海外でバカ売れの日本車が日本で売れない決定的理由

■日米で売られる日本車が低迷する複数の理由

現在の日本はセダンが不人気だ。国内販売ランキングの上位には5ナンバーサイズに収まる車種が多く並ぶが、セダンの5ナンバー車は写真のカローラアクシオだけだ
現在の日本はセダンが不人気だ。国内販売ランキングの上位には5ナンバーサイズに収まる車種が多く並ぶが、セダンの5ナンバー車は写真のカローラアクシオだけだ

 トヨタは国内における小型/普通車登録台数の過半数を占めるが、カムリは2021年1~7月における月平均登録台数が約1000台と少ない。ホンダではアコードが約220台、シビックは先代型を販売していた2020年で約600台であった。

 日産はスカイラインが約300台、マツダ6は約230台、スバル レガシィは2020年の時点で約600台という具合だ。

 このように北米などの海外向けとされる典型的な車種は、月平均登録台数が1000台以下だ。ホンダでは国内向けのN-BOXが、2021年には月平均で1万8000台以上届け出された。アコードは約220台だから、N-BOXの1.2%に留まる。

 これらの海外向けに開発された車種は、なぜ売れないのか。この背景には複数の理由がある。

 まず、ボディタイプがセダン中心になることだ。セダンは低重心で、後席とトランクスペースの間には骨格や隔壁があるから、ボディ剛性も高めやすい。走行安定性と乗り心地を向上させやすく、静粛性でも有利になる。

 メリットの多いボディ形状だが、SUVに比べて新鮮味が乏しく、後席や荷室も狭い。5ドアハッチバックとの比較では空間効率が下がる。そのためにセダンの売れ行きは世界的に低迷して、2018年にはフォードがセダンからの撤退を表明した。

 特に日本ではセダンが不人気で、トヨタもプレミオ&アリオンやマークXを廃止した。国内販売ランキングの上位には、軽自動車を含めて5ナンバーサイズに収まるコンパクトな車種が多く並ぶのに、セダンの5ナンバー車は設計の古い継続生産型のカローラアクシオだけだ。

 つまり海外向けに開発された日本車は、不人気のセダンが中心で、なおかつ3ナンバー車ばかりだから販売を低迷させている。

 それならワゴンはどうかといえば、これも日本では大幅に荷室の広いミニバンと新鮮味の伴うSUVに押され、販売が堅調なのはレヴォーグとカローラツーリングだけだ。マツダ6にはワゴンとセダンがあるが、ワゴンの販売比率は45%に留まり、セダンよりも少ない。

 このワゴンの売れ方からは、海外向けのクルマが人気を低迷させる別の理由も見えてくる。マツダ6の比率はワゴンが45%、セダンは55%なのに、カローラでは、ワゴンのツーリングが78%でセダンは22%に留まることだ。

■車は良いのに海外向けの日本車が売れない理由とは?

北米での発売から遅れること約2年。2020年2月に発売されたアコード。機能や装備などクルマとしての実力は高いが国内での販売は伸び悩む
北米での発売から遅れること約2年。2020年2月に発売されたアコード。機能や装備などクルマとしての実力は高いが国内での販売は伸び悩む

 海外向けのクルマが売れない理由として、セダンやワゴンが中心でボディは3ナンバーサイズになり、価格も高いといった事柄を挙げられるが、それだけで決まるわけではない。マツダ6とカローラからもわかるとおり、セダンとワゴンの比率も車種によって異なる。

 結局のところパターンではなく、ボディスタイル、内装のデザイン、居住性、運転感覚、装備まで含めて、総合的なクルマ造りが日本のユーザーに合っているか否かが重要なのだ。

 例えばアコードは、e:HEVによって走りが滑らかで燃費も優れ、乗り心地は快適だ。居住空間は前後席ともに広く、長距離を移動するためのセダンとして、アコードの機能や装備は満足度が高い。

 しかし、リアウインドウを寝かせたファストバック風の外観は、日本のユーザーの好みに合わない。現行クラウンも同様のデザイン手法を採用して失敗した。アコードの内装は雰囲気が地味で、スポーティなグレードはない。

 従ってアコードは、試乗すると良いクルマだと感心するが、価格が465万円のクルマはそれだけではダメだ。「格好良い」「楽しい」「凄い」など、情緒に訴える購入の決め手が必要になる。それが欠けているアコードは、日本のセダンユーザーに響かない。

 その点でスカイラインには、スポーツセダンの魅力がある。400Rが搭載するV型6気筒3Lツインターボは、最高出力が405馬力、最大トルクは48.4kgmで、動力性能は4.5L並みだ。

 ハイブリッドにはプロパイロット2.0が標準装着され、高速道路上で条件がそろえば、ステアリングホイールから手を離しても運転支援機能が維持される(前方の注視は必要)。

 このようにスカイラインがほかの車種とは違う独自の機能を備えるのに、売れ行きが伸び悩む理由は、内外装と価値観が古いからだ。発売が2013年ということもあり、古典的なスポーツセダンだと実感させる。運転すると操舵感が少し過敏で、味付けの範囲に収まるものの、昔のスポーツカーの雰囲気がある。

 走行安定性に不満はなく、乗り心地とのバランスも悪くないが、スカイラインの売れ筋価格帯は500万~600万円だ。趣味性やセンスが大切で、そこが多くの日本のユーザーから離れている。もちろんスカイラインのスポーツ性に魅力を感じるユーザーもいるが、その数が少ないから、売れ行きも低迷した。

 また、スカイラインのターボエンジン車の場合、衝突被害軽減ブレーキは、歩行者や自転車を検知できない。今は安全装備が大切だから、その古さも売れ行きを下げている。

次ページは : ■日本のユーザーに向き合っていない車種は売れない

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