国産ハイパワー4WDターボの元祖
1987年10月に発表され、12月に発売されたギャランのトップグレードであるVR-4は4WD、4WS、4輪ABSといった当時最新のデバイスを装着した。搭載されるエンジンは三菱を代表する名機、2L直列4気筒ターボの4G63型。
このギャランVR-4こそが、ラリー用のプロトタイプで終わったスタリオン4WDラリーの意志を受け継いだ国産ハイパワー4WDターボの元祖で、1989年にデビューするスバルレガシィRSや日産スカイラインGT-R(BNR32)に2年先行してのデビューにより、大ヒットとなったのだ。
MT車のデビュー当初の最高出力は205psだったが、1989年のマイナーチェンジで220psへパワーアップ。
そして、1990年の一部改良で、タービンの変更やインタークーラーの大型化などにより240psへと出力が向上している。
この4G63型エンジンと4WDシステムはランサーエボリューションに受け継がれ、市販車だけでなく、WRCでも大活躍する。
三菱のラリーというとWRCのランサーとパリダカのパジェロのイメージが強いが、実はギャランも数々の栄光を手にしている。
ギャランは1988年(本格参戦は1989年)~1993年のシーズン途中までWRCに参戦したのだが、6度優勝している。
そのうちの2回は1991年、1992年のコートジボアールラリーで、日本人ドライバーの篠塚建次郎選手によるものだった。
ドライバーやメイクスといったタイトルは獲れなかったものの、高いポテンシャルをギャランは発揮していたのだ。
ベース車となった市販モデルのVR-4は標準モデルに加えてラリー専用車として、VR-4RやVR-4RSという限定車も設定。
また、1989年のマイナーチェンジ時には4G63型2L直列4気筒自然吸気エンジンをAMGがチューニングしたギャランAMGモデルも設定。
さらに、1990年1月には前年のWRC RACラリー優勝記念モデルである2.0ターボスーパーVR-4という特別仕様車が設定された。
1990年10月の一部改良ではVR-4モンテカルロを設定。そして、1991年にはVR-4RSをベースに、AMGと同じボディカラーを採用し、オートエアコンや電動リアスポイラーを採用したVR-4アームドバイラリーアートが発売されるなどVR-4ファミリーとしては多彩なラインアップを誇っている。
1992年5月になると、ギャランは3ナンバーボディに一新して上級化を図った第7世代に移行する。同時に、ラリー直系のスポーツセダンという特性はランサーエボリューション(1992年9月発表)に引き継がれた。
VR-4をイメージリーダーに、アグレッシブなスタイリングを持つ高性能なスポーツセダンとしてユーザーを魅了した6代目ギャラン。
そのインパクトの強いキャラクターは、後に「歴代モデルのなかで最もギャランらしい世代」とファンから称賛されるようになった。
全国にVR-4の在庫車はたった5台しかない!?
