技術進化の最前線!? それとも分かりづらく退化!? シフトレバー七変化

■EVは回生ブレーキの強さを調整する機能を持つレバーとしてBモード設置

 EV(電気自動車)やエンジン/モーターを使うハイブリッドでも、モーターの制御機構を利用して低速域での変速を担う「B」モードが設定されるケースが多い。

 モーターを利用したエネルギー回生による充電とブレーキ機能を強める効果をもつため、電動化車両ではいわゆる“エンジンブレーキ”と類似した減速効果をもたらすことになる。

 EVでは回生ブレーキの強さを調整する機能をもつレバーとして「B」モードを用意。ハイブリッドでも「B」モードが設定され、エンジンでは駆動せずモーターのみでの減速/回生するシリーズ式ハイブリッド方式を採用する日産のノート/セレナの「e-POWER」や、プリウスや三菱アウトランダーPHEVのように、エンジンとモーターの機能を適宜駆動に利用するシリーズ/パラレル式でも「B」が設定されている。

 ちなみに、トヨタのハイブリッド車では「B」モードはストレート型に用意され、「D」レンジにマニュアルモードの「S」レンジが備われば「B」モードは用意されない設定となる。

セレナやノートe-POWERにもBモードを設置。写真はセレナe-POWER

トヨタの電動化車両を見ると、燃料電池車のミライは違和感のない位置にインパネ式シフトを装備。プリウスやプリウスPHVはセンターパネルの下部に独立気味にレイアウトされている。ミライのシフト機構には、マニュアル操作可能な「S」モードが備わる。写真はプリウスPHV

三菱アウトランダーPHEVのシフトレバーは“回生ブレーキ調整装置”として採用されている。手前にポジション表示を設置する

基本的に変速機構を必要としない日産リーフのシフト機構は、ちょうど手のひらに収まる大きさの“シフトボタン”を操作する

■シフト・バイ・ワイアの功罪

 ATのセレクトレバーを運転席周りの限られたスペースにどう配置するかは、機能として運転操作に関わるゆえに設計に携わるエンジニアの頭を悩ませてきた。

 フロアシフトに代わってシフト機構をステアリングコラムに装備した「コラム式」の歴史は古く、1930年代から米国市場のモデルで採用が始まり、その後も“ビッグスリー”のSUVやミニバンなどで多く見られ、日本市場でも過去にはワンボックスやタクシー仕様などで継続的に採用されてきた。ベンチシートにコラムシフトが多かったので「ベンコラ」と呼ばれ、前席が広く使え、ウオークスルーができるため人気があったのだ。

 はたして“コラム式”と呼んでよいのかどうかは別として、メルセデスベンツは自社モデルに共通する“伝統的”操作機能を、最新技術を用いてコラムレバーにスイッチ機能を与えて実現している。

メルセデスベンツのセレクターレバーはステアリング右側にある。初めて乗った時には少し慣れるまで時間がかかったが慣れたら使いやすい。押すとPになる

現行車のなかでコラム式を採用しているのは写真のキャデラックのプレミアムSUV、エスカレードやデザイン重視の日産キューブ、最近名称を変更したシトロエンの7人乗りミニバン、グランドC4スペースツアラーなどが代表例

 ATのコラム式レバーがより身近に感じるようになったのは、日本では1990年代に軽自動車のスズキワゴンRあたりからだろう。

 本格的に始まった“トールワゴン”ボディが登場するとともに、前席でのベンチシートの採用と前席間を移動できる“ウォークスルー”機能が広まった影響で、コラム式シフトレバーの採用がワンボックスなどにも急速に広まっていった。

 ところが、現在ではボディのサイズ/形状にかかわらず、インパネ式シフトレバーが多くの車種ですっかり定着しているのは周知のとおり。

 なにより、インパネシフトの採用拡大を後押ししたのは、1990年代から始まった「ミニバンブーム」。休日の高速道路はミニバンで埋め尽くされていたことは今でも強く印象に残っている。

 特にコスト管理が厳しい軽自動車ではプラットフォームが共通であれば装備の仕様を統一したほうが有利なため、一気にセダンタイプでも一気にインパネシフトの採用が拡大。いまや軽自動車の商用バンでも“インパネシフト”が一般的になっている。

次ページは : ■インパネ式からダイヤル、ボタンまで

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