アルミホイールと並んで、昔から非常に人気が高いカスタムアイテムである、エアロパーツ。フロントリップスポイラー、リアスポイラー、リアアンダーディフュ―ザー、エアロタイプのサイドミラーカバーなど、数々のエアロパーツがアフターパーツとして市販されており、好みに合わせてカスタムしている方も多いだろう。
これらのアイテムは、「見た目」という側面も大事だが、もちろん、実際の効果も大事。では、数あるエアロパーツのなかで、燃費や走行性能において、一番効果的なアイテムはどれなのだろうか。
文:吉川賢一
写真:HONDA、RENAULT、NISSAN、エムスリープロダクション
空力エンジニアが目指すのは「燃費の改善」と「リフトフォースの低減」
2020年2月、新東名高速道の御殿場JCT~浜松いなさJCT間で、最高速度規制120km/hが開始された。100km/hで走るのと、120km/hで走るのとでは、緊張感が全然違うことを、多くの方が体感したことだろう。クルマの速度が上がるほど無視できなくなるのが空気の力だ。実車設計では、大きく二つの空気力学を中心に開発が行われている。
ひとつは、燃費に影響する「空気抵抗」だ。もちろん空気抵抗は低いほど燃費は改善する傾向にある。空気力学の世界だと、一般的な乗用車は「Cd値(空気抵抗係数)」が、0.30を下回るとよいとされている。例えば、ヤリスは0.30、60系プリウス0.24(※初代が0.30)、ノート0.29、GT-R 0.26、アリア0.297といった具合だ。数字を公表していないクルマも多いなか、これらのクルマが公開している理由は、「技術力の高さを示して他社を牽制する」といった意図もあるのだろう。
また高速走行中の安心感に大きく影響するのが揚力(リフトフォース)だ。クルマは、上屋にキャビンスペースの膨らみが必ずあるため、クルマが「浮き上がる」方向に力が働く(航空機の主翼上面がアーチを描いているので揚力を発生するのと同様)。レーシングマシンだと「ダウンフォース」という言葉を聞くことがあるが、市販車だと「ダウンフォース」は実はやりすぎで、車速が上がっても下がっても変動をしない「ゼロリフト」がいいとされている。
「Cd値」と同様に、揚力は「Cl値」として評価をするが(前後で分けてCLf、CLrとも表現する)、この数字はあまり外には出てこない。前後バランスなど、各メーカーのノウハウ(特許も絡む)もあるためだ。
ちなみに以前、FK8シビックタイプR開発担当者へ取材したときには、おおよそ「ゼロリフトを達成した」という説明であった。あれだけの巨大なリアウイングやリアバンパーディフューザーを付けてはいるが、狙っていたのは「ゼロリフト」だというのは意外だろう。
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