N-BOX首位陥落!? 軽販売6年連続NO.1に潜む死角とは?

N-BOX首位陥落!? 軽販売6年連続NO.1に潜む死角とは?

 2021年4月6日、日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会は2020年度(2020年4月~2021年3月)の車名別新車販売ランキングを発表した。

 登録車では20万2652台でヤリスが1位、軽自動車は19万7900台でホンダN-BOXが1位となり、登録車と軽自動車を合わせた新車販売ランキングでは1位トヨタヤリス、2位ホンダN-BOX、3位スズキスペーシアとなった。

 2021年1月6日に発表された2020年1~12月の暦年の車名別新車販売台数ではホンダN-BOX(19万5984台、前年比22.7%減)が4年連続で1位、軽販売6年連続NO.1を達成している。2位のトヨタヤリスは15万1766台(前年比86.1%増)でN-BOXとの差は4万4218台だった。

 前年2019年度(2019年4月~2020年3月)のランキングを振り返ってみると、1位:ホンダN-BOX(24万7707台)、2位:ダイハツ タント(17万2679台)、3位:スズキスペーシア(15万9799台)、4位:日産デイズ(15万48881台)、5位:トヨタカローラ(11万4358台)。

 月別でも2020年9月に逆転して以来、6ヵ月連続でトヨタヤリスシリーズが1位となった。ただしヤリスは、2020年2月に発表されたハッチバックのヤリスのほかに、2020年8月31日に発売されたコンパクトSUVのヤリスクロス、同9月4日に発売されたGRヤリスも含まれた台数である。

 ヤリスクロスはヤリス全体の約45%なのである。そうしたことを考えると、ホンダN-BOXが実質的には新車販売台数NO.1を死守しているのである。

 とはいえ、日本で一番売れているホンダN-BOXはうかうかしていられない状況に変わりはない。そこでホンダN-BOXに死角はないのか? 改善すべきところはあるのか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部

【画像ギャラリー】軽自動車の販売ランキングで長年トップをひた走っている王者「N-BOX」を画像でチェック


盤石だったN-BOXがNO.1陥落?

新車販売4年連続日本一 軽販売6年連続NO.1のN-BOXに潜む死角とは?
現行N-BOXは2017年8月31日にデビュー。2020年11月25日にはマイナーチェンジを実施、3年4ヵ月ぶりの大幅改良となった


■2020年度車名別新車販売ランキング(登録車+軽自動車)
1位:トヨタヤリス/20万2652台(前年比1216.8%)
2位:ホンダN-BOX/19万7900台(前年比79.9%)
3位:スズキスペーシア/14万5319台(前年比90.9%)
4位:ダイハツタント/12万8218台(前年比74.3%)
5位:トヨタライズ/12万988台(前年比247.9%)
6位:トヨタカローラ/11万2777台(前年比98.6%)
7位:トヨタアルファード/10万6579台(前年比157.1%)
8位:トヨタルーミー/10万3064台(前年比111%)
9位:ダイハツムーヴ:10万1183台(前年比85.3%)
10位:日産ルークス:9万8564台(前年比1291.3%)

 2020年度(2020年4月~2021年3月)の新車販売統計を見ると、最も多く売れた車種はヤリスだった。2位はN-BOX、3位はスペーシア、4位はタントと、全高が1700mmを超える軽自動車が続く。5位には小型車のライズが入った。

 ただしこの販売ランキングには注釈も必要だ。日本自動車販売協会連合会が公表するヤリスの登録台数には、ヤリスに加えて、スポーツモデルのGRヤリス、コンパクトSUVのヤリスクロスも含まれる。いわばヤリスシリーズを合計した台数だ。

新車販売4年連続日本一 軽販売6年連続NO.1のN-BOXに潜む死角とは?
2020年4月~2021年3月、2020年度の登録車および、登録車と軽自動車を合わせた車名別新車販売ランキングで1位となったヤリス。ヤリスの販売台数の中にはヤリスクロスも含まれている

 一般的な認識として、SUVのヤリスクロスは、ヤリスとは別の車種だろう。ヤリスのライバル車はノートやフィットで、ヤリスクロスはキックスやヴェゼルの仲間に入る。

 そこでヤリスのみの登録台数をトヨタに問い合わせると、直近となる2021年1~3月の1ヵ月平均は1万820台であった。N-BOXの1ヵ月平均は2万708台だから、ヤリスのみの登録台数に比べると今でもN-BOXが圧倒的に多い。約2倍に達する。

 ちなみに2021年1~3月の2位はスペーシア(1ヵ月平均は1万5967台)、3位はタント(同1万4245台)、4位はルーミー(同1万3132台)と続く。

 ルーミーはトヨタの全店が全車を扱うようになったので、2020年9月に姉妹車のタンクを廃止した。そのためにルーミーの登録台数が伸びて、今ではヤリス以上に売れている。

