2021年11月18日、ボルボカージャパンは日本国内初となるEV「C40リチャージツイン」を発表した。
その車両本体価格は719万円。ボルボカーズは、グローバルで販売するボルボ車のEV比率を2025年までに50%、2030年には100%とすることを計画しているという。
さてこのC40リチャージツイン、最初の100台は最長3年のサブスクリプション(サブスク=月額定額制)で、その後はオンライン販売で取り扱われるという。
BEVの世界販売をすべてオンラインで行うという方針を掲げているボルボだが、今後、日本での新車販売はオンラインが中心になっていくのだろうか。
文/井元康一郎、写真/AdobeStock、VOLVO
【画像ギャラリー】サブスクで乗れるEV! ボルボC40リチャージをギャラリーでチェック!(18枚)画像ギャラリー■実車に乗らないで買う人が増えているのだが……
コロナ禍を機に、日本でも注目されるようになったクルマのオンライン販売。
ディーラーに行って実車を見て、試乗してみて、いざ契約の時には値引きやおまけをねだったりもしてみて――というのがレガシーなクルマの買い方だが、ネットでクルマをポチる買い方はそういうプロセスを全部すっ飛ばすことになる。
今日ではメーカーによる商品特性の違いは非常に小さくなったし、クルマの品質や性能も昔とは比較にならないくらい上がった。
自動車メーカーが新商品を発売する際、事前受注が数万台、モノによっては数十万台にのぼることも珍しくなくなった。
実車を試し乗りしてみるどころか、見もせずに買うことに抵抗を覚えないユーザーがそれだけ増えたということの表れだ。
クルマへのこだわりが希薄になったという観点ではクルマを「ポチる」買い方が一般的になる素地はすでに固まりつつあると言える。
が、クルマは買った後もメンテナンス、車検、事故や故障があれば修理と、何かと手間のかかるもの。
買うのはオンラインでも、販売会社とはつながりを持っていたいというユーザーのほうが依然として圧倒的多数である。
日本メーカーではトヨタ、日産、ホンダがオンライン販売の取り組みを加速させているが、オンライン化されるのは基本的にユーザーと販売店のやり取りで、メーカーの直販ではない。
そのような状況のなか、ボルボは2021年11月18日に発表したクロスオーバーSUV型のバッテリー式電気自動車(BEV)、「C40 Recharge」でメーカー直販を開始した。
同年3月にBEVの世界販売をすべてオンラインで行うという方針を公表しており、それがさっそく実現された格好である。
最初の100台は最長3年のサブスクリプション(サブスク=月額定額制)で、その後は通常の売り切り型オンライン販売に移行するという。果たしてボルボはオンライン直販を成功させられるのだろうか。
まず、最初の100台のサブスクについては間違いなく支持されるだろう。
最長でも3年でユーザーはクルマを返却しなければならず、買い取りの選択肢もないというネガティブ要素もあるが、月額定額制の価格が税込み11万円と、それをはねのけるくらい強烈に安い。
各種税金や車両保険を含む任意保険、定期点検代、さらにはうっかりミラーをぶっつけてしまったり、飛び石でフロントガラスが割れたり、パンクしたりといった不意のトラブルも無償ないし格安で補償される。
しかも3カ月前に予告すれば3年を待たずに無料で使用をやめることもできる。世の中によくある3年縛り、ボーナス払い併用の「名ばかりサブスク」とは異なる、本物のサブスクである。
オプションなしの新車価格719万円のクルマを本来は高額な任意保険料まで全部コミで月11万円で3年乗り回せるのは、中高所得層のユーザーにとっては大バーゲン。
当然ボルボ側は大損である。だからこその100台限定であり、クルマの直販を始めるにあたっての名刺代わりの一発というところであろう。
問題はその先、すなわち売り切りでのオンライン直販がどうなるかだが、BEVの直販ではすでにテスラという先駆者がいる。
テスラはボルボに比べてトラブル時の整備受け入れ力に難があるが、それでもほぼオンライン直販オンリーで日本での年間販売が5000台をうかがうレベルにまで来ている。
もちろん、それはBEVとして超高性能であるという裏付けがあるからこそなのだが、ボルボのC40リチャージも最高出力300kW(408ps)、バッテリー容量78kWhと、相当のハイパフォーマンスだ。
ボルボは日本でのBEVのオンライン販売台数を2025年に年間9000台という目標を立てているが、今後発売するクルマの性能や価格次第では達成可能だろう。
世界では今、クルマの電動化が集団ヒステリーと思えるほど急進的に進んでいる。
本当に各国政府が打ち出すスピードでBEV化を進めて大丈夫かどうかという議論はさておき、BEVはICE(内燃機関)車に比べると直販に向いているのは確かだろう。
エンジンオイルや自動変速機のフルードを交換する必要はないし、そのほかの消耗部品の点数も格段に少ない。車検の重要な項目のひとつである排出ガスのチェックも不要だ。
極端な話、タイヤやサービス電源用12ボルトバッテリーの交換、サスペンションやヘッドランプの調整、あとは高電圧配線のチェックくらいで乗り切れてしまうのである。
もちろん先に述べたように故障や事故での損傷はゼロにはならないのでサービス拠点の必要性はなくならないが、ICE(内燃機関)車に比べれば入庫の機会は大幅に減るだろう。
BEVのメンテナンスフリー性がユーザーに認知されるにつれ、「BEVならポチり買いでもいいや」という人の割合は急速に増加するのは間違いないところだろう。
コロナ禍で注目されるオンライン販売だが、買い手と作り手が直接結びつくオンライン直販は、結局BEVがどのくらいのスピードで普及するかにかかっている、と言えそうだ。
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