かつて名声を誇った「技術の日産」は復活したのか?

■世界初の量産化!可変圧縮比エンジン「VCターボ」

日産横浜工場で生産される「VCターボ」と呼ばれるオールアルミ製KR20DDET型直4。構造としてはピストンの支持機構とその位置を変えるモーター機構に分けられ「マルチリンク」と呼ばれる回転機構で構成。ピストンを支持するコンロッドを3本のリンクとモーターに換え、モーターでピストンの上下位置を動かして圧縮比を変化させる。従来のMR20DD型2Lガソリン直噴直4とボアピッチとともに共通とされ、ヘッド周りで共通部品が多く使えることでコストを抑えつつ、新たに燃焼方式にアトキンソンサイクルを採用するなど、燃費向上に努めている。

基礎研究を含めて20年以上の開発期間を経て、2016年に量産エンジンとして初の可変圧縮比を実現した「VCターボ」直噴ガソリン直噴直4エンジンは「技術の日産」の面目躍如といえる。

既存の直4エンジンをベースに、可変圧縮比を実現するために複雑な動きを伴う“マルチリンク”機構を採用した。

VC(Variable Compression)機構を見ていくと、ピストンを作動させるリンク機構は、ピストンと直接つながるコネクティングロッドの役割を「アッパーリンク」が担い、クランクシャフトと結合する独特な形状を与えた「ロワーリンク」(マルチリンク)、これにピストンの動き全体を制御する「コントロールシャフト」で構成される。

エンジン下部のコントロールシャフトに結合する「アクチュエーターシャフト」には、モーターの作動を司る電動制御機構である「VCRアクチュエーター」が備わる。

モーターの制御には「ハーモニックドライブ」と呼ばれる特殊なギア機能を備える部品が使われ、ギア変速をギアキャリアの変形とギアに刻まれた歯数の噛み合わせの変化で機械的に調整できる。

これらのリンク機構の位置関係の変化を精密に制御することによって、微妙きわまる可変圧縮比機能を実現したわけだが、リンクの複雑な位置の変化を実現するためには、リンクに高い強度を与える必要があるなど、生産面での苦労もあったようだ。

この可変圧縮機構では「アッパーリンク」が上下方向に直線的を動くので、ピストンの上下動から生まれる二次振動を抑えるためのバランスシャフトを必要としないことにある。

ピストンが横方向から受ける荷重が少なくフリクションの影響が少なく、摺動抵抗を従来型から44%減少させることに成功した。燃費も北米仕様の都市高速道複合モードは29mpg(24km/L)とされ、従来の3.5L、V6エンジンから約15%燃費を向上させたとしている。

このように、日産の技術を集積させたエンジンなのだから、日本市場のモデルにもぜひ導入してもらいたい。

インフィニティQX50や日産アルティマなどに設定された。ちなみに日産アルティマ2019年モデルの北米価格は、アルティマSの2万3750ドル(271万円)からだが VCターボ搭載車の価格はアルティマSRの2万9150ドル(332万円)から

可変機構によって圧縮比が低圧縮比モードで8:1(排気量:1997cc)、高圧縮比モードでは14:1(同1970cc)に設定した。最高出力/最大トルクはそれぞれ248ps/5600rpmと370Nm/4000rpm(米国仕様、プレミアムガソリン使用)。トランスミッションはCVTが組み合わされ、FWDのみを設定する。

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