21世紀に入ってカーナビは欲しい装備から、当たり前の装備になった感もあり、装着率は高水準をキープしている。手軽さを謳ったポータブルナビなども流行したが、もっと手軽で身近なスマホアプリの登場でカーナビは新局面を迎えている。
ちょっとドライブするだけなら無料のスマホアプリで充分、と感じるケースは確かに多い。では、このままメーカー純正やアフターの市販品のカーナビは淘汰されていくのか?
クルマ界で最もカーナビ、通信関係に詳しい高山正寛氏にわかりやすく分析してもらった。
文:高山正寛/写真:TOYOTA、HONDA、TESLAR、平野学、ベストカー編集部
スマホ無しでは生きていけない? 日々の生活すべてに根付くスマホ
もはや今更説明の必要もないだろう。世界はもちろんだが、日本におけるスマホ(スマートフォン)は我々の生活に無くてはならない存在ということを。
「財布は無くしてもスマホを無くしたら生活が行き届かなくなる」というのも昔はオーバーな表現だったが、買い物から交通機関の支払い、さらに日々登場する新技術によって我々の生活は高度かつ利便性も向上、大きく変化しつつある。
カーナビにも襲いかかったスマホアプリの脅威
クルマについても同様である。音楽を聴くだけでなく、快適性や安全性にもスマホは部分的とはいえ関わってきている。そして、ここ数年の大きなトレンドが「スマートフォンのカーナビアプリ」、いわゆる「スマホナビ」の登場と進化である。
それまでの折りたたみ式携帯電話に代表される「フューチャーフォン」の時代は画面サイズも小さく、アプリのプログラムもそれ程高いレベルのものを実装できなかったが、スマホの時代に入ると前述したネガティブな要素はどんどん改善されていった。
さらにスマホの画面の大型化や高精細化により、地図に代表される情報量も増え、さらに画面の大きなタブレットを使えばこれまで使ってきたカーナビの画面サイズと同等、中には“大画面カーナビ”としても使えるものもある。
実際、有料・無料を問わずAndroid/iOSいずれのスマホ向けのカーナビアプリの数は数えるのも面倒?な程、流通しているのが現状だ。
また昨今、自動車業界は「CASE」や「MaaS」といった産業としての大きな転換点を迎えようとしている。このCASEにおける“C”は“Connect(コネクト)”を意味するわけだが、そもそも通信機器であるスマホは最初からコネクトする能力を持っている。
それまで外部からドライブに有益な情報源としてメジャーな存在だった「VICS(最近では進化したVICS-WIDE)」や「光/電波ビーコン」を活用してきたカーナビに対し、スマホナビの場合は通信のメリットを最大限に活用し“リアルタイム”の情報を取得することができる。
これまでカーナビにも同様の機能を持った商品はあるが、価格が高いのがややネックになっていた。
特にスマホナビの場合、アプリにもよるが、新規に開通した道路やコンビニやガソリンスタンドなどのスクラップ&ビルドに対するアップデートが圧倒的に早い。いわゆる「地図更新」というものも無料で行ってくれるアプリも多く存在する。
「無料でここまでできればもう十分でしょ」。スマホの無料アプリに慣れた我々は当然のことのようにこの状況を受け容れる。スマホナビの登場は普段クルマにあまり乗らない層も含め「特にカーナビはなくてもこれで充分」という層によってじわじわとその勢力を拡大してきたわけだ。
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