トヨタとBMWのコラボレーションによって、トヨタからはスープラ、BMWからはZ4がデビューした。
トヨタとスバルのコラボで生まれた86&BRZに続いて生まれたスポーツカーだが、往年のトヨタファンからは、なぜトヨタは単独でスポーツカーを作らないのか、という声をよく聞く。
そこで、トヨタはスポーツカーをもう単独で作らないのか、それとも作れないのか? 売上高30兆円を誇る、世界の一、二を争う自動車メーカー、トヨタにスポーツカーを作る技術力がないのか?
自身、トヨタのスポーティモデルを7台乗り継いだという、モータージャーナリストの岡本幸一郎氏が解説する。
文/岡本幸一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部
■かつてのトヨタはスポーツカーが豊富だった
筆者はこれまで25台の愛車を乗り継いできた中の7台がトヨタ車で、そのうちGA60セリカXX、AE86トレノ、GZ20ソアラ、JZA70スープラなどスポーティモデルが大半を占める。
ほかにも日本初の量産ミドシップであるMR2や、実質的な後継であるMR-Sを手がけたのもトヨタだ。かつて魅力的なスポーティモデルがトヨタには豊富にあったものだとつくづく思う。
ところが、2002年の80スープラの生産終了後は、4代目ソアラ=レクサスLCや、別格的なLFAこそあったものの、いわゆるスポーツカーらしいスポーツカーが長らくラインアップされずにいた。
やがて86が世に送り出され、レクサスからはRC、LCが登場し、このほどスープラが発売されたものの、せっかくスポーツカーが出てきたかと思えば、RCとLCこそ純粋にトヨタ=レクサスで開発したものの、ご存知のとおり86はスバルと、スープラはBMWとのコラボによるものだ。
86もスープラも、それぞれ提携先との思惑が一致したところから話がはじまり、このような運びとなったという。
86は当時スポーツカーを有していなかったトヨタと、それまでFRのスポーツカーを作ったことがなく、ぜひ機会があればチャレンジしてみたいと兼ねてから考えていたスバルとのコラボにより生まれたクルマである。
次期86&BRZは、インプレッサのプロジェクトゼネラルマネージャーだった現・技術開発センター商品企画本部担当兼商品企画本部長 阿部一博氏が先頭になって開発しているとは聞いているが、まだ先は見えない。
これまでの流れを見るにつけ、86はビジネスとしても十分に成功例と捉えてよいように思える。
一方のスープラも状況は似ていて、BMWにとっても、あまり売れ行きが芳しくなくなり、しばし販売を休止していたZ4をどうするかは悩みの種だったところ、すでに提携関係を結んでいたトヨタが復活の機会をうかがっていたスープラと共同開発するという案は、願ったりかなったりだったようだ。
いずれもそれなりに話題性は高く、期待の大きさがうかがえる。とはいえ、おそらく日本では、この価格帯の2シーターのスポーツカーがそれほど売れることはないだろう。トヨタがスープラで睨んでいる主戦場は、やはり北米市場に違いない。
2019年初のデトロイトショーが「スープラ祭り」となっていたのも、それを象徴している。その盛り上がりようは日本の比ではない。
また、このクルマがどんな成り立ちであるかなどを日本人はとても気にするが、北米ではあまり問題とされない。
現物そのもので勝負というお国柄ゆえ、カッコよくて走りがよければ、それでOKなのだ。BMW云々というのがあまりマイナスに受け取られることもなければ、むしろよいほうに受け取られているともいえる。
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