2019年4月19日に起きた東京・池袋の高齢ドライバーによる死亡事故以来、高齢ドライバーによる免許の自主返納が全国的に急増しているという。
こうした高齢ドライバーによる交通事故が相次いでいることをうけ、 2019年6月10日、東京都の小池百合子知事は ブレーキとアクセルの踏み間違いよる急発進を防ぐペダル踏み間違い加速抑制装置を買った高齢者に購入&設置費の9割を補助することを表明した。
また、2019年6月18日に開かれた政府の関係閣僚会議で、75歳以上の高齢ドライバーには、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い加速抑制装置が装着されたクルマに限って運転できる「安全機能付き高齢者限定免許」の新設を決めた。
はたして、高齢ドライバーの免許返納は何が正しいのか? 根底にある原因と解決策を考えてみた。
文/高根英幸(自動車テクノロジーライター)
写真/警察庁 Adobe Stock
東京・池袋の事故以来、高齢者の免許返納が急増中!
75歳以上の高齢ドライバーは2018年末時点で563万人。75歳以上の高齢ドライバーが過失の最も重い「第1当事者」となった交通死亡事故は460件で前年より42件増え、全体の14.8%を占め、過去最高を記録した。
そんななか、2019年4月19日におきた東京・池袋の悲惨な交通事故以来、全国的に免許を返納する高齢者ドライバーが急増している。
この事故をうけて警視庁管内では5月の大型連休後の3日間だけで通常に2倍以上にあたる約1200人が免許を自主返納したという。
免許所有者は必ずしも移動にはクルマの運転が必要な方ばかりではないだろうが、運転免許を返納するということは、自分が社会的に自立した人間ではなくなってしまうような気がするのだろう。
不安とプライドが入り交じって、なかなか返納に踏み切れない方も多いようだ。判断力が鈍ったり、感情を抑えることが難しくなってくることもあって、周囲の人間の説得もなかなか難しいものがある。
そのため、「運転操作ミスによる交通事故を防ぐためにも75歳で免許を返納すべきだ」、なんて定年制を訴える人もいる。気持ちはわからなくもないが、運転免許を定年制で打ち切ってしまうのはいささか暴論過ぎるだろう。
高齢ドライバーの運転操作ミスによる交通事故で若い人命が失われてしまうのは、確かにやり切れない。
しかし、高齢者でなくても、運転操作をミスするドライバーは存在する。ならば一定上の経験年数があるドライバーで運転が下手なドライバーは、即座に免許取り消しにしなければならなくなるではないか。
自分が高齢者になった時のことを想像してみてほしい。年齢が75歳に達したというだけで運転免許を取り上げられて、移動の自由を奪われても平気でいられるだろうか。
後期高齢者は公共交通機関や親族が運転するクルマに乗せてもらえばいい、と考えるのは他人事だからだ。
なるべくならそういった移動手段を使ってほしいとは思うが、高齢になってもキチンと運転する能力を有する人には運転免許の保持を認めてあげるべきだ。
そもそも定年制を訴える人は、「運転免許を返納させれば高齢者ドライバーは運転しない」とでも思っているのだろうか。
善良な多くの高齢ドライバーはイザ知らず、問題を抱えた高齢ドライバーに常識が通じると考えてしまうのは、いささか考えが甘いと言わざるを得ない。
免許を返納しに軽自動車で訪れて、返納後にそのまま運転して帰ろうとする高齢者ドライバーが少なくないのは笑い話ではなく、どこの免許センターでも聞く話だ。
判断力が鈍ってくれば、善悪の区別も付きにくくなる。免許を返納しようが、自分は運転できると思ったらクルマを運転してしまうのが認知力の低下した高齢者ドライバーがもつ危険な一面なのだ。
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