■「あの」カンクネン氏と「あの」マキネン氏が競演
GRヤリスRally2のスタイリングはGRヤリスのイメージそのままだが、個性的なリアウイングと迫力のオーバーフェンダー、大型のベンチレーションを採用し、簡単に「エボモデル」と言いきれないほどの雰囲気が漂う。
ラリージャパンを生で観戦すると爆音になれてしまうが、GRヤリスRally2のサウンドはGRヤリスRally1のドスンと腹に響き渡るようなものとは違い、より高いレーシングサウンドを響かせる。シーケンシャル5速の変速とともに小気味のいいエキゾーストが響き渡る。
その加速が凄い! まるでグラベルのコースをじゅうたんで飛んでいるように加速していく! モリゾウさんが言っていたのはこれか! …と、こっちも興奮してきた。カンクネン氏のドライビングはその全盛期に「四輪が磁石で吸いついているようだ」といわれたが、今もまったくその通りで、生き物のようにコーナーをトレースし、姿勢がとにかく安定している。つまり、サスペンションがよく動いていることがよくわかる。急きょ決まったデモランというが、その走りは鮮烈で記憶に焼き付いた。
GRヤリスRally2の計算上のパワーウェイトレシオは4.2kg/hpとなり、市販車の4.6kg/hpとあまり変わらないように思われるが、立ち上がりから一気に最大トルクを発生し、そのまま最大トルクが続くエンジン特性のため、数値以上に鋭い加速を手に入れているのだ。
その後に走った水素エンジンヤリスも凄かった。こちらのデモランを担当したのは、もう一人のレジェンドドライバー、トミ・マキネン氏。日本が大好きで日本のファンへのサービスに抜かりのないマキネン氏だけに、魂のこもった全開ドリフトを披露。ギャラリーから喝采を浴びていた。
■敬意と、世界への発信と
さて話は戻って、今回GRヤリスRally2のデモランを(自ら運転することを)見送ったモリゾウさんが、その真意をこう語った。
「モリゾウがいくら有名でも、彼ら(カンクネン氏とマキネン氏)のほうが人気がありますよ! レジェンドたちの走りを見ることで、これまでラリーを知らなかった人たちにWRCへの関心が深まればいいと思います」
モリゾウさんは世界選手権であるWRCラリージャパンに敬意を表し、2017年にトヨタがWRCの舞台へ復帰することを後押ししてくれた2人のレジェンドへ、恩返しの気持ちがあったのではないだろうか。
「2人が本気で攻めた走りを披露してくれ、クルマからいい笑顔で降りてくれたことがとてもうれしかった。トヨタがカンクネンさんとマキネンさんの故郷であるフィンランドでGRヤリスRally1やRally2を開発し、第2の故郷となりましたが、彼らがここ日本を第2の故郷だと思って走ってくれたことが何よりもうれしかった」
と語ってくれた。
カンクネン氏とマキネン氏がデモランをすることで、GRヤリスRally2と水素エンジンヤリスのニュースは欧州を中心に世界を駆け巡ったはずだ。トヨタの「WRCへの本気」をアピールするとともに、Rally2より下のカスタマービジネスをしっかりやっていくという決意を知らせることになったはずだ。
またモリゾウさんは、
「WRCチャレンジプログラムで(フィンランド選手権を中心にルノー・クリオRally4で)参戦している3人の若武者が、このGRヤリスRally2に乗り、鍛えられることで、いつの日か勝田貴元選手に続くトップカテゴリーを戦えるドライバーに成長すればいいと思います」
と、もうひとつの狙いも語った。
モリゾウさんが乗れば、ここ日本では大きな話題にはなるが、世界への発信を考え、あえて乗らない選択をしたモリゾウさんの深謀遠慮、GRヤリスRally2がこれからどんな影響を与えていくのか、楽しみだ。
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