 このようにヤリスが好調といわても、その人気はヤリスクロスによるところが大きい。ヤリスシリーズ全体の約45%をヤリスクロスが占めている。

 こうなると国内販売の王者は今でもN-BOXだ。2代目の現行型が発売された2017年以降は、一貫して国内販売の総合1位を守り続けている。

 N-BOXの売れ方を振り返ると、先代(初代)モデルが興味深い。先代型は2011年12月に発売されて人気車になったが、2012年の軽自動車販売1位にはなっていない。

 2012年の1位はミラ(大半は2011年に発売された先代ミライース)であった。この後、2013年にはN-BOXが軽自動車の販売1位になったが、プリウスやアクアは抜けず、小型/普通車まで含めた総合順位は3位だった。

 2014年は前年に発売された先代タントが総合1位になり、2位はアクア、3位は先代フィット、4位はプリウスと続いてN-BOXは5位まで下がった。

 2015年以降のN-BOXは、軽自動車では1位になったが、小型/普通車まで含めた総合1位は、2015年がアクア、2016年はプリウスだ。2017年に現行型にフルモデルチェンジされ、ようやく前述のように初めて国内販売の総合1位になれた。

新車販売4年連続日本一 軽販売6年連続NO.1のN-BOXに潜む死角とは?
2020年11月25日に行なわれたマイナーチェンジで標準モデルはフロントグリルやロアグリルのデザインを変更し、メッキ加飾も増やしている。グリル内にある横方向のメッキバーをホンダロゴの位置に下げ、さらにバンパーの開口部にも細いバーを追加
新車販売4年連続日本一 軽販売6年連続NO.1のN-BOXに潜む死角とは?
N-BOXカスタムは逆台形メッキグリルから横長6角形のグリルケースに横線グリルを走らせたデザインへと変更することによってひと目でノーマルとカスタムの個性の幅を広げるマスクに仕立てている。さらにバンパー下部のフォグランプ回りもコの字型のメッキ追加やN-BOXカスタムのみナンバープレートの位置が右側から中央に変更

 年間販売台数の推移を見ても、2012年と2013年には先代型が20万台を超えたが、2014年にはタントに顧客を奪われて届け出台数は18万台以下に急落した。同年にはフィットのフルモデルチェンジも実施され、N-BOXの販売力が低下した面もあった。

 その後2015年と2016年には、設計が古くなったのに18万台を上まわり、2017年には現行型になって21万台を超えた。さらに2018年には24万台、2019年には25万台と届け出台数を増やしている。

 先代N-BOXに見られた最初の売れ行きは中堅レベルで、発売後に少しずつ増加するパターンは、息の長い人気車に多い。目新しさで販売を急増させるのではなく、足場を固めるように、着実に市場へ浸透していく。

 この販売推移で得られた人気は根強く、強力なライバル車が登場したり、市場環境が変わっても売れ行きを下げていない。1993年に発売された初代ワゴンRも、1994年は13万台、1995年は18万台、1996年は20万台と届け出台数を伸ばした。

 一般的には設計が古くなると売れ行きを下げるが、市場に着実に浸透していくクルマは逆に増えるのだ。

 そしてN-BOXは趣味の対象ではなく生活のツールだから、使いやすくて愛着を持つと、ユーザーは同じクルマに乗り替えたいと考える。販売店は「N-BOXは高値で下取りできることもあり、現行型の初期モデルから、改良を受けた2021年式の新車に乗り替えるお客様が多い」という。車検期間の満了に合わせ、5~7年ごとに着実に乗り替えるから、根強い需要が保たれる。


2020年度登録車車名別新車販売ランキング
1位:トヨタヤリス/20万2652台(前年比1216.8%)
2位:トヨタライズ/12万988台(前年比247.9%)
3位:トヨタカローラ/11万2777台(前年比98.6%)
4位:トヨタアルファード/10万6579台(前年比157.1%)
5位:トヨタルーミー/10万3064台(前年比111%)
6位:ホンダフィット/9万4311台(前年比123.9%)
7位:トヨタハリアー/8万6843台(前年比277.6%)
8位:ホンダフリード/7万3368台(前年比86.9%)
9位:トヨタヴォクシー/7万1903台(前年比87.7%)
10位:日産ノート/7万1894台(前年比67.9%)

2020年度軽自動車販売車名別新車販売ランキング
1位:ホンダN-BOX/19万7900台(前年比79.9%)
2位:スズキスペーシア/14万5319台(前年比90.9%)
3位:ダイハツタント/12万8218台(前年比74.3%)
4位:ダイハツムーヴ/10万1183台(前年比85.3%)
5位:日産ルークス/9万8564台(前年比1291.3%)
6位:スズキハスラー/8万5426台(前年比136%)
7位:ダイハツミラ/7万1757台(前年比84.1%)
8位:日産デイズ/6万6257台(前年比42.8%)
9位:スズキワゴンR/6万6003台(前年比84%)
10位:ホンダN-WGN/6万1421台(前年比148.2%)

次ページは : N-BOXが売れている秘密はどこにある?

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!