人と違うって素晴らしい! 限定車に隠された美学と価値観


 多くの車種に時折追加される限定車。その名のとおり数が限られているため手にすることが容易ではない。

 そんな限定車はなぜ設定されるのか、限定車の存在がその車種にどんな影響をもたらすのか、国産車と輸入車の限定車の設定の違い、限定車が愛される理由などを考察していこう。

文/フォッケウルフ
写真/日産、スバル、ホンダ、BMWジャパン、ステランティスジャパン

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■人と違うものを手に入れたいという欲求

 「限定」という言葉を目にすると、普段なら見過ごしているものであっても妙に気になってしまうことがある。そもそも人間は、自らの行動の自由を脅かされたり、実際に自由を奪われたと感じたとき、その状況を打開するよう動機づけするという。この状態を”心理的リアクタンス”と言うらしい。

 つまり、普段なら労せず購入できる物が突如「数量限定!」と謳われると、自由な購買機会が奪われるという思いに繋がるわけで、それに反発するべく限定品に対して興味をいだき、それを手に入れたいという衝動にかられる。そして手に入れた時には、自由に好きなものを買うという機会を取り戻した気になる。

GT-Rとイタルデザインの生誕50周年を記念したモデル「GT-R50 by Italdesign」は全世界で50台のみ限定販売された

 とはいえクルマの場合、数百万円もするものだから、数量限定であってもおいそれと手を出せるわけではない。限定車に対して感じるのは、購買を制限されてやきもきするよりも、「ほかの人が持っていないから価値を感じる」とか、「みんなと違うものが欲しい」や「数に限りのある希少品に惹かれる」といった欲求が満たされることに尽きると言えるだろう。

■記念モデルと販売促進モデルとの違い

 限定車は文字どおり数が限られているクルマのことだが、流通台数が少ないというだけでなく、標準仕様ではオプションで装着せねばならない機能や装備がはじめから装着された特別な仕様としていることも大きな特徴のひとつだ。そこにお得感や魅力を訴求し、ユーザーはそこに買いの根拠を見出すことになるわけだ。

 そんな限定車にもいくつかタイプがある。よく話題になるのが、スポーツカーがレースのホモロゲーションを取得するために数量を限定して発売するモデルとか、長い歴史を持つ車種の最後を飾るべく登場したファイナルエディション的なモデルだ。こうしたクルマの場合、発売されるたびに熾烈な争奪戦が繰り広げられる。もちろん、発売後も中古車価格は高騰し、新車時価格を上回ることがしばしばある。

「WRX STI EJ20 Final Edition」は名機EJ20エンジンを搭載した最後のモデル。555台の限定で販売され、即完売

 同じく数量限定でも、一般的なクルマと同じようにまったりと販売が続けられるケースもある。こちらは概して、モデル末期になって登場時よりも売れ行きが落ちている車種であることが多い。いわゆる特別仕様車と同様の理由で、販売が落ち込んだときの”テコ入れ”という意味合いが強く、メーカー側の販売戦略的として展開される。特に国産車の場合はこのパターンが多く見られるようだ。

総合アウトドアメーカーのコロンビアと共同開発。500台の限定で発売された「キックス コロンビアエディション」

■限定車が数多く設定されるモデル

 輸入車のケースを見てみると、限定車の設定はモデル末期に限ったことではない。たとえば2021年に大掛かりなマイナーチェンジを行ったばかりで、売れ行きも好調なMINIから「Brick Lane Edition(ブリック・レーン・エディション)」というモデルが数量限定で7月から販売されている。クーパーの3ドアが限定180台、5ドアが限定300台、さらにクラブマンにも限定180台という設定となっている。

MINIの限定車「Brick Lane Edition」は、「自由に満ちた、個性の輝き」をテーマに作られたモデル

 ちなみにMINIは、過去にもピカデリー・エディションとか、ジョンクーパーワークスGP、パディ・ホプカーク エディション、アイスブルーいった限定車をリリースしている。限定数は多くても400台ほどとあって、いずれも希少価値が高く中古車市場における相場は高値を維持している。

 MINIよりもさらに限定車を多くリリースしているのがフィアット500だ。2007年に日本導入以降、年に数回限定車を発売しており、その数は80車種以上とされている。500の個性をさらに際出せるアイテムをプラスしたモデルだけでなく、DIESELやGUCCIといったファッションブランドとコラボするなど、じつにバラエティに富んでいる。

フィアット500「ジアリッシマ」は2022年3月5日から200台限定で販売されている

 MINIやフィアットに限らず、輸入車を選ぶ時点でオーナーはクルマに対して何らかのこだわりを強く持っている傾向が強い。国産車でもスポーツモデルでは、そういった嗜好が当てはまる。そのうえ限定車となれば、他の人と差別化したいという欲求を確実に満たしてくれるわけで、メーカーもそういった心理をついてより個性的で、希少価値の高さを訴求できる車種をラインアップに加えていると推察できる。

 MINIやフィアットに限らず、過去に取り上げた車種など含め、いずれの限定車も希少であるという点は共通しており、もしディーラーへ足を運んだタイミングで限定車が販売されているようなら一考の価値は大いにある。

 購入時に注意が必要なのは、プラスされている特別な装備や仕様がニーズにあっているかという点。当然、装備が増えているから標準仕様よりも車両価格が高く設定されている。限定車のなかには、その価格が限定というプレミア感だけで相殺される? と疑問を抱くクルマもあるし、自分は満足できても家族が納得しないということだって大いにありえる。

 まぁ、そこで反対されれば、なおのこと”心理的リアクタンス”が作用するわけだが、クルマ購入というのは一生モノとは言わないまでも気軽にポンポンと買えるものではないのだから、希少価値、装備と価格のバランス、リセールバリューなど、さまざまな要素を吟味することが賢明と言えるだろう。

 もちろん、数や機関に限りがあるから、検討は迅速かつ冷静に行うのがキモ。その先にはきっと、「人と違うって素晴らしい!」という(自己)満足感が待っているはずだ。

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