外気温が35度を超える酷暑日が続いておりますが、もしこんな時にエアコンが効かない、冷えないとなったら……。
考えただけでもゾっとしますが、エアコンが壊れたら、ほんとうに危険、熱中症になってしまいます。
そんなことにならないように、あなたの愛車はエアコンが正常に動いているか点検していますか?
そこで、1回もエアコンの点検を行ったことのない人のために、エアコンの仕組みから、故障とその原因、さらには修理代金はいくらかかるのか、モータージャーナリストの鈴木伸一氏が解説します。
文/鈴木伸一
写真/ベストカー編集部 Adobe Stock
酷暑の夏にもしエアコンが壊れてしまったら……
クルマに本格的な空調が装備されだした当初、冷風を作り出すシステムは「カークーラー」が主流であった。
この「カークーラー」は冷房専用機で、冷風しか吹き出すことができなかったのに対し、現在主流の「カーエアコン」は冷・暖房を総合的に制御する「空気調和システム」として機能している。
ところが、冷風を作り出している基本原理、そしてシステム構成は今も昔もほとんど同じなのだ。
まず、基本原理。アルコールで湿らせた脱脂綿で腕を拭くと、直後に「スゥー」と冷たく感じる。
これはアルコールが蒸発するとき皮膚から熱を奪うことで生じる現象で、このように液体が気体に変化するときに周囲から必要な熱を奪う現象を「気化熱(または蒸発熱)」。そして、熱を奪う物質(媒体)を「冷媒」と呼んでいる。
「カークーラー」や「カーエアコン」の冷房機能は、基本的にこの原理を応用したものだ。ただし、「気化熱」を連続的に生じさせるために、蒸発した液体を大気中に放出し続けたりしたら「冷媒」を無駄に消費するだけ。効率も悪いし環境にも良くない。
そこで、密閉された冷却回路内で、一度気体になった「冷媒物」を再度、液体に戻すことで再利用している。つまり、液体→気体→液体という変化を繰返しつつ循環させているわけで、冷却回路内(クーラー機構)に「冷媒」として「フロンガス」が封入されている。
この冷却回路、「エアコン・コンプレッサー」、「コンデンサー(細かな冷却フィンが設けられたラジエター状の熱交換器)」、「レシーバー&ドライヤー」、「エキスパンションバルブ」、「エバポレーター(これもラジエター状の熱交換器)」といったパーツから構成され、それぞれを金属パイプや高圧対応のゴムホースでつながれており、一定量の「フロンガス」が充填されている。
その冷風が作られるサイクルを追ってみると、気体状の「フロンガス」は、まず「コンプレッサー」で圧縮され、高温・高圧の状態(約70度:15kg/c㎡G)になる。
そこから吐き出された冷媒はクルマ正面の走行風に真っ先にさらされる部位に取り付けられた「コンデンサー」に入り、フィンを通過する空気によって熱を奪うことで「液化(約50度)」される。
液化した「フロンガス」は「レシーバー&ドライヤー」に入って水分やゴミを取り除かれ、「エキスパンションバルブ」で急激に膨張させられることで、低温・低圧の霧状へと変化。
この霧状の「フロンガス」が車内に設置されたエアコンユニット内に組み込まれている「エバポレーター」に送られ、フィンを通して周囲の空気から熱を奪うことで、周囲の空気が冷気へと変化。それと同時にガス状に戻っていく。この冷気へと変化した空気を、「ブロワファン」で車内に吹き出させているわけだ。
また、ガス状に戻った「フロンガス」は再び「コンプレッサー」に吸入される。これで1サイクルが終了し、以後同じことを繰り返しつつ循環している。
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