今年の10ベストカーにも選ばれたアバルト124スパイダー。マツダロードスターとプラットフォームを共通にする兄弟車だが、両モデルの違いはどのくらいあるのだろうか。その走りを存分に確かめてみた。
文:鈴木直也/写真:小宮岩男
ベストカー2016年10月10日号
存在感も主張もさすがのイタリア車
見ても乗っても「思ったよりロードスターとの違いが出てるじゃん!」。注目のアバルト124スパイダーの第一印象は予想以上にサプライズ感がいっぱいだった。
実車を目の前にするとサイズ感がかなり違う。前後をきゅっと絞り込んだロードスターに対し124スパイダーはどーんとひと回り大きく見える。事情を知らなければ、シャシーが共通とは思えない。
エンジンはフィアットオリジナルの1.4Lターボ(170ps/25.5kgm)だが、スターターを回した瞬間からバボォン!! と弾けるようなエキゾーストサウンド。
ロードスターだって標準1.5Lよりスポーティな音が演出されてるけど、とてもそんなレベルじゃない。「これで騒音規制とおってるの?」と思うくらいのボリュームだ。
加速の124スパイダー、軽快さのロードスター
走らせてみると、ターボだからパフォーマンス的にはNAのロードスターよりあきらかに速い。最大トルク25.5kgmはロードスターの1.6倍以上。
東名大井松田あたりの登りなんか、6速のままでもぐいぐい加速してゆく。今回はMTしか試していないけど6ATだとアバルトのほうがダントツだろう。
ただし加速“感”に関しては、ロードスターユーザーは心配しなくていい。
高回転域までスッキリ抜けのいいスムーズな吹き上がり感は、6000rpmあたりから頭打ちが始まるアバルト124スパイダーより洗練度では上。ターボならではの豪快な加速感も魅力だが、ロードスターの研ぎ澄まされたようなピュアな走りもまたよしだ。
アバルト124スパイダーのドライブモードは絶対に「スポーツ」を選択しないと本来のパンチ感やきびきびしたレスポンスが味わえない。
好みで選べる魅惑の2台
ハンドリングについては、1.6倍のトルクを受け止めるべく、ボディの動きをしっかり規制。ロールもピッチもその挙動変化を抑え込む方向の味付けとなっている。
例えば、ロードスターなら操舵した瞬間からロールがはじまって、ヒラリと身を翻すようにコーナーに飛び込んでゆく感覚だが、アバルト124スパイダーはグッとフロントが踏ん張って、まずノーズだけインに向くような味付けだ。
ドリフトして遊びたい人なんかには、挙動変化の少ないアバルト124スパイダーのほうが向いている。
いずれにしても、これだけキチンと2車が作り分けされている事実には、大いに感銘を受けた。安直なOEMではなく、まさに価値あるコラボレーション。マイチェンして洗練度を高めたトヨタ86/スバルBRZとともに新しいスモールFRスポーツの選択肢が増えたことを祝福したいと思う。
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