「200万円台で買える!?」高性能なスイフトスポーツが価格安くできたワケ

「200万円台で買える!?」高性能なスイフトスポーツが価格安くできたワケ

 日本の平均所得が、1990年代の後半をピークに下がっている。いっぽうで、クルマの価格は、安全装備や運転支援機能の充実により上昇傾向にある。特に趣味性の重視されるスポーツモデルにおいて、手軽な価格で楽しめるモデルが減っている。そんな中、庶民の味方として注目の存在がスズキのスイフトスポーツだ。

 スイフトスポーツは、コンパクトで実用的な5ドア、軽量ボディとターボエンジンによる走りの楽しさで人気を集めるが、最大の魅力はなんといってもコスパフォーマンスの高さ。充実した装備を備えながら、価格は200万円少々に収まる。なぜ、価格をここまで安く抑えることができたのか? その理由をモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が考察していく。

文/渡辺陽一郎、写真/池之平昌信、SUZUKI

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平均所得減かつクルマ価格上昇のなかで200万円台で買えるスイフトスポーツの魅力

 最近のクルマは安全装備や運転支援機能が充実しており、安心して快適に使える車種が増えた。喜ばしいことだが、クルマの価格も上昇傾向にある。ちなみに1989年にホンダのアコードやインスパイアが安全装備をオプション設定したときは、4輪ABSが14万5000円、運転席エアバッグは17万1000円であった。

 これらは今では価格が100万円以下の軽自動車にも標準装着され、安全装備は割安になったが、車両価格の金額自体は高まっている。そのために機能や装備を考えると割安になっても、「今のクルマは価格が高い」といわれるのだ。

 そのなかでも特に高価格と指摘されるのが、趣味性の重視されるスポーツモデルになる。例えば直列4気筒1.5Lエンジンを搭載するマツダロードスターのソフトトップ仕様でも、一番安いSが262万3500円(6速MT)だ。GR86で売れ筋のRZは334万9000円(6速MT)に達する。

 日産GT-Rは、2007年に発売されたときの価格は777万円だったが、マイナーチェンジの度に値上げを実施して、今は価格が最も安いピュアエディションでも1082万8400円と高価格だ。5年前に比べて300万円以上高まり、比率に換算すると1.4倍に高騰している。

 そのいっぽうで、日本の平均所得は、1990年代の後半をピークに下がっている。今でも約25年前の水準には戻っていない。クルマが値上げされて所得が下がれば、購入が困難になるのは当然で、スポーツカーはその代表だ。2022年におけるスポーツカーの1カ月平均登録台数は、最も多いトヨタGR86が約1300台、マツダロードスターは800台程度に留まった。

 その意味で注目されるのがスイフトスポーツだ。文字通りスイフトのスポーツモデルだが、1カ月平均で約1100台を販売している。スイフトスポーツは、スイフト全体の約50%を占める人気車になった。

 スイフトスポーツが高い人気を得た背景には、複数の理由がある。まずはボディがコンパクトで、居住性や積載性などの実用性も備わることだ。全長は3890mm、全幅は3ナンバーサイズながら1735mmに収まり、曲がりくねった峠道や街中でも運転しやすい。

 そのいっぽうでベース車がコンパクトカーだから、ボディタイプは5ドアハッチバックになる。後席にも不満なく乗車できて、乗り降りもしやすい。スポーツモデルながら、家族で乗車して日常的な移動にも使いやすい。

 スポーツモデルにとって大切な走行性能も優れている。エンジンは直列4気筒1.4Lターボで、動力性能は自然吸気の2.3Lに相当する。スイフトスポーツのコンパクトなボディには充分なパワーだ。トランスミッションは6速MTと、6速の有段ATで、動力性能を有効に活用した走りが行える。

 サスペンションにはモンローブランドのパーツも使われ、走行安定性や操舵感も優れている。特に車両重量は、ターボエンジンなどを搭載しながら970kg(6速MT)と軽い。軽快な運転感覚を味わえて、挙動の変化も穏やかに進む。仮に車両の姿勢が乱れても、修正の操作がしやすい。

 そして決め手が価格だ。6速MTを202万8400円に抑えた。前述のとおりエンジンは1.4Lターボ、サスペンションにも有名ブランドを使って熟成を図り、エアロパーツや17インチ(195/45R17)のアルミホイールも標準装着される。

 装備については、衝突被害軽減ブレーキ、車間距離を自動制御できるアダプティブクルーズコントロール(6速MTを含む)、後方の並走車両を知らせるブラインドスポットモニター、サイド&カーテンエアバッグ、LEDヘッドランプ、ホールド性が優れたスイフトスポーツ専用のシートなどを標準装着した。これらのメカニズムや装備を採用して、価格は200万円少々だから、売れ行きが伸びるのも当然だろう。

 それにしても、なぜスイフトスポーツは、価格をここまで安く抑えられたのか。その背景には複数の理由があるから考えてみたい。

次ページは : なぜここまでスイフトスポーツの価格を抑えることができたのか?

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