尖った印象はなく、どんなコーナーでも4輪が吸い付く
前置きが長くなったが本題に戻ろう。もてぎ南コースで「タイプRリミテッドエディション」の走行体験をさせていただいた。ホールド性能の高いセミバケットシートに座り込み、シート高を最下段まで下げ、ステアリングの高さなどのドラポジを合わせると、前方の視界が良いことに気が付いた。
スポーツカーによくあるアイポイントの低さではなく、周囲が見渡せるだけの余裕がある。ステアリングに巻かれたアルカンターラの触感も良く、グリップの握りも太すぎず力を入れやすい。ティアドロップ型のシフトノブも手のひらにちょうど収まる大きさで(筆者は普段丸形のシフトノブのMTに乗っている)、手に馴染みやすくちょうどよい。
そろりそろりと発進してすぐに感じたのが、運転操作のカンタンさだ。ステアイングやABCペダルの操作が想像していたよりも軽く、タッチの優しさがある。
スポーツカー特有の尖がったイメージが先行していたため、イージードライブ過ぎて、ちょっと拍子抜けするほどだ。GRヤリスでも感じたが、「初めての握手をした相手の手が柔らかい」、そんなイメージだ。そのおかげで、その先にある高性能な部分(筆者ごときには引き出せそうもないが)へ踏み込みやすくなる打ち解けやすさあった。
徐々に車速を上げていく。路面状況の良い平地にパイロンを置いた簡易コースだが、どんなコーナーでも路面に4輪が吸いついている印象を受ける。
ストレートエンドで3速(130km/hは出る)から強めのブレーキを入れ、2速へ落としたあと(回転数合わせも的確にしてくれる)、クリッピングポイントへ向けてステアリングを切り込んでいっても、何事もなかったように、高い横Gでコーナーを抜けていく。その辺のクルマでは、こんなこと絶対にできないレベルだ。
自分の運転スキルの範囲をちょっと超え、車速を上げていっても、クルマには何も乱れが起きない。とにかく、前へ前へと進むこのクルマに、ずっと乗っていたくなる。ドライバーの操作に対して、すべての動作レスポンスが良く、FFとして異次元ともいえるハンドリングマシンと感じた。
このモデルを手に入れるチャンスは、残念ながらもうないが、ニュルでのタイムアタックが成功した際には、ぜひ、そのアタック仕様を「特別記念モデル」として出してほしい、と思った。
■シビックタイプRリミテッドエディション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4560×全幅1875×全高1435mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1370kg(標準仕様は1390kg)
●エンジン:K20C型2L、直4DOHC、1995㏄
●最高出力:320ps/6500rpm
●最大トルク:40.8kgm/2500~4500rpm
●WLTCモード燃費:13.0km/L
●サスペンション前/後:マクファーソンストラット/マルチリンク
●タイヤサイズ:245/30ZR20
●価格:550万円。※標準仕様のシビックタイプRは475万2000円
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