■荷物を固定する用品はわざと充実させない
トヨタポルテ&スペイド、ホンダN-VANといったスライドドアを備えた低床設計の車種では、後席や助手席を畳み、スライドドアから荷物を積めるとアピールされている。ポルテ&スペイドのホームページやカタログには、運転席の左脇から背面にかけて、大人用の自転車を積んでいる写真も掲載されている。
衝突時の加害性が気になるが「走行時には後方視界確保・荷物の転倒防止にご注意ください」としか記載されていない。自転車のような大きくて硬い荷物の積載をアピールしたいなら、荷物固定用のフックやベルトをオプションで用意すべきだが、それは見られない。開発者に尋ねると「ホームセンターでベルトなどを買ってください」という。
理由は責任を持ちたくないからだ。仮に自転車を固定するフックやベルトをオプション設定すると、純正品としての安全性を担保せねばならない。保証の範囲にも入る。開発にはコストがかかり、荷物固定用ベルトとしては価格も高額になる。その結果、開発したのに売れなければ、早い話が赤字になってしまう。
そこで手を付けないわけだが、そうなると自転車の積載などは、行き過ぎたアピールだ。
N-VANも助手席を小さく畳めるから、ドライバーの左脇に自転車などを積める。カタログの注意書きは「走行の際は荷物をしっかりと固定してください」「積載物がドライバーの視界を遮らないようご注意ください」という程度だ。
助手席を畳んだ時には、左側からの側面衝突に備えてドライバーを守る設備が欲しいが、それは用意されない。理由は先のフックやベルトと同じだ。メーカーが都合の良いアピールをする割に、ユーザーの自己責任の範囲が広い。
■荷室の床が無雑作に高い車種は意外に多い
荷室の床面地上高は、車種によって差が激しい。積載性をアピールするスズキスペーシアの荷室地上高は、リアゲートの部分で510mmだが、同じスズキのジムニーは760mmだ。荷物を250mmも高く持ち上げねばならない。
ジムニーは最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)が205mmと高いが、スペーシアも150mmだ。この違いを差し引いても195mmは上まわる。
■ミニバンは見栄を重視して、床と天井をわざと高めている
クルマの床と天井は、必要な最低地上高と室内高(荷室高)が確保されていれば、低いほどメリットが生じる。乗降性が優れ、低重心になってボディも軽くなり、走行中の空気抵抗も減る。従って走行安定性、乗り心地、動力性能、燃費も良くなる。
それなのにミニバンや一部のSUVは、わざわざ床を持ち上げる。例えばアルファード&ヴェルファイアは、現行型でプラットフォームを刷新したから、床を低く抑えることも可能だった。それなのに床を高く保ち、全高は1900mmを超える。乗降性は改善されず、安定性や動力性能でも不利になった。同様のことがほかの背の高い車種にも、多かれ少なかれ当てはまる。
床と天井を高める理由は2つある。まず存在感の強いフロントマスクを含めて、ボディを大きく見せて迫力を持たせることだ。
2つ目はドライバーと乗員が周囲を見降ろせるようにすること。これらはクルマとしての機能を下げて、ドライバーの心理に悪影響を与えることも懸念されるが、たくさん売ることが優先されている。
■ミニバンを除くと後席の居住性は軽く見られやすい
背の高い軽自動車/コンパクトカー/ミニバンを除くと、後席の居住性は軽視されやすい。そのために車種によって後席の広さに違いが生じる。全高が1550mm以下に収まる立体駐車場を使いやすいコンパクトカーでも、ホンダフィットや日産ノートは広いが、マツダデミオ、スズキスイフト、日産マーチは狭い。
ミドルサイズハッチバックも、スバルインプレッサスポーツは広いが、マツダアクセラスポーツは狭い。ファミリーで使う時は注意したい。
コメント
コメントの使い方