■SX4 S-CROSSは2017年にフロントマスク大刷新などテコ入れ
●SX4 Sクロス/2015-2020年
SX4の後継車となるSX4 Sクロスは、2012年のパリモーターショーに出展されたコンセプトカーを経て、海外では2013年のジュネーブモーターショーで市販車が登場。
日本には2015年2月に投入され、ボディサイズは現在のコンセプトクロスオーバーとしては標準的な全長4300mm×全幅1765mm×全高1575mmに拡大された。
登場時の日本仕様のパワートレーンは、1.6LのガソリンNAエンジン+CVTで、FFに加えオート、旋回性能に優れるスポーツ、安定性重視のスノー、駆動力を高めるロックという4つのモードを持つALL GRIPと呼ばれる4WDを設定。
機能面ではボディサイズを拡大しながら50kg軽量化され、生産はスイフトより半車格下のコンパクトカーで絶版となったスプラッシュや現在も販売されているコンパクトSUVのエスクードと同様にハンガリーで行われていたため、SX4 Sクロスは輸入車だった。
登場後の改良としては、2017年6月のマイナーチェンジで、フロントマスクをグリル、ヘッドライト、バンパー、ボンネットの変更により押し出し感のあるものに変更。
また、タイヤを17インチに大径化し、最低地上高をマイナーチェンジ前より20mm高い185mmに拡大。CVTを6速ATに変更した。
さらに、2019年10月の一部仕様変更では、ミリ波レーダーを使った自動ブレーキや先行車追従型のアダプティブクルーズコントロールなどから構成されるレーダーブレーキサポートII、フロントサイドとカーテンエアバッグの標準装備化といった安全装備の充実があった。
■なぜ成功できず? SX4 S-CROSSの魅力
SX4 S-CROSSもSX4と同様に動力性能や燃費こそ目立たなかったが、欧州でも販売されるモデルだけに、エンジンの回転フィール、ハンドリングやシートの座り心地を含めた乗り心地など、全体的に硬質な乗り味で、乗るといいクルマだった。
また、価格も前述の一部仕様変更後のモデルでFF/214万560円、4WD/235万5650円と、車格などを考えればなかなかリーズナブルだった。
では、なぜSX4 S-CROSSは成功しなかったのか? これはエンジンや自動ブレーキなどの安全装備が現在の水準に届いていなかったこともゼロではないにせよ、それ以上にSX4 Sクロスを取り巻く背景が大きかったように思う。
SX4 S-CROSSは、テレビCMがそれなり流れていたが、それでも自動車メディアのスタッフの大半ですらSX4 Sクロスの存在を忘れているだけに、一般ユーザーの中に「SX4 S-CROSSというクルマがある」という認識がある人はほとんどいなかっただろう。
また、そもそも販売目標台数が少なく、できることも限られていた。
SX4 S-CROSSの年間販売目標台数は2019年の一部仕様変更まで600台、一部仕様変更後1200台と、スポーツカー以上に少なかった。これではエンジンの変更やバリエーションの拡充といった改良が限られるのも当然で、商品力が向上しないのも無理もない。
むしろこの販売目標からすれば「よく手を加えていた」ともいえ、輸入車とすることで生産関係の投資なしで選択肢を増やしていた点は立派だった。
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SX4 S-CROSSはいろいろなことが限られていたなかで頑張っていただけに、不憫なクルマだ。もし次期SX4 S-CROSSがあり、日本にも導入されるなら輸入車なのは構わないので、もう少し本腰を入れた体制でやり直させてあげたいところだ。
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