■あおり運転『する側』の特徴とは?
●車両価格400万円以上の高級車で、色は白か黒
どんな人物があおり運転をしてしまうのか。どんなクルマに、その傾向が見られるのか。ドライバーにとっては特徴がわかれば知りたい情報だ。
海外の研究では、高級車に乗っている人に、加害の傾向が強く出るという結果が出たそうだ。藤井准教授の検証で導き出されたデータは、もっと詳細だ。
「車両価格が400万円以上のクルマを保有する人に、運転中の怒りが喚起されやすく、あおり行動を取りやすいという結果が出ました」
次のような心理が考えられるという。
「自分は、ほかの人は手が届かないような高級なクルマに乗っていて特別なんだ」
「スピードも出るし、高級じゃない、遅いクルマはどいてほしい」
要するに、自分の優位性を示したいという「マウンティング」の思考だ。それには、他人よりも「車格」の高いクルマに乗ることが、わかりやすい。
人の上に立つ発想で、少しでも見栄えがいいクルマに乗りたい心理。クルマ選びの時点から、マウンティングは始まっているのだろう。
「輸入車は、国産車と比べると結果的に値段は高いので、あおりが多い傾向はみられる。常磐道のあおり行為も、加害者が乗っていたのは高級外車でしたよね」
もちろん、違うケースもある。2020年秋に、藤井准教授がメディアでコメントを求められた鹿児島でのあおり運転の映像に映っていたのは、黒い小型のワゴンだった。
「片側1車線で、センターラインをはみ出して蛇行していた。前のクルマをせっついて、とにかく自分の存在をアピールしたいという感じでした」。
これも、「誇示」したいという点では、マウンティングと同根だろう。
「車格」以外で、決定的な特徴がほかにもある。「色」だ。「圧倒的に白か黒です」。色彩心理学で、その傾向がわかるのだという。
「あおり行為をしやすい人は、無意識にちょっと価格が高そうとか、迫力がある感じの色を選ぶ。黒は高級感のイメージ。それに威圧感もある。迫力という意味では白も同じ。膨張色ですから大きく見える。自分が色に持つイメージをクルマに投影しているのです」
逆に、あおりの対象になりやすいボディカラーもある。
「ピンクと黄色、薄いブルーといったパステルカラー系は、その傾向が高いです」
その色彩イメージは「女性的」だったり、「優しい」だったり。「攻撃しても文句を言ってこないだろう、反撃されないだろうというイメージにつながる色だからです」
特にその色のクルマに女性ひとりが乗っている場合はターゲットにされやすい。「やっぱり、人を見ているわけです」
■あおり運転『される側』の特徴とは?
●『される側』には『する側』との共通性がある
あおり運転をする側の心理、行動分析だけではない。藤井准教授は、被害を受けた側の特徴も長年にわたって研究してきた。
それが認識できれば、トラブルに巻き込まれないよう日頃から気を付けることができる。実際、被害を受けやすい人は、大きく分けて3つの要件に当てはまるのだという。
1点目は「追い越し車線を低速で走り続けるクセのある人」だ。
「例えば、高速道で追い越し車線なのに、いつまでも遅いスピードで走り続けているクルマは、あおり運転の引き金になりやすい。そもそも道交法上、走行車線に戻らなければなりません」
認識していない読者がいるかもしれないが、高速道で「追い越し車線」を走行し続けるのは違反行為にあたる。
では「追い越し車線」と「走行車線」はどう違うのか。
道路交通法第20条には、「車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない」と規定されている。
一番左側が走行車線だ。高速道では片側3車線の区間もある。この場合は、一番左側が第1走行車線、真ん中が第2走行車線となる。
一方、「追い越し車線」は一番右側。追い越しが終了したら、速やかに走行車線に戻る必要がある。走り続けていると、通行帯違反(1点、普通車6000円)に問われる。
あおり運転を受けやすい被害者の特徴の2点目は「信号で止まるタイミング」だ。
「赤信号で止まる時に、かなり前からブレーキを踏んでいる。例えば、信号の停止線まで、ゆっくり、じわっと止まるような運転の仕方です。これが、あおり気質の人を刺激してしまう可能性が高い」
藤井准教授がシミュレーションを行って導いた成果だ。車間距離をかなりあけた状態で走るクルマも同様にあおり行為を受けやすい結果が出た。
2要件から考えると、「ゆっくりの走行スタイル」が、ドライバーをイラつかせ、あおり行為を誘発してしまうということだろうか。
3点目の要件は「サイドミラーやルームミラーを見る回数の少ない人」だ。
これは、あまり周囲を気にせずに、走行している行為につながる。場合によっては、車線変更で車体が接近したり、見通しの悪い交差点でヒヤリとするような状況ですれ違ったり。
知らず知らずに危険な運転をしてしまっているということなのだろう。
「イラっとさせるような運転になっているのでしょうね」
「自分は正しい症候群」という言葉が聞かれるようになった。自身の言うことが正論であり、非があったとしても他人に責任を求めてしまう考えだ。加害者にありがちな思考でもある。
藤井准教授が言う。
「あおられた経験のある人に、その後の運転を聞くと、『変わっていない』と答える。被害者を悪く言うつもりはないのですが、自分の運転を客観的に省みないという点では、あおる人も、あおられる人も共通性があったりします」
結果的に迷惑な運転をしてしまってはいないか。不本意なトラブルに巻き込まれないためにも、今一度、自身の運転を見つめ直すことも大切だろう。
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