「クルマとしての絶対値の追求」から生まれた初代シビック
世界一厳しい排ガス規制といわれた、通称マスキー法を世界で最初にクリアしたCVCC(複合渦流調速燃焼方式)エンジンを搭載したことで有名な初代シビックは1973年7月に登場(CVCCは1973年12月に追加)。
その初代シビックが開発された1970年当時は、後輪駆動の3ボックス車が主流であった。どんなクルマを造るべきか、シビックの開発チームは議論を重ねた結果、「クルマの絶対値としての必要な要件を見つけ出すこと」を発想の原点にしたという。
その結果、「軽量コンパクトでキビキビ走れる」 「ユーティリティー・ミニマム(最も効率の良いサイズ、性能、経済性)であること」、「マン・マキシマム(居住空間の十分な確保)」という、3つのコンセプトに至り、ワールドベーシックカーを目指したそうだ(ホンダデザインセンター大蔵智之氏)。
この3つ、今でもそのまま通用するコンセプトだ。当時と実現方策は異なるが、ホンダフィットやヴェゼル、N-BOXなど、ホンダ車のパッケージング技術が、他社車と比べてダントツに優れているのは、こうした「ホンダ魂(スピリット)」が根付いているためでもあるのだろう。
特別にチョイ乗りさせていただいた初代シビックは、シフトノブは遊びが多く、ブレーキペダルは踏み代が多くてなかなか効きにくく、ステアリングはグリップが細くてズシリとくる。
当時を知らない若輩者としては、これは運転大変だっただろうなぁ、と思ってしまっていたが、一緒に取材にしていた諸先輩方は、初代シビックに次々と乗り込んではしゃいでいる。4人も乗ると、相当クルマが沈んでしまっていて、乗り心地もさぞかし悪かったのだろうが、そうしたところも良い思い出なのだろうなあと、しみじみ。
50代半ばの先輩に初代シビックはどうだったか聞いてみると「当時小学3、4年だったかなあ。同級生の親が初代シビックを買ってね。回りも3人ほど乗っていたよ。カローラだとフツー過ぎて、シビックはなんか新しさとカジュアルな感じで丸っこくてね。けっこう乗せてもらったな。自分ちのスカイラインより楽しかったなあ」。
■初代シビック(SB1型)主要諸元
●全長×全幅×全高:3405×全幅1505×全高1325mm
●ホイールベース:2200mm
●車両重量:600kg
●エンジン:水冷直4横置きSOHC、1169㏄
●最高出力:60ps/5500rpm
●最大トルク:9.5kgm/3000rpm
●トランスミッション:4速MT
●燃費(公式テスト値・舗装平坦路60km/h走行時):22km/L
●サスペンション前/後:ストラット式独立懸架
●タイヤサイズ:6.00-12-4PR
※ホンダ公式サイトより。1978年当時のものです
10台の歴代シビックを一気に紹介!
この後、栃木県のツインリンクもてぎ内にあるホンダコレクションホールにて歴代シビックが一堂に展示されている「CIVIC WORLD」展(2021年5月31日まで開催中)を見学した。
ここで、シビックはどのような変遷を辿ったのか、一気に紹介していこう。
初代シビック(1972年7月)。上野動物園でパンダが初公開された1972年に登場した、初代シビック。4ドアセダンが主流の時代に、FF2ボックスという新しい市場を開拓。小型車市場に新風を巻き起こした。また、世界一厳しい排ガス規制といわれた、通称マスキー法を世界で最初にクリアしたCVCCエンジンを搭載し、低公害も実現していた。
2代目シビック(1979年7月)。初代ウォークマンが発売された1979年に登場した2代目は、好調だった初代を受け継ぎつつ、魅力をさらに向上。ハッチバックの他、4ドアセダン、5ドアステーションワゴンなどバリエーションも拡大された。
3代目シビック(1983年9月)。東京ディズニーランドが開園した1983年に登場した3代目、通称「ワンダーシビック」は、走り重視の3ドア、広さの4ドアセダン、スペースとユーティリティーを追求した5ドアシビックシャトルの3バリエーションとなって登場。1600cc高出力DOHCエンジン搭載車もラインアップされ、モータースポーツでも活躍した。
4代目シビック(1987年9月)。バブル景気初期であり、映画「私をスキーに連れてって」が公開され話題となった1987年に登場した4代目は、ハイパー16バルブエンジン、4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション採用など、高度なメカニズムが採用されたモデル。SiR、SiRIIに搭載されたクラス最高の160ps/15.5kgmを発生するDOHC VTECのB16A型エンジンも話題となった。
5代目シビック(1991年9月)。「ジュリアナ東京」がオープンした1991年に登場した5代目は、時代をリードするスマートで行動的な若者に向けた「ワンルーム&ツインゲート」のハッチバックと、「2カップルズ・セダン」のシビック・フェリオの2タイプが登場。米国ではクーペも設定されていた。
6代目シビック(1995年9月)。阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件と、衝撃的なニュースが続いた1995年に登場した6代目のコンセプトは「バリュー・レボリューション」。「大衆車」という概念を超え時代に応えるクルマを目指し開発された。シビックに初めて「タイプR」が設定されたのも、この6代目だ。
7代目シビック(2000年9月)。「スマートコンパクト」をコンセプトに開発された7代目は、高橋尚子さんが女子マラソンで日本人初のオリンピック金メダルを獲得した、シドニーオリンピックが開催された2000年に登場。シビック初となった「シビック・ハイブリッド」登場したのもこの7代目だ。
8代目シビック(2005年9月)。中部国際空港開港や、つくばエクスプレス開通など、クルマ以外の移動手段の利便性がアップした2005年に登場した8代目は、より上質で快適なミドルクラスのグローバルカーへと成長。国内・北米向けには4ドアセダン、欧州はハッチバックと分化されたモデルでもあった。
この間、日本国内において、イギリス生産のシビックタイプRユーロ(K20Z型2L、直4、201ps/19.7kgm)を2009年11月に2010台、2010年10月に1500台が販売された。
9代目シビック(2011年9月)。東日本大震災が発生した2011年に登場した9代目は、日本ではタイプRのみの発売であったが、北米ではセダンとクーペ、欧州ではハッチバックを販売。
10代目シビック(2017年9月)。現行モデルとなる10代目シビックが登場したのは、藤井聡太棋士が歴代最多連勝記録を更新した2017年に登場。プラットフォームが刷新され、世界のCセグメントでトップクラスの「操る喜び」の提供を目指し開発された。国内もタイプRのほか、セダン、ハッチバックの販売が復活した。2020年8月にはセダンの販売が終了した。
コメント
コメントの使い方