欧州では、広くとり入れられているラウンドアバウト(環状交差点)。日本でも、2014年9月に施行された道路交通法改正によって法整備がなされたが、施行から8年経った2021年3月末時点での全国のラウンドアバウトはおよそ130箇所程度、東京都内ではたった2箇所しかなく、「何それ?? どこにあるの??」と思う人も少なくないだろう。
なぜ日本ではラウンドアバウトが普及しないのか。現状と課題について、掘り下げてみよう。
文:吉川賢一、写真:Adobestock(トップ画像 = mariusz szczygieł@Adobestock)
【画像ギャラリー】日本では少数派。海外のラウンドアバウトはこんな感じ(4枚)画像ギャラリーメリットの多いラウンドアバウト
ラウンドアバウト(英語:roundabout)とは交差点の一種で、3本以上の道路を円形のスペースを介して接続した環状交差点のこと。国土交通省の定義では、(1)円形の平面交差のうち、環道の交通が優先されるもの (2)環道の交通が時計回りの一方通行で、信号や一時停止の規制を受けないもの、(3)車は徐行で環道へ進入、環道の通行車両がなければ一時停止なしに進入可能なもの、としている。
具体的な通行方法(日本の場合)は、(1)環道へは左折で進入し、左折で流出する(左ウインカー点滅必須) (2)環道内は時計回りで進む (3)環道内を走行している車が優先 (4)環道へは徐行で進入。原則、一時停止は不要 となっている。
ラウンドアバウトのメリットは、環道にクルマがいなければ減速のみで通過できるため渋滞が起きにくく、ストップ&ゴーが少なくなり燃費が向上すること、信号待ちがないこと、優先車は常に片側(左側通行では右側)からしか来ないので安全確認が容易であること、信号がいらないので停電にも強いこと、が挙げられる。
最大のメリットは、事故のリスクが減らせること。環道に入るときに大きくハンドルを切る必要があるため車速は落ちるし、環道を走行するクルマも常にハンドルを切っているためにスピードをそれほど出せないため、事故のリスクを減らすことができ、仮に衝突事故が起きても大事故になりにくい。
敷地確保と膨大なコストがデメリット
メリットの多いラウンドアバウトだが、冒頭で触れたように、日本では徐々に増えてはいるものの、まだまだ少ない状況。普及が進まない最大の理由は、ラウンドアバウトを設置するために必要な敷地の確保が難しいことだと考えられる。
ラウンドアバウトには中央島が必要で、通常の十字型交差点よりも広い敷地が必要。土地が狭く、買収も難しい日本の都市部では、新たに土地を確保することは非常に困難。またラウンドアバウトは、クルマにとってはメリットが多いものの、歩行者は環道をぐるっと回る場合、長い距離を歩かなければならず、かといって横断すればクルマの流れが止まるため、ラウンドアバウトのメリットが失われてしまう、など課題が多いのが実情だ。
また、日本のような交通量の多い道路や車線数の多い道路では、ラウンドアバウトを導入すると信号付き交差点より、かえって渋滞しやすくなることが考えられる。国土交通省は、ラウンドアバウト導入の目安は、1日の交通量が1万台未満としており、比較的交通量も歩行者も少ない交差点でないと導入は難しく、膨大なコストをかけて交差点を改修してまで、交通量の少ない交差点にラウンドアバウトを設置する必要性が問われた結果、現在まで普及が進んでいないのだろう。
加えて、日本の交通に対する考え方も、ラウンドアバウトの普及を難しくしていると考えられる。欧州ではすでに1980年代には普及していたラウンドアバウトだが、日本ではこれまで、環道に一時停止なしに進入する、というシーンがなかったために心理的な抵抗があり、ラウンドアバウトを「危険」と考える人も少なくないそうなのだ。
前述したように、実際には事故のリスクを減らすことができるシステムなのだが、慣れていないために「危険」とか「怖い」と感じてしまい、普及が進まない一因となってしまっているのだ。
コメント
コメントの使い方新設道路で用地に余裕があっても作られないアウンドアバウト。
既存の交差点には利権構造があり信号機を絶対に必要とする人たちがいます。
信号機のコントロールは信号毎に流れを止める発想ですから燃費の悪化、メカへの負担は大きく、ドライバーに蓄積される疲労も過小評価できるものではありません。
日本では無理筋だね。リテラシーに欠けるバカが多すぎる。
尚、名古屋のラウンドアバウトは一車線のはずが、追い抜きする車やウィンカーを出さない車がいる模様。
ラウンドアバウトまでの道も満遍なく路駐されており、路駐の間からの横断者も多いのです。
名古屋で体験したい人は十分気を付けてください。