MT車敬遠!? 平成の激レアパトカー、マークII交通覆面の残念すぎる退役


 全国には1点モノというレアパトカーが、いくつか存在する。多くは寄贈車や都道府県警の予算で導入されたものだが、栃木県警のレクサスLC500パトカーやNISSAN GT-Rパトカーなどは、その代表格だろう(詳細は大好評『平成~令和新時代 パトカー30年史』へ)。この2台は白黒パトカーだが、こうしたレアパトカーの中には覆面パトカーもある。特に交通取り締まり用の覆面パトカーともなれば、その珍しさゆえに、隠密性が高く、ドライバーが「捕まってびっくり!」ということがあるほどだ。今回は、レアすぎて全国的にもほとんど知られていなかった、宮崎県警の110系マークIIを退役直前に取材できた。そのディテールを紹介しよう。

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文・写真/有村拓真

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■最後のマークIIの交通覆面パトカーが勇退

 令和3年10月19日、一台の覆面パトカーが隊員らから惜しまれつつひっそりと引退した。

 宮崎県警察交通機動隊の交通取り締まり用覆面パトカーのマークIIだ。マークII最後のモデルである110系(型式JZX110)で、グレードはグランデIR-V。エンジンはVVTi仕様の1JZ-GTE型2500ccターボエンジンを搭載しており、ミッションは交通機動隊らしく5速MT車である。県費で平成14年秋ごろに導入された。交通取り締まり用途の覆面パトカーなので、当然ながら反転式警光灯や前面警光灯を備えている。

グリル内に前面警光灯が見える。反転式警光灯がなければ一般車と区別するのは難しいだろう

 現役当時は宮崎市内の運転免許試験場近くの有料道路や県内の主要道路で取り締まり活動に従事していた。導入当時は目立ちにくいTAアンテナを装備し、また全国唯一の覆面パトカーだったこともあって、隠密性は非常に高かったといえる。当然、取り締まり活動の効率は抜群であったことだろう。

 導入から約20年のご長寿車両であったが、走行距離は16万km弱と警察車両としてはまだまだ現役という状態だったが、残念ながら今回退役となってしまった。その理由の一つが、MT車を扱えない若い隊員が増えてきたというのだから驚く。稼働率も年数が経つにつれて下がりがちだったということだ。導入当初の平成14年は150系クラウンやY31セドリックなどMT車のパトカーが主流だったが、その後導入された170系クラウンはトランスミッションがAT化されたため、MT車に乗る機会が少なくなり、扱える隊員が徐々に減っていったということらしい。

 晩年は事務連絡で庁舎間の移動などで使用されたほか、雨の日の取り締まりを行っていたという。なお、隊員の方のお話によれば、「クルマを長持ちさせる秘訣は、極力雨の日に乗らないこと」を挙げられておられた。その任務から考えるとどのような天候であっても現場に駆けつけなければならないのが警察車両であるが、マークII覆面パトカーの程度の良さを見るにつけ、日々並々ならぬ愛情を注いで手入れをされていたことがうかがえた。

■隊員の努力でボディ内外は抜群のコンディション

 実際に取材した実車のコンディションは非常に良好で、ボディはもちろんのこと、前後の各種の灯火類、アルミホイールなど、細部にわたって新車のような状態が維持されていた。またエンジンルームもキレイな状態だった。これは交通機動隊で運用されているほかの車両も同様であった。

 覆面パトカーの装備品である反転式警光灯の動作は問題なかったが、前面警光灯は経年劣化のためか点滅具合が少し弱い印象を受けた。近年ではLEDタイプの前面警光灯が主流となっている中、すっかり見なくなってしまった装備品である。

ルーフに設置された反転式警光灯。雨水を抜くパイプが横出しタイプになっている

 さて、車内を見てみよう。ルーフ中央部には反転式警光灯が鎮座しており、やや圧迫感はあるが、車内空間確保に支障のない配置がされていた。また、前後のシートには、警察車両には必須のシートカバーが装着されていた。

 車内外から大切にされた様子がうかがえるいっぽうで、警察車両らしい古傷も。警察官は、警棒や手錠ケースなど腰回りの装備が欠かせない。これらは乗降するたびにシートを痛めるとあって、マークIIには、パトカーに特有のシート破れが確認できた。

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