■地元の自治体からの補助金ももらえる地域も
さらに、EV購入に当たって国からの補助金だけでなく、都道府県・地方自治体レベルでの補助金が受けられる地域もある。
自分の住む自治体で補助金制度があるのかどうかを調べるには、「次世代自動車振興センター 全国の補助事業」で検索してみてほしい。
4月に入ったばかりなので、令和4年度の補助金詳細が自治体のホームページに書かれていないケースもあるが、前年度に補助金制度があった自治体の場合は「都道府県名 令和4年度予算案」で検索して「予算の概要」などを見てみると詳細が書かれているケースが多い。
たとえば東京都の場合、4月3日の時点で、補助金業務を担当する「東京都地球温暖化防止活動推進センター」のホームページには「令和3年度のEV・PHV車両への助成事業の受付を終了した」旨が書かれているので、「4月から補助金もらえなくなるのか?」と思うかもしれない。
だが、都議会で可決済みの令和4年度予算案では、「ZEV導入促進事業」の予算が令和3年度の60億円から8億円増額されており、また補助額も「EVは45万円」と書かれている。
したがって、しばらく待って令和4年度予算の現場での執行が進めば、45万円の補助金が受けられる可能性が高いことがわかる。
つまり、東京都に住む人がサクラ、eKクロスEVを買うと、ベーシックグレードの実質購入価格は155万円前後からになるということだ。
これを他のEVの実質購入価格と比較してみよう。テスラのモデル3のベーシックグレード、RWDは直近大幅に値上げされて549万円。国からの補助金65万円と東京都の補助金45万円を引くと、439万円となる。
日産リーフのSグレード(プロパイロット、アラウンドビューモニターなどは装着されていない)の価格は332万6400円、国の補助金78万6000円と東京都の補助金45万円を引くと209万400円となる。
また軽自動車と比較すると、日産のデイズ/ルークスのベーシックグレードSがそれぞれ13万7700円、141万5700円、三菱のeKクロスのベーシックグレードMが146万3000円の価格設定となっている。
つまり、EVや軽自動車との比較で見ても、日産と三菱の軽EVの実質価格の設定はかなりリーズナブルなことがわかる。軽自動車が新車販売台数の4割を占める日本でEVを普及させたい、という両社の気持ちが伝わってくる。
■軽のEVはアリ? ナシ?
補助金後の実質価格は比較的手に届きやすい水準なことがわかったが、実際に問題となるのは充電、バッテリー周り。
具体的には、クルマが必需品である地方部では170~180kmの航続可能距離が十分かどうか、都市部ではそれに加え、マンションのような集合住宅での充電インフラの整備状況となってくる。
ソニー損保による「2021年 全国カーライフ実態調査」によると、月に1回以上クルマを運転する18歳から59歳の男女1,000名の年間走行距離の平均は6186kmとのこと。1ヶ月にすると515.55km、1日あたりにすると17kmほどだ。
実際の航続可能距離がカタログスペックの80%だとしても、1回の充電で130km以上走れることを考えると、毎日クルマを使う人でも十分な航続可能距離と考えられるのではないだろうか。
特に地方部では家族で複数のクルマを所有しているケースが多く、そのうちの一台を軽のEVにするという選択肢は十分あり得るのではないか。
また日本人の4割が住む、マンションなどの集合住宅での充電設備の整備の問題もある。
マンションの所有者全員がEVを持っていれば、既存のマンションで全員平等に費用を負担して充電器を設置することも可能だろうが、どう考えても現実的ではない。
20戸のマンションで、一人だけEVを購入したいのでマンションの管理組合や大家さんの負担で充電設備を設置してほしい、と言ってもなかなか設置は厳しいだろう。
また充電設備の予約アプリなどを導入しないと、順番待ちなどでいさかいが起きたり無駄な待ち時間が発生したりしかねない。
だが最近、無料で既存のマンションの駐車場に四輪向け充電設備を設置して、アプリで管理を行い、利用者の充電量に応じて徴収する利用料金で設置費用を回収する、というビジネスモデルのベンチャー企業も現れた。
充電設備の拡充と、EVの普及はニワトリと卵のところがあるので、こういったベンチャー企業と自動車メーカーが手を組んで、インフラ整備を進めていってもらえると利用者としては嬉しい。
また、乗り続けてバッテリーの性能が当初よりも下がった状態での中古車としての価値が保たれるか、という問題もある。
軽EVでは、過去に10年のバッテリー保証期間終了後にバッテリーにトラブルが発生し、修理しようとしたら見積もりが100万円を超えた、というケースもあったと聞く。
実質購入価格が安くなっても、乗り換え時の下取り価格が大幅に低いと、保有期間あたりのコストは高くなってしまう。
サクラとeKクロスEVのバッテリーの保証内容がどのようなものになるのか、残価設定ローンで買えるのかなどにも注目したい。
EVというと、日本ではまだいわゆる「アーリーアダプター」、新しいモノ好きで多少高くても人が持っていないものを買いたい人、あるいは環境意識が高い人向け、というイメージがあるが、サクラとeKクロスEVは、普通の人がクルマを買うときに無理せず買える、現実的な選択肢の一つになりそうだ。
EVが普及すれば充電インフラも普及するし、充電インフラが普及すればさらにEVが普及する。
100万円台で購入できる日本独自の軽自動車規格EVのサクラとeKクロスEVの売れ行きは、今後の日本でのEV市場の成長の先行きを示すものとなるだろう。
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