MT車の醍醐味はスポーツカーだけのものではない。豪華な装備も大馬力もないけれど、クラッチを踏み、シフトレバーを動かし、エンジンを回して走る。そんな当たり前の操作が楽しいのだ。まるで素うどんのように、シンプルだからこそ味わい深い。いま新車で買える、実用的でお財布にも優しい「素うどん級」のMT車5台を紹介しよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部
ワゴンRの5速MTはまさに素うどん級! 普段の買い物だって楽しくなる
かつて軽自動車にMTがあるのは当たり前だった。ところが、いまや軽自動車の主流はCVT。気がつけば、普通の軽乗用車でMTを選べるモデルは数えるほどになってしまった。
そんな時代に、頑固なまでに5速MTを残しているのがスズキのワゴンRである。
1993年に初代が登場したワゴンRは、背の高い軽ワゴンというジャンルを開拓した立役者。現行型は2017年に登場した6代目で、2025年12月にはフロントマスクの刷新や安全装備の充実を図る一部改良が実施された。
現在、5速MTを選べるのは660cc自然吸気エンジンを搭載するZLグレード。2WDと4WDの両方に設定され、価格は2WDが145万7500円、4WDが158万700円である。
しかも、2WD・5MT車のWLTCモード燃費は25.1km/L。ハイブリッドではない普通のガソリンエンジンと5速MTの組み合わせで、この燃費性能を実現しているのは立派だ。
ワゴンRのMT車の魅力は、特別なクルマに乗っているという気負いがまったくないことだ。広い室内、高い着座位置、使い勝手のいい後席など、実用車としての基本はしっかり押さえている。
そんな生活感あふれる軽自動車にクラッチペダルがあり、5速のシフトレバーが備わっているのだから面白い。
660ccの自然吸気エンジンだけに、アクセルを踏めば豪快に加速するというわけではない。むしろ、エンジン回転数を意識しながら適切なギアを選ぶことが重要になる。
坂道では早めにシフトダウンし、平坦な道では高めのギアを使ってゆったり走る。これだけでも運転しているという実感がある。
速く走るためではなく、普通に走ることを楽しむ。スーパーに買い物へ行く道中でさえ、ちょっとしたドライブに変わるのだ。
気負わず毎日乗れるMT車として、ワゴンRはまさに素うどん級の代表選手といえる。
スイフトHYBRID MXの5速MTは隠れた名車! 走りも燃費も欲張れる
スズキのコンパクトカーでMTといえば、真っ先に思い浮かぶのがスイフトスポーツだろう。
しかし、今回注目したいのはスポーツの付かない普通のスイフトである。現行スイフトは2023年12月に登場したモデルで、1.2Lの直列3気筒エンジンを搭載。マイルドハイブリッド仕様のHYBRID MXには、2WDに5速MTが設定されている。
1.2LのZ12E型エンジンは最高出力82ps、最大トルク108Nm。これにISG(モーター機能付発電機)を組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを採用する。
価格は192万2800円。200万円を切る価格で、新車のハイブリッドMT車が手に入るというのだから、なかなか魅力的ではないか。
さらに驚くのが燃費性能だ。HYBRID MXの5速MT車は、WLTCモード燃費25.4km/L。これは同グレードの2WD・CVT車が記録する24.5km/Lを上回る数値である。MTだから燃費が悪いというのは、もはや昔の話なのだ。
スイフトの魅力は、軽量なボディを生かした軽快な走りにある。車重は5速MT車で920kg。コンパクトな車体は扱いやすく、曲がりくねった道でもドライバーの操作に素直に応えてくれる。
そこへ5速MTが組み合わされるのだから、楽しくないわけがない。スイフトスポーツのような強力なターボエンジンはないものの、そのぶんアクセルを踏み込める場面は多い。ギアをひとつ落として加速したり、エンジン回転数を合わせながらシフトダウンしたりと、MTならではの操作を楽しめる。
しかもマイルドハイブリッドなので、燃費のよさも日常生活での大きな武器になる。家族を乗せて買い物に出かけ、週末には少し遠くまでドライブする。そんな使い方にピッタリだ。
派手なエアロパーツや大きなホイールはいらない。普通のコンパクトカーにこそ、MTの楽しさが凝縮されていることを教えてくれる一台である。



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