かつて日産は「技術の日産」と言われるほど、クルマの技術に関しては日本一、いや世界に誇れるメーカーだった。その「技術の日産」のフレーズは元を辿れば、1966年に日産自動車が吸収合併したプリンス自動車工業が「技術のプリンス」を掲げていたことに由来する。
そして現在、日産はリーフやe-POWER、独自のハイブリッドを含むパワートレーンやシャシーの進化、自動化への取り組みを進めている。
はたして、「技術の日産」は復活したのか? いまでも「技術の日産」と言えるのか? 日産の最新技術を検証してみた。
文/岩尾信哉
写真/ベストカーWEB編集部、日産自動車
■“らしさ”漂う「ステア・バイ・ワイヤ」技術
さっそく、日産の最新技術は、いまでも「技術の日産」といえるのか、検証していこう。
自動車の最新の技術トレンドといえばいうまでもなく「電動化」。モーターを中心としたパワートレーン関連技術に目が向くが、シャシー技術でも後輪ステアを用いた四輪操舵システムなど見るべきものも多い。
日産は2013年にスカイラインに量産車世界初として搭載された「ダイレクト・アダティブ・ステアリング」は、機械的な接続を介さず、電気的にステアリングとタイヤ/ホイールの操作を結びつけるシステムだ。
ステアリングシャフトを介さないのでダイレクト(直接)と呼んではいても、実際はステアリングの動きを機械的につながないことが特徴なのだからイン・ダイレクト(間接)じゃないかとも思う。
システムの中身は、ステアリングホイールの回転速度/角度を検知して、3個のECUと操舵力を制御するステアリング・フォース、舵角を制御するステアリング・アングル(前輪左右)の計3個のアクチュエーターを用いて前輪を操舵する。
誤操作・誤動作による障害が発生した場合でも常に安全側に制御するためにステアリングシャフト(と断続用クラッチ)は残されているのは、安全面を考えれば致し方ないとはいえ、技術的なインパクトは薄れてしまうのがやや残念だ。
実際にステアリングを握ると、車速が50~60km/hで轍にステアリングをとられるような場面では、ステアリングが微妙に反応しつつ、進路が乱されることなく走りすぎてしまうことが印象に残る。
路面のアンジュレーションが細かく変化するような路面状況に出会うことは日常ではそう多くはないから有り難みを感じにくく、路面から得られるステアリングへのフィードバックの加減やステアリングの操作量と舵角の設定でも、多分にドライバーの好みに影響される要素が大きいので、評価が難しい部分もある。
どうやら現状で自動車メーカーのほとんどがステア・バイ・ワイヤ技術に関して“労多くして功少なし”という見通しを立てて、簡単には手を出さないことは想像できる。
タイヤ/ホイールの細かい動きをコントロールして振動を抑えるなどのメリットはあるから、多少オーバースペック気味とはいえ、“日産らしい”技術といえるだろう。
加えておけば、将来の自律自動運転ではステアリング機能の自動制御も考慮すると、ステアリングシャフトの存在抜きで成立できれば、フロント部分のスペース効率を高めたうえで、シャフト類を介した操作の反応限界を超える作動を実現するなど、メカニズムの進化を促す可能性があるとしておきたい。
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