ポルシェといえば“王道”は、やはり911。しかし、安定したリセールバリューの高さを誇る911は中古車も含めて高嶺の花だ。
いっぽう、911“じゃないほう”のポルシェまで視野を広げると、今やボクスターなどは中古なら200万円台でも充分狙える。
果たして200万円台で買えるポルシェに“らしさ”はあるのか? ポルシェ使いとしても名を馳せたレーシングドライバーの松田秀士氏が解説。
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ポルシェ911。空冷最後となったタイプ993は現在投資物件となり庶民には今や手が届かぬ存在だ。この空冷993に引っ張られて964、930までもが値上がりし、ポルシェ911空冷旧車事情は現在恐ろしいことになっている。
そこで、そんな手の届かぬ名車に未練な自分を嘆いても仕方がない。ポルシェも所詮クルマ。走ってナンボの世界である。手が届き、自分の手で走らせて楽しいポルシェはないものか?
じゃあボクスターはどう? というと、アレは911じゃないから正統派じゃない。と考えているあなた、ちょっと今から筆者の話を聞いてくれないかなぁ?
ちなみに筆者は、1995年5月の全日本GT選手権(現在のスーパーGT)で、デビューしたばかりの993 GT2を世界で一番最初に総合優勝に導いたドライバーで、この年は最終戦のMINE(山口県)でも勝利し、ただ一人この年に2勝したドライバーなのであります。
その後は水冷ポルシェとなった996GT3Rでも何度も勝利し、ポルシェ使いと呼ばれていたこともあるのです。
それはさておき、こんなに911で勝利してきたボクが2代目ボクスターでどうよ!? という理由をお話しよう。
文/松田秀士 写真/Porsche
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圧倒的に安い2代目ボクスター「911との違い」は駆動方式だけ!
987型2代目ボクスターは、2004~2012年に生産されたモデル。これが今200万円そこそこで手に入るようになっている。初代986型ボクスターもそうだったように、同時期のポルシェ911(当時は997型)と55%もの部品を共有していたのだ。
エンジンも、パワー&排気量こそ違えど同じ水平対向6気筒。つまり、911に最も近いミッドシップ・ライトウェイト・スポーツ。しかもオープンモデル。
ボクスターの名前の由来は、水平対向エンジンを表すボクサーと、オープンスポーツのロードスターを掛け合わせた造語なのだ。
では、2代目ボクスターが、当時の997とどの程度部品を共有していたのかというと、Aピラーから前はほとんど同じ。ボクスターも911も燃料タンクはフロントボンネットの下にある。ということはフロントサスペンション(ストラット式)も同じ。
このフロントサスペンションは、リアサスにも流用されている。全長も、全幅も、トレッドも、ホイールベースも少しずつ異なるけれども、シャシーを含めて多くを流用しているのだ。
筆者の目から見て、唯一異なるのがエンジン搭載位置。997がリアホイールセンターより後ろにエンジンをマウントするRR(リアエンジン・リア駆動)なのに対して、2代目ボクスターは、リアホイールセンターの前にエンジンをマウントするMR(ミドシップエンジン・リヤ駆動)。
多くのフェラーリやランボルギーニを見ればわかるように、高性能スポーツカーはほとんどがMRレイアウト。つまり、RRの997よりMRの2代目ボクスターの方がエライ!バランス的にはね。
しかし、そこがポルシェという自動車メーカーの凄いところで、歴史がありファンがワンさと居るRRの911(997含む)はポルシェ社のシンボル。911を超えさせないというヒエラルキーの基にボクスターは位置づけられている。
つまり、だから価格が安いのだ。そして中古車になれば王様911(997)に比べてガクンとリーズナブルになる。
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