■まるで自分の相棒と会話しながら自動で移動?
サイコマはステレオカメラと単眼カメラを組み合わせることで高精度地図がなくても、そして複雑な障害物があるような未知の場所でも走行できるのがウリ。そこで、実際に体験試乗会では、サイコマとのコミュニケーションを専用アプリ搭載のリスト型スマホで実施した。
まず、スマホの専用アプリでお迎えを依頼して「ブックカフェまで迎えに来て」というと、すかさずスマホ上でこちら側の意図を確認するように「お迎え先はブックカフェでいいですか?」と聞いてくる。まるで人間同士で会話しているかのようなのだ。
実際にサイコマが迎えにきたので、指示された位置まで歩み寄り、サイコマに手を振って合図を送るとその姿からユーザーを認識する。こいつはめちゃくちゃ賢いじゃないか!
さらに、移動中にユーザーがほかの場所に行きたくなったらその意図を理解するだけでなく、実際の交通シーン、つまり停車場所にこちらが指定したところがちょっと危険な場所だった場合には適切な停止位置を再度依頼するようにこちらに伝えてくる。
なんというか、クルマに乗らされているというよりも自分の相棒的なロボットと会話しながら移動を楽しんでいるかのような感触。人と人同士による会話のキャッチボールがAIである「CI」によって実現しているのだ。
また、後ろからランナーが来たり、ほかの歩行者がいる場合、サイコマはシーンによって停止したり、安全だと認識した場合は安全な速度で走行したり、あたかも人間のような判断を下す。
サイコマの開発を担当した本田技術研究所の松永秀樹氏によれば「6km/h以下の低速自動運転ではほかの歩行者の距離に対していかに周りに不安感を与えないようにするのが開発上で苦労したポイント」と話していた。
■高齢者は買い物をする際の荷物の重さがネックでクルマを使ってしまう
続いてはマイクロモビリティロボットのワポチを体験。こちらはユーザーの服の色や髪の色、背格好などをCIが抽象化することで記憶して認証するシステムを採用。30kgまでの荷物を荷台に載せることが可能で、ユーザーは手ぶらでこのワポチに人込みを先導してくれたり、追尾してくれたりする3輪ロボットだ。
本田技術研究所が常総市でアンケートを取った調査によれば、特に高齢者は買い物の時に買った荷物が多いと重くて持ちきれないため、しかたなくクルマで出かけることが多いのだという。
しかし、これが続くと歩かないことで健康寿命が低くなり、事故リスクが高まってしまう。本当は健康のために歩いて買い物に出かけたいのに、荷物の重さがネックとなってクルマを使ってしまうのが買い物をする際の困りごととしてわかった。
そこで本田技術研究所は歩行サポートによる暮らしの質を向上させるためにワポチを開発。ワポチに荷物を載せて追尾してもらうことで手ぶらで楽々街中を移動でき、高齢者の場合にはワポチに先導してもらうことで歩くスペースを確保できるのがメリットとなる。
このワポチも実際に体験してみたところ、まずは先導モードの場合は自分の右少し前に位置して先導してくれる。前からほかの歩行者が歩いてきたり、道端の側溝が近づいてきたりするとたくみによけて先導してくれるのには感心した。
ただし、こちら側があまり歩くスピードが速すぎるとワポチは対象ユーザーを見失ってしまう。このあたりは常識的な歩行速度を対象としているためのようだ。
ワポチの開発を担当した本田技術研究所の小室美紗氏によれば、「監視カメラを新規開発してユーザーを特定していますが、やはり人込みの中を走行するワポチの動きをどのようにしたらスムーズにできるのかに苦心しています」とのことだった。
ワポチについて、「階段や段差など歩行者へのバリアについてはどのように想定していますか?」と質問したところ、小室氏は「まだまだ第1段階でして、今後そういったバリアに対してのAIロボットの形が見えてくると思います。その際には現在のワポチに使われている脳みそがそのまま進化したボディに採用されることになります」と見通しについて語った。
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