■それでもセダンはクルマの基本だ!
ところが、そういうトレンドとは対照的に、クルマ好きのあいだではセダン人気は根強いものがある。
昔から言われているように、セダンは自動車としての基本形。
4人の大人とその荷物を乗せるというテーマに対して、最もコンパクトで、最も低重心で、最も空気抵抗の少ない、いわば最高に効率的な答えが3ボックスセダンなのだ。
たぶんこのあたりが、クルマ好き、走り好き、メカ好きの琴線に触れるんじゃないかと思う。
今回取材に持って行ったのは、スカイライン400R、レクサスIS、クラウン、BMW318iという4台のセダンだが、どのクルマにもスポーツセダンとしての魅力がある。
取材には比較用のSUVとしてハリアーとBMW X3も同行したのだが、SUVからセダンに乗り換えた時のドライビング感覚の違いは、クルマ好きにとってはやはり無視できない魅力がある。
例えて言えば、厚手のジャケットから薄いセーターに着替えたような、あるいは革靴からスニーカーに履き替えたような感覚。
街中を走っているだけなら別にどうという違いもないのだけれど、高速道路や箱根のワインディングみたいなシチュエーションだと、「これはやっぱりセダンならではの味わいだよなぁ」という上質感と心地よさがある。
ただ、このあたりが現在のセダンの問題点でもある。
ぼくらはセダンの退潮を憂う記事をこれまで何度も作ってきたが、そこで出てくる結論はいつも「セダンならではの上質な走りのよさを活かしたクルマ」を待望するもの。
セダン市場の構造はその指摘のとおり推移してきたから、その見立ては正しかったと言えるのだが、結果として起こったのはセダンの復活ではなく、お手頃価格帯セダンの絶滅。
セダン本来の魅力を追求したら、その反動としてプレミアムセダンしか生き残れなかったというのが実情なのだ。
かつてのセダン全盛期には、100万円台の大衆車にもセダンのバリエーションがあったし、5ナンバー2Lセダンはファミリーカーとして重要な役割を果たしていた。
しかし、そういうクルマたちに「セダンならではの質感や走りのよさ」があったかと言えばそれはノーで、より経済的な軽自動車やBセグハッチバック、あるいはより使い勝手のいい5ナンバーミニバンなどに置き換えられてゆくのは必然だったのである。
つまり、マーケットシェアの数字だけ見てセダンの退潮を嘆くのは間違いで、セダン本来の魅力を引き出せているセダンだけが生き残った、ぼくはそう解釈すべきだと思う。
■セダンの未来はプレミアムにあり!
そういう「セダンならでは」の走りを堪能するには、今回持って行ったような上級セグメントのセダンでないとなかなか満足できないのがキビシイ現実で、そのためにはザックリ500万円以上の出費を覚悟しなければならない。
あえて選んだわけではないが今回の4台のセダンはすべてFRで、やっぱりこのへんに「ここから上がちゃんとしたセダン」という見えないラインが引かれているように思われる。
だから、今後のセダンが進むべき道は明らかで、500万円以上のプレミアムカーで勝負する以外に選択肢はない。
かつて、トヨタはセダン市場を防衛するにはお買い得なクルマも必要という判断で、エントリー価格238万円でマークXを投入したこともあった。
結果論ではあるが、これは間違いだった。現実を見てもセダンで売れているのはドイツ御三家+レクサスくらいで、もはや安いセダンを買うお客さんは存在しないのだ。
ボリュームは小さいけれど、単価が高く(したがって利益率が高い)、成功すれば美味しい市場。これからのセダンは、こうしたプレミアムゾーンでこそ、その存在感を放つことになると思う!
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