今後もトヨタ車は堅実に売れ続ける
昔からファミリーカーの価格上限は200万円前後とされ、1996年に発売された初代タウンエースノアの価格は、売れ筋になるスーパーエクストラが2Lエンジンを搭載して195万5000円(消費税別)であった。
それが今は、同様の消費税別でも、ノーマルエンジンを搭載したノアSiは258万6000円だ。消費税別でも200万円前後のミニバンを探すと、1.5LのシエンタGが187万1000円、シエンタGクエロは201万2000円になる。
これに10%の消費税を加えると、ノアSiが284万4600円、シエンタGが205万8100円、Gクエロは221万3200円に達する。クルマの価格が高まり、消費税も10%になって、割高感がますます強まった。
そのいっぽうで1世帯当たりの平均所得は、1990年代の後半をピークに下がり続けている。最近は少し持ち直す傾向にあるが、依然として20年前の水準に戻っていない。
つまり安全装備や環境性能の進化でクルマの価格が高まり、10%の消費税も上乗せされ、そのいっぽうで所得は減っているのが実情だ。そうなるとユーザーとしては、買うクルマのサイズを小さくするしかない。
そして今後所得が大幅に上向くとは考えにくく、当分の間、軽自動車とコンパクトカーの時代が続く。
軽自動車の販売比率は前述のように国内市場全体の40%弱、コンパクトカーは25%(登録車に限れば約40%)という比率で推移するだろう。
この現状を見据えて、トヨタはルーミー&タンク、アクア、シエンタといったコンパクトな車種を揃え、先ごろコンパクトSUVのライズも加えるなど抜かりない。
ヴィッツはフルモデルチェンジを受けてヤリスを名乗り、前席を優先させた上質なコンパクトカーに進化させる。
今後はヤリスのプラットフォームを使って、かつてのファンカーゴに相当する背の高いファミリー向けの上質なコンパクトカーも開発されそうだ。
市場に合った小さなクルマを中心に、トヨタ車は堅実に売れ続けるだろう。
軽自動車依存はトヨタに好都合
ほかのメーカーも動向もトヨタの販売に影響を与える。
今のホンダはN-BOXの売れ行きが好調で、国内販売の総合1位になった。しかしこれに伴ってホンダでは登録車の売れ行きが下がり、N-BOXだけで、国内で売られるホンダ全車の34%前後を占める。軽自動車の届け出台数を合計すると、ホンダ全車の50%以上だ。
日産も軽自動車の国内販売比率が35%前後に達する。
最近の日産は新型車が乏しく、堅調に売れる登録車はノートとセレナ程度だ。その結果、軽自動車の販売比率が上昇した。
2019年度上半期の場合、デイズ+デイズルークスだけで日産の新車販売台数の29%になり、ノートとセレナを加えると67%に達するのだ。
このようにダイハツとスズキに加えて、ホンダと日産まで軽自動車への依存度を強めると、登録車が中心のトヨタにとっては都合がいい。直接的な競争相手が減るからだ。登録車市場のシェアをさらに伸ばしやすくなる。
ただし軽自動車というカテゴリーは依然として脅威になるから、トヨタはコンパクトカーの品揃えを充実させる。ライズもそのひとつに位置付けられる。
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