2022年5月22日~24日の日程で、バイデン米大統領が来日し、首脳会談などが行われた。米大統領の来日は、政治・外交上非常に重要で注目度が高いが、いっぽうで、航空ファンからすれば、大統領専用機「エアフォースワン」をウォッチできるまたとない機会だ。
ニュースなどでその姿を見た方も多いだろう。美しい機体のフォルム、青と白を基調とした上品なデザイン、そして胴体に大きく書かれた「UNITED STATES OF AMERICA」の文字。唯一無二のこの飛行機のすべてが航空ファンの心をわしづかみし、魅了してやまない。そんな憧れの機体「エアフォースワン」がどういう飛行機か、今回の来日をもとに紐解いてみたい。
文・写真(特記以外)/外江彩
【画像ギャラリー】アメリカ大統領専用機「エアフォースワン」と「マリーンワン」を一気に見る(7枚)画像ギャラリー■謎多き機体 「エアフォースワン」ことVC-25A
大統領専用機はアメリカ空軍が保有・運用している機体で、機種名としては「VC-25A」という名称が付けられている。VC-25Aは、ボーイング747-200という旅客機をベースとして、様々な改修が施されている。
外見上では、多数のアンテナが増設されていることがわかる。また、元の旅客機にはない「エアステア」と呼ばれる階段が前後2カ所に内蔵されており、地上設備がないところでも乗降が可能となっている。もっとも、エアステアから大統領が乗降することは少なく、通常のタラップ(旅客機の乗降に使う自走式の階段)が用いられることが多い。エアフォースワンのドアから大統領が現れ、手を振りタラップを降りる光景は、ニュースなどでもおなじみだろう。
また、空中給油を受けられるようになっており、非常時には給油を受けて長時間飛行することも可能だ。
しかし普段の運用では空中給油を受けることはほとんどなく、給油が必要な場合は、ルート上の米軍基地に着陸して給油する。今回の来日では、往復ともアラスカのエルメンドルフ空軍基地に着陸して給油を行った。
機内は、前方に大統領の執務室・休憩室があり、その後ろに会議室、随行員(主にアメリカ政府関係者や警護要員であるシークレットサービス)の座席、随行記者の座席などが設けられている。機体前部には2階部分(アッパーデッキという)があるが、ここには運航上必要な装置や通信機などが備えられ、米軍人が搭乗していると考えられているが、機密レベルが高く、詳細は不明だ。
そんな「レアで謎多き機体」であるからこそ、航空ファンの心をより一層惹きつけるのかもしれない。
コックピットも時代に合わせて進化をとげており、元の747-200ではアナログ計器がメインであるが、VC-25Aではグラスコックピット(液晶画面などに計器を表示するシステム)になっている。
VC-25Aは1990年に納入された機体だが、今でも技術の進歩や運用に合わせて改修が続けられており、特に近年の改修では、背中の「コブ」のような形状の衛星通信用アンテナが増えている。
ちなみに、ハリソン・フォード主演の映画「エアフォース・ワン」(1997年公開)では、緊急脱出カプセルが描かれているが、実際はそのような装備はない。
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