー&ライズ。
全長は3995mm、全幅も1695mmに収まる5ナンバー車で、水平基調のデザインにより、ボディの四隅も分かりやすい。最小回転半径も5m以下に収まり、狭い裏道や駐車場でも運転しやすい。
このロッキー&ライズが2021年11月1日にマイナーチェンジを実施して、ダイハツが独自に開発した1.2L直列3気筒の新たなハイブリッドシステム、e-スマートハイブリッドを搭載する。駆動方式は2WDのみだ。
また従来のエンジンは直列3気筒1Lターボだけだったが、マイナーチェンジ後は、1Lターボは4WD専用になる。
2WDにはe-スマートハイブリッドのほかに、新たに1.2Lノーマルエンジンも搭載する。つまりロッキー&ライズのパワーユニットは、1.2Lノーマルエンジン(2WD)、1.2Lのe-スマートハイブリッド(2WD)、1Lターボ(4WD)の3種類に増える。
ロッキー&ライズのマイナーチェンジの概要は2021年10月5日に本webサイトに公開した「新型ロッキー&ライズに追加されるダイハツ独自のe-スマートHVとは?」で詳細に解説したので、今回はeスマートハイブリッドと、従来からライバル車として設定されるコンパクトSUVのハイブリッドと徹底比較してみた。
新型ロッキー&ライズに追加されるダイハツ独自開発のe-スマートHVとは
文/渡辺陽一郎
写真/ダイハツ、ベストカーweb編集部
※概要および価格、ラインナップはディーラー調べによるものです
■エンジンは発電のみ、リッター27.0km/L、ワンペダルも採用するシリーズハイブリッド、価格も安い!
まずロッキー&ライズのe-スマートハイブリッドとはどんなハイブリッドなのか? 直列3気筒1.2Lエンジンは発電機を作動させ、そこで作られた電気を使い、モーターを駆動する仕組みだ。エンジンがホイールを直接駆動することはない。エンジンが作動させる発電機と、駆動用モーターを別々に搭載するから、発電とモーター駆動を同時に行うことも可能だ。
減速時には、減速エネルギーにより駆動用モーターが発電を行って、専用の電池に充電する。この電気を使うことで、エンジンを停止させながら、モーターを駆動して走ることも可能になる。
S(スマート)ペダルにも注目したい。この機能を作動させると、アクセルペダルを戻した時に、駆動用モーターによる発電と充電が積極的に行われる。燃費効率が優れ、なおかつアクセル操作だけで速度を幅広く調節できる。
ノーマルモードとエコモードの切り替え機能も備わり、燃費性能を向上させる運転もしやすい。アクセルペダルを戻した時に強い減速力を生じさせたくない時は、Sペダルを解除できる。
このe-スマートハイブリッドに最も近いハイブリッドシステムは、日産のe-POWERだ。直列3気筒1.2Lエンジンは発電機を作動させ、発電された電気を使ってモーターを駆動する。e-POWERの場合も、エンジンがホイールを直接駆動することはない。
ホンダのe:HEVも、e-スマートハイブリッドやe-POWERに近い機能を備えるが、高速道路などの巡航時にはエンジンがホイールを直接駆動する制御も行う。そのほうが効率が向上するからだ。
そこでe-POWERの開発者に、e:HEVのような直接駆動する制御を行わない理由を尋ねると、以下のように返答した。
「e:HEVのような直接駆動の機能を採用すると、燃費性能は向上するが、車両重量も増してコストも高まる。e-POWERでは直接駆動する機能を備えない代わりに、同じ重さとコストを使ってほかの機能を充実させた」。
ロッキー&ライズのe-スマートハイブリッドに使われるエンジン排気量は、直列3気筒1.2Lだからe-POWERと同等だ。アクセルペダルを戻すと同時に強めの減速力が生じるe-スマートハイブリッドのSペダルも、同様の機能がe-POWERではSモード/エコモードとして設定されている。以上のようにe-スマートハイブリッドとe-POWERには共通点が多い。
そこで比較すると、キックスのボディサイズは全長が4290mm、全幅は1760mmだから、ロッキー&ライズの全長3995mm、全幅1695mmに比べてひとまわり大きい。車両重量も1350kgで、ロッキー&ライズの1050kg(予想値)に比べると約300kg重い。
そうなると動力性能にも差が生じる。キックスの駆動用モーターは、最高出力が95kW(129ps)、最大トルクは260Nm(26.5kgm)だが、ロッキー&ライズはボディがコンパクトで軽いから、もう少し抑えるかもしれない。
その代わりロッキー&ライズのeスマートハイブリッドは、燃費性能が優れている。WLTCモード燃費の開発目標値は27km/Lとされ、キックスの21.6km/Lに比べると燃費数値は1.3倍だ。仮にキックスからロッキー&ライズのeスマートハイブリッドに乗り替えたとすれば、燃料代を20%節約できる。
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