クルマのユーザーにとって気になるのは主に商品=自動車だが、自動車は基幹産業だからメーカーの業績も重要だ。近年の自動車産業は、全製造業の出荷額に占める比率が約20%、機械工業に限ると40%を超える。クルマは日常生活に不可欠な移動手段で、運転の楽しさも味わえて、なおかつ日本経済を支える存在だ。
2021年5月中旬、各自動車メーカーが発表した決算内容はどうだったのか? コロナ禍の影響を受けたのか? はたして勝ち組、負け組となったのはどのメーカーなのか、渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ 日産 ホンダ マツダ 三菱 スズキ
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■勝ち組/トヨタ:純利益は2兆2452億円、+10.3%の増益
2020年度の決算で最も大きなニュースになったのはトヨタの好調だ。2020年度の純利益は2兆2452億円とされ、前年度(2019年度)に比べて+10.3%の増益となった。ホンダの6574億円を大幅に引き離す。
その一方でトヨタのみの販売台数は764万6000台だから、前年度に比べて14.6%減少した。コロナ禍の影響もあって、前年度に比べると売上高は8.9%、営業利益も8.4%減っている。それなのに純利益が10.3%増えたのは、原価低減を始めとする各種の企業努力によるものだ。
また販売状況を地域別に見ると、コロナ禍などの影響を受けて中南米では前年度に比べて27.7%、中東でも24.2%減少したが、中国を含んだアジア地域では29.6%増加した。カローラ、レビン、RAV4、ハイランダー、レクサスなどの各車種が好調に売れて需要を支えている。
日本では3.1%の減少に留まった。2020年度の国内市場全体では7.6%減少しており、トヨタ車のシェアが52%(レクサスを含む)に達する小型/普通車市場でも5.3%減った。従ってトヨタの減り方は、国内の平均に比べても小さい。
結果的な話だが、トヨタは国内において、コロナ禍に備えるように売れ筋の新型車を投入していた。2019年は4月にRAV4、9月にはカローラセダン&ツーリング、11月はライズだ。2020年は2月にヤリス、6月はハリアー、8月はヤリスクロスという具合。
特にSUVのライズ、ヤリスクロス、ハリアー、コンパクトカーのヤリスは国内市場に適した商品だ。これらの車種が売れ行きを伸ばして、コロナ禍などによる販売面のマイナスを補った。
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