コロナ禍の影響はどれだけあったのか!? 2020年の新車販売動向を分析する

■マイカー通勤増加による「密回避需要」

マイカーを求める人は増えたが、工場の操業停止の影響で納期は混乱した(Photographee.eu@Adobe Stock)
マイカーを求める人は増えたが、工場の操業停止の影響で納期は混乱した(Photographee.eu@Adobe Stock)

 そうはいっても、2020年9月あたりまではセールスマンが“お得意様”など、管理顧客へ「新車はいかがですか?」と販促アプローチして新車を買ってもらうという動きが目立っていた。しかも、新車販売より好調な中古車販売の影響が大きかったとは前出の事情通。

 「新型コロナウイルス感染拡大が起こると、感染リスクを避けるために鉄道やバスなどの公共交通機関の利用を避け、マイカーでの移動をメインにする人が増えました。

 一部企業もリモートワークのきかない業種では、都心にオフィスのある企業でもマイカー通勤に補助を出したり、都心に勤めるひとのなかには自発的にマイカー通勤に切り替えるひとも続出しました。

 そのなかでマイカーを求める人が激増したのですが、新車は緊急事態宣言の発出などによる、工場の操業停止もあり一時的に納期がかなり混乱しました。そのため、マイカーニーズが中古車にどっと流れ、いまもなおその傾向があります」

 前出事情通は「2020年5月は納期遅延なども覚悟でき、下取り車があれば“言い値”で新車が買えたと言ってもオーバーではないほど買い得に新車が買えたでしょう。下取りや買い取りの査定額、つまり相場全体が中古車市場での優良な在庫の極端な不足で一時的に急騰したのです」

 中古車のなかでも、納期が早く新車同様ということで、“登録済み(軽は届け出)未使用中古車”はとくに売れ行きがよく、筆者が定点観測している中古車展示場でも、展示車の回転(入れ換え=売れている)ペースは結構早まっている。

 つまり、新車がよく売れるといってもお客側からの積極的なアプローチがあったというよりは、「いま下取り査定額が相場全体も上がっていて、かなり良いですよ」とアプローチ、つまり中古車人気が新車販売の好調さを支えていたともいっていい。

■給付金を頭金に新車を購入する人も

三密回避という需要と給付金という臨時収入で新車を購入する人が増えた
三密回避という需要と給付金という臨時収入で新車を購入する人が増えた

 ただ、2020年9月以降は少々風向きが変わってきた。実感できるかできないかは別として、日本政府は世界最大級ともいえる、新型コロナウイルス対策における財政出動を2020年春先から行っており、この影響が出てきたとも、ある意味言っていいだろう。

 各種給付金などの多くは画一的に支給対象や支給額が設定されるので、心底困っているひとには不足気味でも、対象にはなるが、それほど困っていないひとには“ボーナス”のようなものにもなりかねず、これが新車購入希望者をさらに増やしたようなのである。

 「国民に一律10万円が給付されたことがありましたよね。財務大臣は『貯金した人ばかりだ』などと言っていたようですが、その10万円を頭金にして、ローンで新車を買われたお客様も多かったですよ」とは前出のセールスマン。

 「2020年9月以降になると、ディーラーのなかには2020暦年締め年間目標販売台数の“上方修正”をするところも目立つほど販売好調が顕在化しました」とは前出事情通。

ディーラーへの高収益がのぞめるアルファードなども堅調に売れた
ディーラーへの高収益がのぞめるアルファードなども堅調に売れた

 販売現場で話を聞くと、コロナ禍前ではほとんどいなかった、他銘柄(他メーカー)の低年式車でやってくる、“フリー客(初めてくるお客)”が目立ってきたとのこと。

 そのため「管理ユーザーの少ない新人がフリー客を相手にすることが多いのだが、フリー客が多く、このコロナ禍でも年間(2020年)受注台数で30台弱(結構多め)売る新人も出てきました」との話も販売現場で聞いている。

 年が明け、2021年1月も新車販売の好調は続いている。

 1月上旬にいくつかのディーラーの“初売りセール”の様子を見にいったのだが、「セールスマン全員が商談中で応対ができない」と言われた店舗や、開店直後から他銘柄低年式車で店舗を訪れるお客が多数いて、一斉に試乗に出かけるなど、例年にない盛り上がりを見せていた。

 当初は「1年ぐらいで収束するかな」と思っていたひとも、ワクチン接種もまだまだ先となるなか、「収束にはまだ時間がかかる」と判断し、「それなら、まだクルマはよく使うな」とか、「収束を待つといつになるかわからない」といった人が新車購入に流れてきているようにも見える。

 富裕層ではなくても、レジャー支出の激減などで貯蓄額が増える家庭も増えていると聞く。しかし、コロナ禍でまとまった現金は手元に置いておきたいとして、ローンを利用して新車購入するひとも増えてきている。

写真のハリアーなど、トヨタ車の好調が目立った。非常時にはより確かで間違いのなさそうなブランドが強い
写真のハリアーなど、トヨタ車の好調が目立った。非常時にはより確かで間違いのなさそうなブランドが強い

 もちろん、メーカーやディーラーが販売促進のためにアピールしていることもあるが、コロナ禍となり、新車の買い方にも“ニューノーマル”という動きが出てきているのも間違いない。

 ただ、新車販売が好調といってもすべてのセールスマンやディーラー、メーカーが好調というわけではない。

 前出セールスマンは、「弊社のなかでも、セールスマン個々や店舗ごとで好調なところもあれば、不調なところもあります。販売環境が大きく変わっていますから、それにいち早く対応できるかの違いかもしれません」と語ってくれた。

 2021年1月の登録車のみでの、通称名(車名)別販売ランキングをみると、トップ10のなかに、トヨタ車が8台入っている。

 しかも、アルファードやハリアーといった高収益車種や、カローラシリーズ、ヴォクシーなども含まれており、販売台数だけでなく収益率でも、“トヨタ一強”がより目立っている。

 “非常時”が続く現状では、“より確かで間違いのなさそうなブランド”へ流れがちな消費行動が続くので、2021年になってもトヨタ一強はしばらく続きそうである。

【画像ギャラリー】非常時には堅実さを求める!? コロナ禍の2020年新車販売動向を分析

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!