ダイハツはどうなってしまうのか…「悪いクセが染みついている層」を一掃できるかが再建への鍵

ダイハツはどうなってしまうのか…「悪いクセが染みついている層」を一掃できるかが再建への鍵

 ダイハツ不正の状況について国交省から最初の「ご沙汰」が出た(※)。内容をチェックすると「3車種の型式認定を取り消す手続きを始める」というもの。この件、すでに多くのメディアはニュースとして伝えているけれど、「キリンを見たことが無い人」にキリンの説明をするようなもので、理解しにくい。現在の状況と、今後のダイハツの動きがどうなるか、日本語に訳して紹介してみたいと思う。

文/国沢光宏、画像/ベストカー編集部、ダイハツ
※…2024年1月16日、ダイハツ工業へ立入検査を実施していた国土交通省は調査結果を通達。「3車種(ダイハツグランマックス/トヨタタウンエース/マツダボンゴ)の型式認定取消」、「新たに14件の不正を確認」、「是正勧告(1カ月以内の再発防止策提出)」、「2車種(ダイハツキャスト/トヨタピクシスジョイ)のリコール指示」の4件を公表した

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■国交省としては珍しい大岡裁きになった

 まず国交省だけれど、基本的にご立腹である。斉藤鉄夫大臣はダイハツ奥平総一郎社長に是正命令書を突き出しながら、「型式指定の信頼性を根本から損ない、我が国の製造業への信頼も傷つけるもので、極めて遺憾。体制や体質を抜本的に改革しなければ失墜した信頼は取り戻せない」と説教した。

 国民からすれば羽田空港の接触事故(海保も管制も国交省)のほうが極めて遺憾だと言いたいですが。

今回「型式認定取消」の処分を受けたダイハツグランマックス(トラック)。「型式認定」は国がメーカーの社内検査を信頼して「これと同じ基準をクリアしているなら同じクルマをどんどん量産していいですよ」という資格。この信頼が崩れると、一台一台試験を課さなくてはならない。我が国の自動車産業の根幹を支える制度
今回「型式認定取消」の処分を受けたダイハツグランマックス(トラック)。「型式認定」は国がメーカーの社内検査を信頼して「これと同じ基準をクリアしているなら同じクルマをどんどん量産していいですよ」という資格。この信頼が崩れると、一台一台試験を課さなくてはならない。我が国の自動車産業の根幹を支える制度

 それはさておき、国交省としては厳しい判断をしたいところだろう。かといって不正のあった車種すべての型式指定を取り消すと、最短でも工場が1年近く稼働できなくなる。こうなれば経済に与える影響は極めて大きい。そもそも論として「だったら申請時点で厳しいチェックをするべきだ」ということにもなる。そこで「安全に問題がなければ特例として許してやろう」という方向を打ち出したようだ。

 とはいえすべてOKにすると、これまた示しがつかない。おそらく国交省も熟考したんだろう。「3車種の型式認定を取り消す」という処分を選んだ。型式認定の取消処分は、国交省の処分として最も重い。過去を辿っても日野自動車のトラックのみ。というか、日野自動車が初めての型式認定取り消しだった。今回対象になった3車種は、インドネシア工場で生産されるトラックだ(1BOXカーは対象外)。

 厳しい処分であるものの、3車種は兄弟車で事実上1車種。販売台数は極めて少ない。加えて日本以外で販売する兄弟車についていえば、「その国の当局の判断に任せる」という内容。インドネシア工場の稼働状況が悪化し、インドネシア人の仕事を奪うことにもならない。

ダイハツは新たに国交省立ち合いのもとグランマックスのエアバッグ衝突試験を実施、ただちに安全に問題がないことを確認した。これを根拠に「乗り続けても問題ない」としているが、だったら試験で不正するなよ…という……。ダイハツは認証試験時、グランマックスのエアバッグを「自力着火」ではなく「タイマー着火」するよう加工していた
ダイハツは新たに国交省立ち合いのもとグランマックスのエアバッグ衝突試験を実施、ただちに安全に問題がないことを確認した。これを根拠に「乗り続けても問題ない」としているが、だったら試験で不正するなよ…という……。ダイハツは認証試験時、グランマックスのエアバッグを「自力着火」ではなく「タイマー着火」するよう加工していた

 そうそう、記者会見で「日本で型式指定取り消しのクルマを現地で売るのは失礼なことでは?」という質問が出た。それこそ現地に失礼な話だ。情報を出した上で、その国の判断に任せればいい。

 結果的に厳しい処分はしたものの経済的なダメージはほとんど無い、という、国交省としては珍しい大岡裁きになった。

 されど、です。首狩族的なメディアからすれば「それで終わりかよ!」。

 首狩族はトップに頭を下げさせ、引責辞任に追い込んで手柄となる。奥平社長が出てこないため、上げた拳を下ろせない。

 そんなタイミングで、今回新たに14項目の不正と、リコール案件などが出てきた。

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