登場以来形状に劇的な変化なし ワイパーは進化していないのか?

 2020年のゴールデンウイークは新型コロナウィルス感染防止のため不要不急の外出は自粛となっているが、皮肉なことに好天に恵まれている。

 1年の中でも一番気候のいい初夏が終わり梅雨の季節になると、クルマに乗っていてお世話になる頻度が増えるのがワイパー(日本語では窓拭き機)である。

 日本は年間を通して降雨量が多いため、梅雨時期でなくてもワイパーのお世話になるケースが多いため、ワイパーは年間通しての必需品である。

 ワイパーは「ワイパーに代わるものができたらノーベル賞モノ」と言われるくらい根本的な形は変わらないものだが、当記事ではワイパーの進化を考えてみる。

文:永田恵一/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MERCEDES-BENZ、平野学ベストカー編集部

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ワイパーの進化

 ワイパーの仕組みは簡単に言えばモーターで動くリンク機構にアームが着き、アームの先のブレード、ガラスに直接触れるゴムが雨や水滴を拭き取るというものだ。

 サイドミラーがフェンダーミラー→ドアミラー→ミラーレス(カメラ付き)とわかりやすい進化しているのに対し、ワイパーは見た目の変化があまりないため、進化していないように思えるがどのような進化をしているのだろうか?

ワイパーは基本的な形状、作動方法などは登場以来劇的な変化はない

●作動スピード
 ワイパーは自動車黎明期には動くスピードはローとハイの切り替えくらいだった。

 そしてインターバル(間欠)が加わり、インターバルの間隔調整やウォッシャーとワイパーの連動機能、「弱い雨でたまにガラスを拭ければいい」というときになどに便利な1回の操作で1、2回ワイパーが作動するミスト機能も普及した。

 またガラスに置かれたレインセンサーが雨を感知し、オートにしておけば自動でワイパーが動くオートワイパーも珍しくなくなっている。

ワイパーの進化を語るうえでは、作動スピードをチョイスできる間欠機能、ウォッシャーと連動させる機能は無視できない。それも今では当たり前の機能
雨滴を感知して自動でワイパーが作動するのも大きな進化

●ワイパーが付く場所
 フロントガラスと主にバックドアがあるクルマによく着くリアワイパーに加え、日産が得意としていたフェンダーミラーやドアミラー、X80系マーク3兄弟のサイドウィンドウ、ヘッドライトウォッシャーとセットでヘッドライトのワイパーというものもあった。

 しかし後半3つはコストと有用度の折り合いが悪いのもあり普及せず、結局現在ワイパーが着くのは前後ガラスのみに落ち着いている。

日産は初代レパードに世界初となるフェンダーミラーワイパーを装備。その後初代シーマではドアミラーワイパーを開発したが普及せず
1988年にデビューした6代目マークIIブラザーズの目玉装備がサイドウィンドウワイパー。消滅してしまったが、視界確保には絶大な効果があった
ヘッドランプワイパーは欧州車によく見られたが、ヘッドランプウォッシャーの登場&進化により姿を消していった

●ブレード
 まずオーソドックスなのがトーナメント表にように枝分かれしたブレードの先にゴムが付くトーナメント型だ。

 トーナメント型は低コストで実用的なのだが、日本以上のスピード域だと空気抵抗の大きさや風切り音、ゴムが完全に密着しないことがあるといった問題もある。

 そういった問題を解消するブレードとして挙げられるのが、2000年代初めに登場したガラスへの密着がより優れるフラットワイパーやカバーが着いたエアロワイパーといったものだ。

ラバー部分を支えるフレームの形状がトーナメント表のように枝分かれしていることから命名されたトーナメント型ワイパー

●ゴム
 ワイパーのゴムはガラスとの角度やガラスとの相性によってビビリ音が気になる場合がある。

 こういった問題解消の助けになるのが炭素微粒子をゴムにコーティングすることでワイパーの動きを静かかつスムースになるグラファイト入りのワイパーゴムだ。

 またシリコンゴムを使うことで雨の中を5分ほど走ればガラスがコーティングされて撥水効果が加わり、クリアな視界確保に貢献する撥水ワイパーゴムというのも普及している。

作動方法は同じでもふき取り能力は格段に進化。写真のようにふき取り能力が低いと視界確保が困難になる

個性的なワイパー

 ワイパーは左右2本がほとんどであるが、進化を続ける中でその数、拭き取り方などにも工夫が凝らされている。

 何らかのメリットを持つ個性的かつ代表的なものを挙げていく。

●1本タイプ
 現行車ではi-MiEVくらいだが、過去には3代目ヴィッツなどそれなりにあった。またW124型と同世代のベンツではガラスの頂点まで拭けるよう伸縮タイプとなったものもあった。

