■改善はまだ道半ば
モータースポーツにおける『安全』の二文字は、選挙の街頭演説で候補者が口にするような(ほとんど)実効性を伴わない扱いが許されるものではない。とはいえこのスポーツの特性上、競技中に『絶対的な安心・安全』を求めるというのなら、サーキットになど来ないで家で寝てなさい、ということになる。
今季SFではSCの運用など、過去の例に鑑み、より安全に配慮したルールの改善が図られているが、その道はまだ半ばであることも確かだ。
予選での出来事だが、タイムアタック中の笹原右京のマシンがメインストレートから1コーナーに向かっていた時、国本雄資のマシンがコースに入ってきた。
国本は笹原がアタックラップに入っていることを理解していたが、チームから特に『ピットロード出口で待て』の指示もなく、笹原のスピードからして2~3コーナーで自分を追い抜いていけるだろうと考えたのだという。
特段危険だったわけでもなく、ましてや国本に悪気があったわけでもないが、アタックを邪魔された笹原が予選A組の最下位になったことに変わりはない。
笹原も国本の動きに惑わされることなく瞬時に進路を変更しズバっと抜いていく老獪さを、これを機にモノにしていただきたいが、いずれにせよ非はあやふやな動きをした国本にある。
それに対するペナルティが3グリッド降格という何やらハンパな数だったのは、笹原への『だからって国本の後ろについていかんでもエエがな』という考えの反映だったと聞き及んでいる。
このような事例がたった3グリッド(といっても大きいが)降格で済むのなら、私が年間タイトルと翌年のスポンサー契約がその一戦にかかっているチームの代表だったとして同じシチュエーションになった時、セカンドドライバーに「わかってるよね」とこっそり耳打ちする誘惑に逆らえる絶対的な自信はない。
F1では現実にいくらでもあったこのような『駆け引き』がSFで横行する懸念は必要ないと思うが、ドライバーやチームがあらぬ誤解や恨みを受けないためにも、ペナルティを課すときは温情ナシの厳しい姿勢で臨むことが、ズルさや不正直を本質的に嫌う日本人の気質に沿った最高峰モータースポーツが志したい姿勢ではなかろうか。
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