多くの車種に時折追加される限定車。その名のとおり数が限られているため手にすることが容易ではない。
そんな限定車はなぜ設定されるのか、限定車の存在がその車種にどんな影響をもたらすのか、国産車と輸入車の限定車の設定の違い、限定車が愛される理由などを考察していこう。
文/フォッケウルフ
写真/日産、スバル、ホンダ、BMWジャパン、ステランティスジャパン
■人と違うものを手に入れたいという欲求
「限定」という言葉を目にすると、普段なら見過ごしているものであっても妙に気になってしまうことがある。そもそも人間は、自らの行動の自由を脅かされたり、実際に自由を奪われたと感じたとき、その状況を打開するよう動機づけするという。この状態を”心理的リアクタンス”と言うらしい。
つまり、普段なら労せず購入できる物が突如「数量限定!」と謳われると、自由な購買機会が奪われるという思いに繋がるわけで、それに反発するべく限定品に対して興味をいだき、それを手に入れたいという衝動にかられる。そして手に入れた時には、自由に好きなものを買うという機会を取り戻した気になる。
とはいえクルマの場合、数百万円もするものだから、数量限定であってもおいそれと手を出せるわけではない。限定車に対して感じるのは、購買を制限されてやきもきするよりも、「ほかの人が持っていないから価値を感じる」とか、「みんなと違うものが欲しい」や「数に限りのある希少品に惹かれる」といった欲求が満たされることに尽きると言えるだろう。
■記念モデルと販売促進モデルとの違い
限定車は文字どおり数が限られているクルマのことだが、流通台数が少ないというだけでなく、標準仕様ではオプションで装着せねばならない機能や装備がはじめから装着された特別な仕様としていることも大きな特徴のひとつだ。そこにお得感や魅力を訴求し、ユーザーはそこに買いの根拠を見出すことになるわけだ。
そんな限定車にもいくつかタイプがある。よく話題になるのが、スポーツカーがレースのホモロゲーションを取得するために数量を限定して発売するモデルとか、長い歴史を持つ車種の最後を飾るべく登場したファイナルエディション的なモデルだ。こうしたクルマの場合、発売されるたびに熾烈な争奪戦が繰り広げられる。もちろん、発売後も中古車価格は高騰し、新車時価格を上回ることがしばしばある。
同じく数量限定でも、一般的なクルマと同じようにまったりと販売が続けられるケースもある。こちらは概して、モデル末期になって登場時よりも売れ行きが落ちている車種であることが多い。いわゆる特別仕様車と同様の理由で、販売が落ち込んだときの”テコ入れ”という意味合いが強く、メーカー側の販売戦略的として展開される。特に国産車の場合はこのパターンが多く見られるようだ。
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