ガソリン車がHV車より「快音」で快適!? 新型ノア/ヴォクシー試乗でわかったこと

■「ベストバランス」に仕上がっていたガソリン2WD

 まずは、ガソリンモデル、ヴォクシーの2WDに試乗した。登場当初はかなり衝撃をもって受け止めたフロントフェイスも、そろそろ見慣れてきた。ホワイトパールのボディ色と、ギラギラフェイスの組み合わせは眩しいが、テーマカラーであるマッシブグレーよりも清潔感があり、似合っているようにも感じる。

 タイヤは205/55R17サイズのトーヨータイヤPROXESを装着、切削光輝の専用ホイールもまた眩しい。一般道を30km/h程度で走行すると、路面凹凸からの振動が、それなりにフロアに伝わってくる。

全長×全幅×全高は4695mm×1730mm×1895mm(FF)で、新型ノアとヴォクシーは同一寸法だ。また、ホイールはS-ZのFFのみ17インチで、ほかは16インチとなる
全長×全幅×全高は4695mm×1730mm×1895mm(FF)で、新型ノアとヴォクシーは同一寸法だ。また、ホイールはS-ZのFFのみ17インチで、ほかは16インチとなる

 60km/hにまで速度を上げれば、振動はほとんど気にならなくなるが、見栄え重視の17インチ55扁平タイヤはややオーバースペックにも思える。「あたりの柔らかさ」を取るならば、16インチタイヤのほうがベターな選択だろう。

 その半面、60km/h程度の中速走行までのロードノイズは、至極静かだ。ボディの遮音がしっかりと効いており、無駄なノイズはキャビンへ入れ込まない、といったトヨタ車の考えが、存分に発揮されている。

 加速した時のエンジン音も、余計なエンジンノイズと言うよりも、聞かせるエンジンサウンドと表現したほうが適切かもしれないくらい、心地いいサウンドだ。

 高速道路走行は試せなかったが、凹凸のある一般道での直進性に関しては、不満はない。センタリング性が高く、適切な操舵力にセッティングされているEPSは、運転していて非常に楽だ。

 コーナーや交差点での身のこなしも、すっきりした運転感覚でとても好ましい。

 試乗したガソリン2WDモデルの重量が最も軽量(ハイブリッドは+50kg程度、4WDは+50kg程度)という影響も大きいだろう。価格も安く、誰が運転してもなじみやすい、ベストバランスな仕様だと感じた。

筆者が試乗してベストバランスと感じたのはガソリン2Lだったという。読者の皆様もぜひ試乗を!
筆者が試乗してベストバランスと感じたのはガソリン2Lだったという。読者の皆様もぜひ試乗を!

 トヨタ車体車両実験部動性能開発室主査の兼子正人氏によると、「(車体の)リアゲートやサイドドアの開口部の剛性を高めて、車体を作り込んだうえで、サスをしっかりと動かしたかった」という。

 確かに、車体の堅牢感は感じる。接着車体までは踏み込まなかった(検討段階では試してみたそうだが、動きが機敏になり過ぎて不採用としたらしい)と言うが、最量販のミドルクラスミニバンも、クルマの作り方は、レクサスや高級車のそれに似てきているようだ。

■期待値が高いハイブリッドではあったが、気になる点も

 スペック上では最高レベルの出来と言えるハイブリッド車だが、もちろん素晴らしかったのだが、期待値が高かっただけに、残念に思ってしまった点もあった。

 ハイブリッドは、ノアの2WDに試乗した。装着していたタイヤは205/55R17のトーヨータイヤPROXESだ。発進時の静粛性(エンジンはオフ状態なので静かで当たり前だが)と加速の力強さは、非常にいい。

 乗り心地も、どっしりした印象となり、ガソリン車で感じた低速時のショックは、気にならなくなった。

 動力用リチウムイオンバッテリー(50~60kg)がフロアの低い位置へ積まれている分、車体が重くなったことも影響しているのだろう。ロードノイズも静かで快適だ。

「第3世代」だったハイブリッドシステムは新型で一気に「第5世代」にジャンプアップした。エンジンは第4世代流用だが、モーター側が進化している(E-Fourのリアモーター含)
「第3世代」だったハイブリッドシステムは新型で一気に「第5世代」にジャンプアップした。エンジンは第4世代流用だが、モーター側が進化している(E-Fourのリアモーター含)

 また、コーナー手前でアクセルオフした時に自動減速する「プロアクティブドライビングサポート」は、素晴らしかった。センサーが前方のコーナーを読み取って自動的に減速するので、アクセルとブレーキの踏み換えが少なくてすむ。

 ごく自然なフィーリングで制御が介入していたので、当初はまったく気がつかなかった。先進装備の恩恵を知らぬうちに享受していたようだ。

 E-Fourはヴォクシーで試乗。タイヤは205/60R16サイズだ。ハイブリッドE-Fourは、ハイブリッド2WDよりも更に重たさを感じる。まるで、アルファード/ヴェルファイアクラスのクルマを運転しているような鈍調さ、言い換えれば、重厚な乗り味だ。

E-Fourは純正装着タイヤが16インチのみとなっている。モデリスタやGRから18インチ仕様がアクセサリーで出されているので、大きいのが好きな人はそちらへ
E-Fourは純正装着タイヤが16インチのみとなっている。モデリスタやGRから18インチ仕様がアクセサリーで出されているので、大きいのが好きな人はそちらへ

 ハイブリッド車はボディが重い分、ガソリン車と比べてヒョコヒョコした乗り心地にならず、乗り心地はこのハイブリッドE-Fourが最も快適だろう。

 ただ、どちらも、加速のためにアクセルペダルを踏み込むと、1.8Lエンジンが盛大に唸りをあげるのは、ちょっと気になった。加速した時のエンジン音が、「ガーガー」という音質で、ややチープに聞こえる。

 2Lガソリンエンジン車のほうが、はるかに「快音」に聞こえた。

「ミドルサイズミニバンにそこまで求めなくても」といわれそうだが、ハイブリッドモデルよりも価格が安いガソリンモデルのほうが「音質がいい」というのはちょっと寂しい。

「いいクルマ」であることを感じるのは、ハンドリングや乗り心地よりも、NVH(騒音と振動)のよさだ。高いモデルのほうが、NVHで劣ってしまっているのは残念でならない。

 燃費効率、加速性能などの見える指標だと、新型ハイブリッドシステムは優れているが、「聞かせる音の作り込み」は、あと一歩、改善を期待したいところだ。

 ガソリン車に採用されている2Lダイナミックフォースエンジンと今作の新型ハイブリッドの組み合わせがあれば、「最高のハイブリッドユニット」になるように思うが、そうはできなかったのだろうか。

次ページは : ■今後のライバルが生半可だと、新型ノア/ヴォクに市場独占される可能性も

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