ディーゼル、 EV、ガソリン 本当にエコなのはどれだ!!! これで決着!!??

■マツダと工学院大学の研究室がEVとエンジン車のLCAを比較

平均的な発電方法で供給された電気を使うEVに対しては実用燃費を10%強、火力発電で最もCO2排出量が少ないLNG(液化天然ガス)でも25%改善すれば追いつくとして、マツダはSPCCI(スパークプラグによる点火を制御因子とした圧縮着火)を用いることで空燃比30:1以上を可能にするSKYACTIV-Xを開発。そして第三世代SKYACTIVでは、構造遮熱や空気層遮熱も採り入れることで熱効率56.0%を実現し、LNG発電電力を用いたEVに実用燃費で勝る見通しを明らかにしている

 しかし、エコカーの燃費性能が向上するに従い、日本でもLCAに関する論議が高まってきた。

 エンジン車を今後も主軸にしていく方針の自動車メーカーは、燃料タンクに給油した時点からマフラーのエンドパイプから排出されるまでの「タンクtoホイール」ではなく、石油や天然ガスを掘削した時点から、エンドパイプまでの排出量を判断する「ウェル(油井)toホイール」でCO2を判断すべきと主張してきた。

 3月初旬、九州大学で開催された日本LCA学会の研究発表会ではそのほかの産業分野と並んで、自動車関連の環境負荷に関する研究の成果が自動車メーカーや研究機関、大学研究室から発表された。

 そのなかでマツダ技術企画部環境安全規格グループの河本竜路氏が、社内同部署のエンジニアと、工学院大学の酒井氏、稲葉氏らと共同研究でエンジン車とEVのLCAによるCO2排出量についての比較研究による成果を発表したので、その内容をご紹介しよう。

■現行アクセラのガソリン、ディーゼル車とVW eゴルフを比較

e-ゴルフに搭載されているモーターは85kW/115ps、電池容量は24.2kWh
e-ゴルフに搭載されているモーターは85kW/115ps、電池容量は24.2kWh

 比較に用いたのは、欧州Cセグメントで、ガソリン車とディーゼル車の設定があるマツダアクセラと同クラスのBEV(Battery Electric Vehicle。FCVやFCEVと区別するためにEVといわず、専門用語でBEVと呼ばれる)で、スペックから察するにVW e‐ゴルフだろう。

 対象とした地域は米国、欧州、日本、中国、オーストラリアの自動車市場の主要5地域。LCAによるCO2排出量の評価に関してはISOの環境マネジメント国際規格のなかに策定されているISO14040の手順に従って行なったそうだ。

 まずパワートレインを除いたシャーシやボディ、インテリアなどを生産する過程で発生するCO2はエンジン車もBEVも共通とし、LCAのデータベースよりCセグメントハッチバックのディーゼルエンジンはガソリンエンジンより50kg重いので、パワーユニット製造時に2割CO2が多く発生すると算出している。

 BEVに関してはバッテリー、モーター、インバーターの生産時CO2排出量を過去の文献より引用した。

 新車から廃車までに走行する生涯走行距離については、米国(32万km)と欧州(18万km)、日本で基準が異なるため、欧州&各国の平均値として20万kmと設定している。

 燃費に関しては実燃費が望ましいのだが、現実には正確な平均値と呼べるまでのデータはないため、メーカー公表のカタログ値を使用している。EVの走行に用いる電力についても各市場の発電時のCO2係数(1kWhあたり何kgのCO2が発生しているか)を使って走行時のCO2を算出した。

 もちろんタイヤ(4万km)や電装用バッテリー(5万km)、エンジンオイル(1万km)や冷却液(2.7万km)などの消耗品はそれぞれの距離ごとに交換することでCO2排出量が増えることも織り込んでいる。

 その結果、ガソリン車とディーゼル車と、BEVで各市場ごとに20万km走行するまでのCO2排出量を比較すると、やはりというべきか、電力の発電構成によってBEVの走行時CO2排出量が変わってしまうため、各市場の発電構成によってBEVの環境性能が大きく変わってしまうことが分かった。

 ディーゼルエンジンを搭載したアクセラを販売していない米国や中国オーストラリアはガソリン車とBEVの比較のみとなっているが、日本ではガソリン車とディーゼル車ではほぼ同等、欧州ではディーゼル車のほうが2割程度CO2排出量が低く評価されていることから、ディーゼル車を比較していない地域でもガソリン車以下の評価になることはないと思われる。

 そもそもガソリンエンジンに比べ、熱効率に優れるディーゼルエンジンは燃費性能に優れるが、実は燃料である軽油はガソリンと比べ酸素と結び付く炭素量が多い。そのためJC08モードではガソリン車に比べ1割程度しか燃費が高くないためにLCAではほぼ同等となってしまうが、欧州のNEDCモードでは3割も燃費が優れるためにディーゼルのほうが2割程度も低排出量となるのである。

図1は日本におけるライフサイクルCO2の計算結果。ここから、車両の製造時点(0 km)ではGE(ガソリンエンジン)、DE(ディーゼルエンジン)のほうがBEVよりもCO2排出量が低いことがわかる。また、走行距離が増加するに従い、両者のCO2の差が近くなり、GEでは11万1511 kmで、DEでは11万4574 kmで、それぞれBEVよりCO2排出量が多くなる。この距離は、GEとDEのグラフの傾き(燃費値に反比例) が大きくなるほど、またBEVのグラフの傾き(電費値に反比例、電力CO2係数に比例)が小さくなるほど、短くなるといえる
図1は日本におけるライフサイクルCO2の計算結果。ここから、車両の製造時点(0 km)ではGE(ガソリンエンジン)、DE(ディーゼルエンジン)のほうがBEVよりもCO2排出量が低いことがわかる。また、走行距離が増加するに従い、両者のCO2の差が近くなり、GEでは11万1511 kmで、DEでは11万4574 kmで、それぞれBEVよりCO2排出量が多くなる。この距離は、GEとDEのグラフの傾き(燃費値に反比例) が大きくなるほど、またBEVのグラフの傾き(電費値に反比例、電力CO2係数に比例)が小さくなるほど、短くなるといえる

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