日本メーカーではホンダが早くから1本ワイパーに着手。写真はトゥデイのもので、1本ながらふき取り面積はかなり広い

【メリット】
・長いワイパーを使えばそれなりの払拭面積を確保できる
・単純な仕組みならコストが安くなる

【デメリット】
・払拭する時間的な間隔が2本ワイパーよりも長いので、結果的に視界を確保しにくいケースがある

・ワイパーが長いため、作動スピードを速くするとモーターに負担が掛かり、長期的にはトラブルにつながることもある

・信号待ちなどの停止中に使うと、払拭した際の水が歩行者や自転車に掛かりやすい

・当然ながら1本しかないので、トラブルが起きると一巻の終わり

 というようにデメリットも少なくなかった。

●2本対向式
 これは2本のワイパーが内側から外側に動くというもので、現行車ではホンダジェイドやクラリティ、シトロエングランドC4スペースツアラーといった例がある。

大型車やバスなどでは一般的な内側から外側に動く対向型は今や激減している。日本車ではホンダクラリティ、ジェイドくらい

【メリット】
・ワイパーを長くできるので払拭(水滴を拭き取る)面積が大きい

【デメリット】
・構造が複雑かつ採用する車も少ないため生産時に加え、ワイパーのブレード、ゴムの交換といったメンテナンス時の費用も高くなりがち

 といったことがあり、これは極端にガラス面積が大きい乗用車向けと考えればいいだろう。

●ブレード内からウォッシャー液噴射
 具体的な採用例としては現行ベンツSLのマジックビジョンコントロールや現行ボルボXC90のジェットワイパーがある。

 そのほかアフター用品でも販売されている。

 まだ普及していないのもありコストは高そうだが、無駄なくウォッシャー液がガラスにあたるのでウォッシャー液の使用量が減る。

 ウォッシャー液がガラスを超えて後方に飛びにくい(なるほどベンツSLはオープン時にウォッシャーを使ってウォッシャー液が車内に入ってきたら幻滅してしまうオープンカーだ)といったメリットは大きく、今後の普及が期待される。

メルセデスベンツがSLで採用したマジックビジョンコントロールをはじめとするウォッシャー液噴射タイプは、オープンカーで絶大な威力を発揮

●3本ワイパー
 最近の乗用車での採用例はFJクルーザーくらいだが、FJクルーザーはガラスが幅広いわりに高さは低いためだろう。FJクルーザーのワイルドなキャラクターを考えれば、3本ワイパーはよく似合っている。

FJクルーザーはフロントウィンドウの高さがないため小型のワイパーを3本装着することでふき取り面積を確保している

●霜取りウォッシャー
 これは現行ヤリス、カローラ&ツーリングに税込み3万800円のディーラーオプションで設定されるもの。

 具体的には前回クルマを動かした際のエンジンの熱を使ってウォッシャー液を加熱し、保温容器によりエンジン停止後12時間程度なら暖かいウォッシャー液で寒い朝でも素早く霜が取れるという。

 冬場屋外に駐車することが多い人には有難い装備だ。

ヤリス、カローラ&カローラツーリングにオプション設定される霜取りウォッシャーは冬場で重宝することは間違いなし

まとめ

 ワイパーは着実に進化しているが、トランスミッションならAT、エンジンならインジェクションのような根本的な進歩はないというのも事実だ。

 現在のワイパーと違う形態で同じ役割を持つものとしては、2013年あたりからマクラーレンオートモーティブが研究しているという雨や水滴を超音波でウィンドウに付着させないデバイスが浮かぶくらいだが、これも随分時間が経っているのに実用化の噂も聞かない。

マクラーレンは2015年くらいまでには戦闘機からヒントを得た超音波を使うワイパーレス車を登場させるとしていたが、いまだに商品化されていない

 このあたりを総合するやはり文頭に戻って、「ワイパーに代わるものが発明されたらノーベル賞モノ」というくらい、ワイパーの基本的な機構は優れているというのが結論なのだろう。

 それだけにワイパーの手入れを忘れがちの人は梅雨になる前に準備をしておきたい。

洗車時にはワイパーのゴム、ワイパーが収納されているポイントの洗浄も忘れずに。ゴムに異物が付いたまま作動させるとウィンドウを傷つける

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