現在、1987年~1992年まで販売された6代目ギャランの中古車の流通台数はわずか8台で、そのうち5台がVR-4、そしてAMGが2台、1.8MSが1台となっている。
この3ヵ月の間、流通台数はほぼ5台で推移し、ほとんど変化はない。中古車の平均走行距離は約9.8万kmで、こちらもこの3ヵ月の間、全くの横這い。
この動きにリンクして平均価格の推移も約100万円で全くの横這いで推移している。6代目ギャランVR-4の中古車相場は、すでに底値といえる状況だ。
興味深いのは1992年に登場した7代目ギャランの平均価格は約80万円、1996年に登場した8代目ギャランの平均価格は約15万円なので、いかに6代目ギャランの中古車の人気が高く、相場が高いかは見てとれる。
6代目ギャランの中古車相場の推移を1年スパンに拡大してみると、1年前の平均価格は約126.3万円だった。
その後年末に約86.3万円まで下がったものの、年明けには現在の約100万円に戻り、3ヵ月どころかこの半年の間、全くの横這いとなっているのだ。まさに6代目ギャランの底値といえる状況となっている。
5台流通しているVR-4は約78万~約220万円で、そのうち2台は78万円、85万円のプライスが付いていた。
最高値の220万円の中古車を見てみると、1990年式で走行距離は8.1万km、ボディ再塗装まで行われているレストア車で、サイドのステッカーまで忠実に仕上げられている。もう1台の168万円のVR-4は1988年式、走行距離3.6万㎞のワンオーナー車だった。
ちなみに2台のギャランAMGは、1台が価格応談で1990年式、走行距離13.7万km。もう1台は1990年式で7.6万kmだった。
もし、手に入れたいという人は躊躇している時間がないほど中古車は減少している、まさに危機的状況といっていいだろう。
流通している中古車は1989年のマイナーチェンジ後のモデルが中心だが、前期型はブレーキの容量が足りずフェードしやすいという症状が出ると、ギャランVR-4オーナーのブログに書かれていた。しかし、これはマイナーチェンジ後のパーツに交換すれば問題ないとのこと。
また、エアコンなどの故障が頻発している状況が見受けられるが、4WDや4WSといった電子デバイスのトラブルはあまり書かれていないところは、さすがWRCのベース車といったところか。
しかし、誕生からすでに33年経っている旧車だけに、しっかりとしたメンテナンスや同じクルマを所有しているユーザーとの交流はマストといえるだろう。
■6代目ギャランVR-4年表
・1987年10月、ギャラン登場、12月にVR-4発売。ラリー専用モデル、VR-4R限定100台発売。
・1988年3月、モータースポーツ用のベース車として装備を簡略化した「2.0DOHC TURBO VR-4 RS」を追加。
・1989年10月、マイナーチェンジ。VR-4にリクエストの多かったAT車を追加(ただしATの耐久性を考慮し210ps)。VR-4のMT車は220psにパワーアップ。4G63型2L直列4気筒自然吸気エンジンをAMGがチューニングしたギャランAMGモデルも設定。
・1990年1月、1989年WRC RACラリー総合優勝を記念して、本革スポーツシート、シースルーヘッドレスト等を装備して、専用ボディカラー(オニキスブラック)とした「2.0DOHC TURBO SUPER VR-4」を発売。
・1990年10月、一部改良。VR-4の5MT車は240psにパワーアップ。タービンの変更、インタークーラーの大型化、ボンネットへのエアアウトレット装備等各種変更。上級グレードにキーレスエントリー、運転席パワーシートを設定。ビスカスLSD、サンルーフ、専用デカール等を装備し、専用ボディカラー(オニキスブラック)とした「2.0DOHC TURBO VR-4 モンテカルロ」を発売。
・1991年1月、 AMGチューンのエンジンとAMGデザインのアルミホイールはそのままにエクステリアをVR-4と同じものとして値段を下げた「2.0 DOHC AMGタイプII」発売。
・1991年6月、4WS付きのE39A VR-4RSをベースに、AMGと同じシュロスシルバー色に塗られ、パワーウインドウやオートエアコン、電動リアスポイラーを装備した、「VR-4 Armed By RALLIART」を発売。
・1992年5月 販売終了し、7代目へ。
■初期型、1987年12月~1989年9月
4G63型2L、直4ターボ:205ps/30.0kgm
■中期型、1989年10月~1990年9月
4G63型2L、直4ターボ:220ps/30.0kgm、ATモデルは210ps
■後期型、1990年10月~1992年5月
4G63型2L、直4ターボ:240ps/31.0kgm
■6代目ギャランVR-4(1987年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4560×1695×1440mm
●ホイールベース:2600mm
●重量:1360kg
●エンジン:4G63型直4DOHCターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:205ps/6000rpm
●最大トルク:30.0kgm/6000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:195/60R15
●価格:278万1000円
コメント
コメントの使い方