スズキの進撃が止まらない。
ここのところ発売したクルマのヒットがとどまるところを知らず、ソリオ、ハスラー、スイフト(スポーツ)、スペーシア、クロスビー、そしてジムニー&ジムニーシエラと、販売絶好調かつクルマ好きにも評判のいいラインアップがズラリとならぶ。
スズキのクルマがウケているのはなぜなのか?
また、そのいっぽうで苦戦しているモデルも存在する。バレーノやSX4 S-CROSS、エスクードなどは月販台数二桁台が続く。
こうした差はなぜ起こっているのか?
クルマ好きに支持されながらもヒット車を連発し、そのいっぽうで不人気車も抱え続けるスズキの、成功の秘訣や勝因と、その影で抱える不安要素を分析してもらった。
文:渡辺陽一郎
■実質的には国内3位のメーカー
2018年3月期における日本メーカーの連結決算を見ると、売上高はトヨタが29兆3795億円、ホンダが15兆3611億円、日産は11兆9511億円と続くが、スズキは3兆7572億円だから、「日本版ビッグ3」と比べると、大幅に下がる。
それでもマツダの3兆4740億円、スバルの3兆4052億円よりは多い。
スズキはもちろん大企業だが、乗用車を大量に製造する自動車メーカーの中で見れば、規模はさほど大きくない。
それなのに日本では、スズキは絶好調という印象が強い。2018年1〜8月におけるメーカー別の販売ランキング(軽自動車を含む総台数)は、1位のトヨタと2位のホンダに次いで3位だ。4位がダイハツで、5位は日産になる。
販売台数の内訳は、トヨタが圧倒的に多く100万台を超えた。2位から5位まではすべて40〜50万台に収まり、あまり差がつかない。
日本自動車市場はいわゆる「一強多弱」だが、スズキがその上位に喰い込むことは確かだ。2018年8月は、ホンダを僅差で抜いて2位まで浮上した。日本でスズキ車を見る限り、商品力、販売実績ともに元気の良い伸びざかりのメーカーに思える。
その理由は大きく分けて3つある。
■日本の社会背景がスズキにとって有利に
まずはスズキが軽自動車を含めて、価格が比較的安い小さなクルマを中心に造ることだ。
日本の給与所得は、1990年代の終盤をピークに下がり続けるが(直近では少し持ち直したが20年前の水準には戻っていない)、クルマの価格は、安全や環境性能の向上で高まっている。所得が減って価格が高まれば、ユーザーはサイズを小さくするしかない。
そこで今では新車として売られるクルマの36%前後が軽自動車になり、コンパクトカーの比率も高まった。スズキは小さなクルマが得意だから、今の状況が販売面では追い風になっている。
2つ目の理由は、好調な需要を生かすために、新型車を相応に活発に投入していることだ。
今のスズキ車の中で設計が最も古いのは、2014年1月に発売されたハスラーだ。ほかのメーカーには、発売から8年以上を経過した車種が数多くあるが、スズキ車は全般的に新しい。そうなれば売れ行きも伸ばしやすい。
人気のスズキ車を見ると、スペーシアは2018年1〜8月の販売累計が10万2535台に達した。ワゴンRは7万7538台、アルト(ラパンを含む)は5万4512台で、軽自動車の販売総数は1位のダイハツに迫る。
2018年1〜8月の軽自動車販売累計は、ダイハツが41万1417台、スズキが39万6224台だから、その差は1万5193台だ。今後の売り方次第では、スズキが軽自動車販売の1位に返り咲くことも不可能ではない。
さらにスズキは小型/普通車も多く、2018年1〜8月は、スバルの売れ行きを少し上まわった。スイフト(スポーツを含む)が2万6252台、ソリオが2万9970台、クロスビーが2万2064台という具合だ。かつてのスズキは軽自動車の専門メーカーといわれたが、今では国内で売られるスズキ車の18%が小型/普通車になる。
ちなみにダイハツも最近は小型車のトールとブーンに力を入れるが、小型/普通車の比率は5%にとどまる。ダイハツの小型車は、トヨタにも供給されるから売れ行きを伸ばせない。このあたりは完全子会社の辛いところで、クルマ好きとしては、かつてのシャレードのようなトヨタ車よりも優れたダイハツ車を発売して欲しい。
コメント
コメントの使い方