2023年10月25日~11月5日、東京ビッグサイトにて開催されたジャパンモビリティショー2023。「東京モーターショー」から名称を変更し、モビリティの未来を人と社会、人と人をつなぐ新しい役割へ位置づけるイベントとなった。そんな生まれ変わった「モビリティショー」に、東京大学自動車部と、慶應義塾自動車部、それに当編集部アルバイトスタッフの学生が体験した。これからの社会を担ってゆく彼らに、今回のモビリティショーはどう見えたのか? 彼ら自身の原稿をお届けします。
文/髙橋佑介(東京大学運動会自動車部)、谷 昇(慶應義塾体育会自動車部)、小笠原 伶(慶應義塾体育会自動車部)、小熊 雄太(日本大学/ベストカー編集部アルバイトスタッフ)
取材協力/日本自動車工業会
■「電気を共有する未来と各社の個性」髙橋 佑介(東京大学運動会自動車部)
今回、第1回となるジャパンモビリティショーの見学で最も感じた「未来」は、名前の通り「自動車に限らない人の移動」だった。
「東京でクルマを発表する会」から、「世界の中で日本が移動をどう変えるかという姿勢を示す会」にしよう、という意気込みを感じた。
自分がモーターショーへ行くのも2011年以来であり、当時はクルマの見た目しか見ていなかったが、今回の出展内容は、今までの自動車会社で作っていたものの枠組みを超えたものが多かったように感じる。
日本自動車工業会のご協力のもと、2023年10月27日(金)のジャパンモビリティショー、最初に回った「Tokyo Future Tour」では、スタートアップなどの新規参入会社が多く、日常生活や災害時に役に立つ、人間の活動を助ける装置としてのモビリティが多く展示されていた。
電気自動車が普及するということは「緊急用のバッテリーが町中に溢れる」ということであり、電気自動車の電気を逆に供給できるというV2Xの考え方は日本特有だそうで、それを利用した移動式の店舗や施設も出展されていた。
未来的な展示が多かったが、技術的には可能であり、電気を相互に利用しあう未来はすぐそこまで迫ってきていることを感じた。
逆に、その後の既存の会社の展示では、各社はそれぞれのブランドが持てるものを未来に向けてより強く押し出そうとしていたように感じた。電気自動車の時代では、そのパワートレインは共通化できるものが多く、性能において横並びになりやすいためだと考えている。
特に、飛行機にルーツをもつスバルは(AWDを表す?)4つ羽根とアイサイトを備えた巨大ドローンをスバルの思想の御神体のように舞台で登場させており、そのインパクトは強烈だった。
マツダも、ちゃんと新型仕様になった可愛い子供サイズのロードスターや、足が不自由な人向け装備のロードスターなどを出展しており、すべての人に走る喜びを伝えようとしていることが伝わった。そのルーツである初代ロードスターもあり、ロードスターづくしの今回、衝撃的な登場を果たしたICONIC SPも次期ロードスターの示唆であると考えている!(ところで何回ロードスターと書いただろうか…)
三菱もアウトドアを押し出しており、デリカを示唆するコンセプトカーのほか、ラストワンマイルで使える小型のオフロード車を出している。会場の色も明らかに「土」を意識したものであった。
ホンダは現実的なクルマやバイクのほか、ホンダジェットや船外機も紹介し、それに加えて小型の移動手段を付随させる手広さを見せつけてきた。
ヤマハは最近のところ楽器とバイクのコラボを頻繁にしている。
いずれのブースでも共通点として多かったのは、やはり、ラストワンマイルの移動を促す小型のモビリティだと感じた。ツアーの後で観覧した官民各代表の公開対談で、単体での環境対策ではなく物流の効率化など社会システム全体で取り組むべきだということが強調されていたが、人の移動は「乗り合い」を推進していく中で、電動キックボードも規制緩和され、今後の流行はこのような個人の短距離移動となることは間違いないと感じている。
クルマを単なる移動手段として所有することの必要性が、環境面でも問われる今、一人のクルマ好きとしても、自動車は各社の色を明確に出した趣味の道具として残ってほしいと考えている。
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