こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】誰も知らないブーンベースの3列7人乗りミニバン[ルミナス]がフリードになれなかった理由

■女性ユーザーも運転しやすくて使いやすいことにこだわる

 女性ユーザーを意識していたことは実用性だけにとどまらない。特に取りまわしのしやすさはミニバンクラスではトップレベルの能力を有しており、これも運転が苦手な女性でも気軽に運転できるための配慮と言える。

 全幅1695mmの5ナンバーサイズとしているので、車両感覚がつかみやすく、狭い路地を走るときやスペースのない駐車場でもスマートに扱える。ホイールベースを2750mmと、コンパクトミニバンにしては長めに設定されているが、最小回転半径は5.2mを実現。

 これも狭い場所でも安心して運転できる取りまわしのよさを実現する要素となっている。また、大型の三角窓を採用するとともに、ドアミラーを三角窓の後方へ配置するといった工夫によって斜め前方の死角を減らし、周りの状況がよくわかる広い視界を確保したことも運転のしやすさをもたらした要因だ。

運転席まわりは左右への広がりを強調したデザインを採用。インパネ中央に配置した大型2眼メーターにはマルチインフォメーションディスプレイが備わり、瞬間燃費計とエコインジケーターで低燃費運転をサポートする
運転席まわりは左右への広がりを強調したデザインを採用。インパネ中央に配置した大型2眼メーターにはマルチインフォメーションディスプレイが備わり、瞬間燃費計とエコインジケーターで低燃費運転をサポートする

 内外装のデザインは、ファミリーカーとしてだけでなくパーソナルカーとして魅力的な選択肢となることにこだわり、ファッションなどにこだわりのある女性にも納得してもらえるような上質感を目指したという。

 外観はすっきりとしたシンプルなフロントビューに、エンジンフードからフロントバンパーへと縦に流れる立体的なラインを施すことで、躍動感のある印象を強調し、シャープさと親しみやすさを両立している。

 フロントピラーを前へ出して伸びやかなワンモーションフォルムを形成し、流れるようなシルエットを実現。ウインドウの周辺を凹面で削ぎ落としたデザイン処理を施すことで、フロントからリアまで一体となったフォルムを形成している。

 リアビューはワイドトレッドとしたことが功を奏し、タイリッシュなプロポーションをしっかりと受け止める安定感が表現されている。

 運転席まわりは、左右に大きく広がるラウンド形状のデザインとし、両サイドを前方に出すことで広々としたイメージを演出。インパネ中央には視認性に優れた大型2眼メーターを採用し、厚みのあるアクリルを用いて立体的なリング加飾を施すなど、洗練された上質な雰囲気を漂わせている。

 内装色はダークブラウンとグレージュのツートーンとし、インパネやドアトリムには質感の高い表面処理が施される。こうした作り込みによって特別感のある室内空間に仕上げている。

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■200万円を切る価格でミニバンに必要な機能と性能を追求

 コンパクトとはいえ、ミニバンであるからには心地よくドライブできて、安全であることも重視される。走りついては、低・中速域での豊かなトルクと高速域でのスムーズな加速性能を両立した1.5L 3SZ-VEエンジンの搭載をはじめ、ロングホイールベース、ワイドトレッドによって優れた加速性能や走行安定性能を実現している。

 街なかでのキビキビとした走りから高速走行まで、さまざまなシーンでゆとりのあるドライブが楽しめた。そのうえで10・15モード走行燃費は15.6km/L(2WD車)を達成し、まだハイブリッドが主流になる以前の新車のなかでも優れた経済性と環境性能を実現していた。

 ファミリーカーとして家族の誰かが乗っても安心かつ快適に運転できることにもこだわっている。ロングホイールベースの採用とボディの四隅にタイヤを配置したこと、さらに空気抵抗の少ないスタイリッシュなフォルムも走行時の安定性にも寄与している。

 安全性については現代のクルマのような全方位で安全運転を支援する機能は備えていないが、横滑り防止装置のVSCをはじめ、コンパティビリティの概念を取り入れた衝突安全ボディを採用。万が一の衝突時にはサイド、カーテンシールドエアバッグによって乗員を保護する能力が高められている。

車内には最大7名が乗車できるスペースを確保。2列目シートは足もとのスペースに余裕をもたせ、150mmのシートスライドや最大20度のリクライニングによってゆったりと乗車できる。3列目は床を低くするなどの工夫を施しているが、大人が長時間座るのは厳しい
車内には最大7名が乗車できるスペースを確保。2列目シートは足もとのスペースに余裕をもたせ、150mmのシートスライドや最大20度のリクライニングによってゆったりと乗車できる。3列目は床を低くするなどの工夫を施しているが、大人が長時間座るのは厳しい

 コンパクトカーをベースにしながら、7人乗り3列シート車に求められる利便性を追求し、日常利用に十分な機能・装備を採用しながら200万円を大幅に下まわる153万5000円から、というリーズナブルな価格設定としたことも注目された。しかし、コストパフォーマンスの高さが販売に直結することはなく、ブーンルミナスは約3年の販売期間に、マイナーチェンジはおろか一部改良すら実施されていない。

 ミニバンクラスは箱型ミニバンを定番としながら、走りのよさを追求したストリームやオデッセイ、スタイルのよさを強調したウィッシュ、ユニークな作りで独自性をアピールしたラフェスタやエクシーガなど、箱型ミニバンに対抗でき得る要素を持ち合わせたモデルが市場で一定の支持を集めていた。しかし、ブーンルミナスはロールーフミニバンを選ぶユーザーから支持を得ることは叶わなかった。

 3列シート車は欲しいが、小さなミニバンでは用を成さないと考えるユーザーが多かったことが影響したのかもしれない。しかし、ユーザーをファミリーだけに特化せず、女性を意識して作り込むなどの画期的な試みは、今になって思えば高く評価できる一台だったといえよう。

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