■今後登場する軽EVは? ホンダは軽商用および軽乗用ワゴンの軽EVを投入
今後は海外市場も視野に入れ、さまざまなボディサイズのEVが発売されるが、大多数を占める3ナンバー車は売れ行きを必ず低迷させる。
先に述べた「拡大の悪循環」に陥り、駆動用電池が小さければ「走行できる距離が短い」と文句をいわれ、そこを改善すれば「価格が高い」という話になるからだ。その点で軽自動車は、この束縛から解放され、EVの売れ筋タイプになる。
メーカーも同様の見通しを立てており、これからは軽自動車サイズのEVが積極的に投入される。EVは使い方だけでなく、構造的な商品開発の面からも、軽自動車と親和性が高い。
EVは床下に駆動用電池を搭載するから、背の高いボディが適しており、サクラもデイズと同じプラットフォームを使って全高が1600mmを超える軽自動車に仕上げた。小型/普通車のEVでも、背の高いSUVが圧倒的に多い。つまりこれからEVの主役になるのは、背の高い軽自動車で、そこには軽商用車も含まれる。
ホンダはGMと提携を行って、世界の各地域にEVを投入する計画を発表した。2040年までに、すべてをEVと燃料電池車にして、それ以降はハイブリッドを含めてエンジン搭載車を生産しない。日本では2024年の前半に、軽商用車のEVを投入する。
このシルエットは既に公表され、ボディスタイルはN-VANに似ている。駆動用電池を床下に搭載して、前後どちらかのホイールを駆動する。
既に市販されているコンパクトEVのホンダeは、モーターを後部に搭載する後輪駆動だが、軽商用EVは前輪駆動になる可能性が高い。EVと後輪駆動は、相性が悪いからだ。
後輪駆動のEVでは、減速エネルギーを使って回生する時の制動力も後輪に働くから、雪道の下りカーブなどでは後輪のグリップ力が下がり、走行安定性が悪化しやすい。
ホンダeの開発者は「後輪駆動のEVでは、開発時の手間と苦労が前輪駆動に比べて大幅に増える」と述べており、今後登場するホンダの軽商用EVは、前輪駆動になる可能性が高い。
開発や生産の合理化を考えると、プラットフォームは次期N-BOXと共通化する。現行N-BOXは2017年の発売だから、次期型は2023年の末から2024年に登場して、ほぼ同時期に次期N-VANとこれをベースに開発された軽商用EVも加える。
ホンダの軽商用EVでは、動力性能や1回の充電で走行できる距離は、サクラに近い。外観は前述の通りN-VANに似ているが、ボンネットはもう少し短く、有効室内長を拡大する。車内はN-BOXと同じく床が平らで、荷物の出し入れもしやすい。N-VANのメリットを受け継いだEVになる。
■ダイハツ、ホンダ、スズキが続々と軽EVが登場する
またベストカーWebでは、ダイハツが開発している軽商用EV「e-アトレー/e-ハイゼットカーゴ」に関する特許資料も入手した。これによると駆動用電池は床下に搭載され、制御システムとモーターは、前席の下側付近に配置されている。
ガソリンエンジンのハイゼットカーゴ/アトレー/ハイゼットトラックでは、エンジンを前席の下に搭載して後輪を駆動するが、EVでは駆動用電池が邪魔をして駆動力を後輪に伝えるプロペラシャフトを配置しにくい。この事情もあって前輪を駆動する。
e-アトレーの方式だと、前席の下にさまざまな機能が搭載されるから、着座位置が高まりやすい。座面が薄手になって座り心地でも不利になるが、前輪の取り付け位置を大きく前進させて有効室内長を大幅に広げられる。
ホンダがこの方式を採用する可能性もあるが、エンジンを前側に搭載するN-BOXとの共通化は困難で、着座位置も高まる。軽乗用車のEVも成立させにくい。
そうなるとホンダの軽商用EVでは、パワーユニットの搭載位置はボンネットの下側になる可能性が高い。ダイハツのeアトレーなどとはレイアウトの違いが生じる。
なお軽商用車は倉庫内を移動することも多く、排出ガスやノイズを発生させない軽商用EVに置き換えると、さまざまなメリットを得られる。電動フォークリフトのように、倉庫や工場の中で荷物を運ぶツールとしても使いやすい。
以上のように、乗用車、商用車ともに、軽自動車とEVは親和性が高い。ダイハツ、日産/三菱、ホンダが軽自動車のEVに乗り出した以上、スズキも追従する。スズキは2025年までに軽自動車のEVを投入する予定で、ホンダと同様、軽商用EVを先行させる可能性が高い。次に軽乗用EVが発売される。
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