海外で販売実績のある軽自動車
実は、軽自動車がそのまま輸出されている例はある。一台はスズキ・ジムニーであり、もう一台は三菱自の軽電気自動車(EV)i-MiEVだ。
ジムニーには、シエラという登録車扱いになる車種があり、これも輸出されているが、海外でも山岳地帯などでシエラでは大きすぎる道があるという。
そうした道路環境において、4輪駆動車としての悪路走破性に優れながら、軽自動車規格の車体寸法の小柄なジムニーが、重宝するのだそうだ。
スズキとしても、海外での販売台数が一定量見込めるので、長い歴史を途切れさせることなく、モデルチェンジをして世代を重ねることができている。
i-MiEVは、海外で販売されている台数がやや多く、またフランスのPSAへOEM供給が行われ、プジョーiOn(イオン)やシトロエンC-ZEROとして販売されてきた。
現在は、衝突安全性能の改善のため車体全長が伸びて国内でも登録車扱いとなっているが、基になったiというガソリンエンジン車の外観などもフランス人の心をとらえたのだろう。もちろん軽EVとしての実力も評価されたのだと思う。
海外で販売するなら国内限定の性能と原価の見直しが急務
では改めて、軽自動車が欧州も含めた海外で販売されるための課題は何だろうか?
やはり、国内専用として企画されてきた性能や原価に対する考え方を、見直す必要があるのではないか。
軽自動車も国内では100km/hで走れるが、それでも走行安定性の指標は国内の一般道が主体ではないだろうか。
これに対し、日産ルークス/三菱eKスペースは、日産でスカイラインGT-Rの開発に携わった実験担当が、「軽自動車だから登録車と違っていいということにはならない」と、こだわりをもち、優れた操縦安定性と乗り心地を両立した。
これならば、欧州の人たちが一般公道を80km/hで日々運転しても、納得できるのではないか。
原価については、利益が薄い軽自動車であるからと、ホンダN-WGN(エヌ‐ワゴン)を除いて、ハンドルの前後調整機能であるテレスコピックを装備しない状況が続いている。
軽自動車が、小柄な人でも運転しやすいようにとの視点から運転席の基準を設けていることに加え、テレスコピックは原価が上がるので装備しないのが軽自動車およびコンパクトカーの常識となっているようだ。
しかし、DNGAの新興国向け車両では、テレスコピックを装備するという。
日本人の体格も大きくなってきているが、海外に出すのであれば、様々な体格の人でも正しい運転姿勢がとれるクルマでなければならない。
小柄な体格の人を顧客層の主体とし、国内専用車だからという意識のままでいたのでは、いくら性能や商品性が上がっても海外では評価されないだろう。
海外で軽自動車が販売されない最大の理由は、そうしたメーカーの狭い視野にあるのではないか。
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