数ある自動車メーカーのなかでも、独創的な車作りで世の中を驚かせてきたホンダ。平成の時代を通じて、そんな“ホンダスピリット”を体現するモデルが多数登場してきた。
なかでも外せないのが、自動車ファンを魅了したスポーツモデルたちだ。 本記事では、高価で高性能なスポーツカーを乗り尽くしている自動車ジャーナリストたちに、特に思い出深い平成のホンダ製スポーツモデルを1台ずつ選んで紹介してもらった。
平成が終わろうとしている今、この時代に登場し、今なお高く評価されているホンダスポーツは、ファンや識者をも唸らせたモデルたちばかりだ。
写真:編集部、HONDA
ベストカー 2019年4月10日号
ビート/1991-1998年
つい一部ファンしか喜ばないオタクなオレ流に走りがちなホンダスポーツ。なかでも最も画期的かつ広くクルマ好きの心を捉えたのはコレ。1991年生まれのビートでしょう。
誰もが買いやすい軽自動車カテゴリーでありながら世界初のミドシップフルオープンモノコックボディ採用。
結果、ステアリングフィールは超ソリッドで、これは軽版NSXか? と言いたくなるほどシャープかつダイレクト。メーター類はホンダのバイクっぽくシンプルかつ潔く、ゼブラ柄シートもオシャレ。
エンジンは横置きリアミドシップのノンターボ658cc直列3気筒でありながら、8500回転のありえない領域まで回って64馬力を捻出。トルク感は正直薄かったけど、回す楽しさは軽レベルを凌駕。
なにより露骨にピニンファリーナデザインのボディは、完璧ミニフェラーリ。こんなに小さく、横幅狭く、パロディっぽくても、こんなに格好よさは出せるものだと感心。
唯一リアにちょっとしかないラゲッジに閉口。事実上の1人乗りってとこがツラいがある種“ガジェットフェラーリ”としての魅力はハンパない。
また、鈴鹿の工場を見たら結構なレベルの手作り具合にもビックリ。こんなにオモチャっぽくカッコいいミドシップ、世界にこれだけかもしれない。
【小沢コージ】
初代インテグラタイプR/1995-2001年
こらもう初代インテグラタイプRを置いてほかにない。このクルマのハンドルを初めて握ったのはホンダの鷹栖テストコースだった。
ニュルのように危ないコーナーや状況を取り入れた賑やかなコースのため、サーキットのような全開アタックに向かない。飛び出します。どちらかといえば、予測できないクルマの挙動を考えながら走るというラリーコースのような特徴を持つ。
コースインして走り出すやビックリ仰天! 過去のホンダ車でこんなにコントローラブルなクルマは皆無だった。まるでスバルや三菱車のように振り回せる。
アクセルオフして少しブレーキ踏めば前輪に荷重移動し、テールを流せるし、コーナリング中、ギャップに乗って飛び上がり、荷重が“ほぼ”抜けるような状況でも安定しているのだった。衝撃受けましたね。
そして、エンジンが超絶いいときた。可変バルブタイミング「VTEC」の高回転側に入った時のエンジン音&エンジンフィールときたら、今でも究極の4気筒NAだと思っている。少なくとも私のなかで初代インテRを超える4気筒などなし。
私にとって、最大の「なんで?」はホンダ車歴代モデルすべてを含め、超絶コントローラブルなのって初代インテRとNSXタイプRの2車種だけなこと。次点が現行シビックタイプRですね。
【国沢光宏】
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