自分の愛車が四駆じゃないからといって、雪道を走らせるのをためらってはいませんか?
豪雪地方ならまだしも、雪が降らない、雪が積もらない市街地に住んでいる人で、4WDに乗っている人は、そんなに多くないはずです。
そこで前輪駆動のFF、後輪駆動のFRのクルマに乗っている人に向けて、雪道を上手に、安全に走らせるコツをモータージャーナリストの鈴木伸一さんが解説します。
文/鈴木伸一
写真/ベストカーWeb編集部 JAF
■FF車/曲がる時はとにかくゆっくり!
大衆車クラスでごく一般的な駆動方式のFF(フロントエンジン/前輪駆動車)は、フロントのタイヤが操舵と駆動を兼ねるため、滑りやすい雪道もFR(フロントエンジン/後輪駆動車)と比較して安定して走ることができる。
さらに、駆動輪の上にエンジンがあるため登坂性能も勝っている。駆動側が重いほうが車輪と路面の摩擦が強くなるため推進力が高くなるからだ。
ところが、一定量アクセルを踏みながらカーブに侵入し、カーブの途中で一気にアクセルを離した場合、「タックイン現象」が起きやすい。
「タックイン現象」とはアクセルを離した時、ハンドルを切っている方向に急激に車体が切れこんでいくFF特有の現象のこと。特にタイヤチェーンなどを巻いて、タイヤの抵抗が大きくなっている状況ほど起こりやすくなる。
しかも、後輪側が軽く、駆動力もかかっていないため、フロントが急激に回り込むとリアが滑ってお尻を振りやすい。
このため、FRに比べて一度滑るとコントロールしにくいので注意! アクセルの急激な操作は御法度で、カーブの手前では十分減速し、普段よりゆっくりハンドルを回すことが大切となる。普段の走りでハンドルを手早く切るクセのある人は十分注意したい。
■FR車/滑った時はFRのほうがコントロールしやすい
フロントにエンジンがあって後輪を駆動するFRは、滑りやすい路面でのパワーオン時に姿勢が乱れやすい。後輪側のほうが重量が軽く、推進力が伝わりにくいからだ。
このため、雪道におけるアクセルコントロールは慎重に! 特に降雪時の坂道は注意が必要だ。登りでアクセルを強く踏んでしまうと後輪がスリップしてリアが左右に振られるからで、坂道の下りでは駆動力の掛かっていない(エンジンブレーキの力がかからず、フリーで回転している)前輪のタイヤが滑りやすくなるので注意が必要となる。
また、前輪のタイヤには駆動力がかからないため、ハンドルを切っても曲がりにくい。それゆえFRは雪道では不利で、コントロールが難しいといわれている。
が、リアが滑った時の制御はFRのほうがしやすい。駆動力を下げればトラクションが戻るため、アクセルを戻せばグリップが回復するからだ。
とはいえ、初心者にとってFFより走りにくいこと確か。雪道を走るなら慎重の上にも慎重に!
■スタッドレスタイヤは万能ではない!?
近年のスタッドレスタイヤの性能向上には目を見張るものがある。圧雪路の駆動力においてタイヤチェーンを超えている部分もあり、サマータイヤの駆動輪にチェーンを装着した状態より、四輪にスタッドレスタイヤを履いたほうが走りやすさはもちろんのこと性能面でも明らかに優位。
それだけにスタッドレスタイヤを 履いていれば「雪道は万能」というイメージを抱きやすいが、現実はそうではないことを念頭に入れておくことが大切だ。
雪国ではスタッドレスタイヤを装着していても、タイヤチェーンがないと通れない道路状況が発生することがある。
凍結した急勾配などで、ミラーバーン状態の 坂道発進など厳しい状況に対応するためにタイヤチェーンが必要となるのだ。
近年のスタッドレスタイヤは凍結路にも強くなっているものの、スパイクのように 路面に食い込むチェーンにはおよばないからだ。
また、スタッドレスタイヤはサマータイヤに比べて走行中の剛性が低く、路面が濡れているとブレーキ性能が悪化するため、雪のない道路でも無理は禁物。充分注意したい。
なお、FFで駆動輪の前輪だけにスタッドレスタイヤを装着した場合、前後タイヤのグリップにアンバランスが生じ、リアが滑りやすくなる。特に危険なのが雪道の下りコーナーで、その傾向がさらに強くなる。
このため、4本セットが大原則。同様の理由でチェーンを利用するにしても4輪すべてに装着するのが理想だ。
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